中村潤一の相場スクランブル 「『AI・IoT・5G・量子』で狙う株」

市況
2018年3月14日 19時00分

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とは、超人思想で知られるドイツ哲学の権威、ニーチェの至言。これは株の世界にも当てはまります。株式投資で最強の武器となるのは何かといえば、それは知識でも情報でもなく「柔軟さ」といえるのではないでしょうか。その対極にある「信念」に至っては投資家に一段のリスクをもたらすことも多い。「信念」も時を誤れば「蛮勇」に変わります。例えば、株価の値動きが不合理に見えても、それは必ずしも誤りとはいえません。当然に見える空売りが踏み上げ相場へと発展するように、不合理に背を向けて勝てるとは限らないのが相場の難しいところ。株価の動向こそが真理であって、そこに思考を合わせていくことが勝利の軌道に乗るということです。

中国でもニーチェと同じ視点に立った言葉が『菜根譚』にあります。「縦欲(しょうよく)の病はいやすべし、しかして執理の病はいやし難し」という一節。私欲に囚われた病は治すことができるけれど、理論や道理に執着してしまえば、そこから引き離すのは非常に困難を伴うということ。信念が危険である理由は、しばしばそれが意図せざる中で「感情」にすり替わってしまうからです。相場では中長期投資で夢を追うのは投資家の資質として大事なことですが、“懐疑の森”に迷い込んだら、意地を通さずいったん仕切り直す勇気というものも同じくらい大切な時があります。

●綺麗な二点底形成も日米の政局には注意必要

前回2月28日配信の当コーナーで、“まだ楽観できる段階とはいえない株式市場”としましたが、そこから日経平均株価はエアポケットに入ったような急降下となったのには驚かされました。前々回(2月14日配信)もそうでしたが、当コーナーが株探にアップされる日はなぜか相場が変化するタイミングに当たりやすい傾向があるようです。今回の下落第2波では、2月14日につけたザラ場安値2万950円とほぼ同水準(2万937円)で底入れを果たすという絵に描いたような二点底を形成。今度こそは戻り相場入りとの思惑も漂います。望外の米朝首脳会談への道筋が見え、北朝鮮リスクから当面の間解放された状態にあるという心理的負担の軽減も、買い方にとって有利に働くところ。何といっても米国株の復元力の強さは特筆に値するもので、東京市場でもこの恩恵を享受する形となっています。

もっとも、新年度相場入りを前に今はまだ腹五分目の投資を心掛ける慎重さは求められそうです。日米ともに政治の不安定さが相場のアキレス腱となっています。米国ではティラーソン国務長官の解任が波紋を呼び、相場にも影響を与えています。国内では森友学園の国有地売却に関する問題が重荷ですが、これについては、いかにメディアが騒いでも支持率から判断して個人的には相場を崩す要因となる可能性は極めて低いとみていました。しかし、現状は政権運営にダメージが及ぶケースも否定できず、政局の度合いにもよりますが注意が必要でしょう。

●25日線ではなく26週線抜けが復活の道標

日経平均の先行きを占ううえで、テクニカル的にはよく25日移動平均線が俎上に載りますが、下向きの25日線を上に抜けたといっても実際はクロスする感じとなり、チャートそのものに勢いはありません。中期的な視点で押さえておきたいのは、上向きを維持して上昇相場の余韻を残している26週移動平均線の方で、現在は2万2200円近辺に位置、個人的にはここを力強い足取りで上回ってくることが、相場復活を示唆する道標と考えています。

ファンダメンタルズ的には企業業績の好調さは疑うべくもなく、バリュエーション面では日経平均採用銘柄ベースで13倍を下回ったPERが、今が底値圏である可能性を雄弁に物語っています。PER14~16倍をゾーンとするアベノミクス相場で、現在の株価水準は円高によるデメリットを過剰に織り込んでいる部分が感じられ、遅かれ早かれ水準訂正高に動く余地は大きいでしょう。ただしPER換算のベースとなる今期最終利益は、米国の法人税減税実施に伴う繰延税金負債の取り崩しなどが、特別利益として下駄を履かせている部分があり、安値圏放置はこうした要因も影響していると思われます。したがってPER12倍台だからといって“即買い”というわけにもいかず、マーケットの視線は自然と19年3月期の企業業績に向く流れにあります。

日経平均は2万2000円台を前にした戻り売り圧力が意識されていますが、実際2万2000円ラインをクリアしてしまえば、滞留出来高からみて値固めをする間もなく、さらに一段高というケースが考えられます。新年度入りとなる4月相場では国内機関投資家の運用スタートや、今年に入り現物と先物合わせ大幅売り越し姿勢にあった海外投資家の買い戻しなどが想定され、2万3000円台復帰をうかがう展開が見込めそうです。

●有力テーマ“全部載せ丼”で果敢に攻める

全体指数がもみ合い圏で推移する時には材料テーマ株の活躍素地が高まります。今は日程的に決算発表の思惑が絡みにくい時期にあることも、物色テーマに耳目が集まりやすい背景となっています。そうしたなか、相場全体を俯瞰して思い浮かぶのは人工知能(AI)IoT 5G 量子コンピューター セルフレジといったところ。さらに米国市場の地合いを引き継ぎ、収益面で裏付けのある半導体関連株に久々の追い風が意識される局面です。

【キーウェアはAI・IoTで飛躍の時】

キーウェアソリューションズ <3799> [東証2]は総合システム開発会社でNEC <6701> を筆頭株主とする毛並みの良さに加え、官公庁向けで強さを発揮。運輸、金融、医療、農業などあらゆる産業分野の社会インフラにITを導入する役割を担い、AIの活用でも先駆しています。IoT時代の到来に伴い成長トレンドに乗る可能性を内包している点がポイントで、株高加速のシナリオが描けます。インフォテリア <3853> [東証M]とパートナー契約を結びビッグデータやAI分野の展開力を強化。またインタートレード <3747> [東証2]などとフィンテック関連分野で協業するなど活躍余地を広げています。長期波動でみても2015年7月につけた914円の高値を抜き、1000円台での活躍を視野に捉えています。

【メンバーズはAIマーケティングで成長期入り】

メンバーズ <2130> はAI関連株としての位置づけが定着している銘柄。ネットビジネス支援を展開し、16年にAIソリューション会社と提携、BOT機能を活用したマーケティング支援サービスなどを強化してビジネス領域を拡張しています。米シリコンバレーでAI、IoT分野などのスタートアップ企業を支援するゴールデン・ホエールズ社と協業していることも注目です。上場来高値圏で売り圧力は限定的であり、上値追い態勢にさらに勢いがつくことも考えられます。

【ODKもAI活用の顧客サービスで道開く】

ODKソリューションズ <3839> [JQ]の500円近辺の株価も魅力があります。入試関連支援など教育分野に強みを持つシステム開発会社で、大学入試や証券取引関連のビジネスプラットフォームを提供しています。東大発ベンチャーなどと共同でAI開発にも積極的。また、米ソフトウエア開発会社のZendesk社と提携してODKが持つAI技術とZendeskが提供するソフトウエアを連携したサービスも提供しています。18年3月期営業利益は前期比17%増の1億9000万円と2ケタ増益を会社側では予想していますが、株価は13年4月以来の高値水準にあり、中長期的な成長期待を反映していることが分かります。

【穴株候補のソーバル、サイオス、システムイン】

このほか、AI関連の穴株としてはソーバル <2186> [JQ]、サイオス <3744> [東証2]、システムインテグレータ <3826> が注目されます。

ソーバルは組み込みソフトの開発や技術者派遣を展開していますが、AIや自動運転 、IoT分野の新規事業展開に重心を置いています。自動運転は大手電機メーカーの受託開発需要が旺盛。また、システム構築およびメンテナンスを手掛けるサイオスもAI開発に意欲的で、マシーンラーニングの研修を強化しAI搭載の分析ソフトに注力。ビッグデータ解析をする「SIOS iQ」はトレンドマイクロ <4704> などに採用されています。

システムインテグレータ <3826> は、eコマースやデータベース開発支援で実績を持つ独立系ソフトハウス。AIのコンセプトネーム「AISIA(アイシア)」で今後さまざまなAIサービスを提供していく構えにあります。

【5G関連ではアイレックスが魅力】

一方、現在の株式市場で強力なテーマと化している「5G」関連も注目。2週間ほど前にスペインのバルセロナで開催された世界最大のモバイル関連機器見本市「MWC」で、各国の通信機器メーカーが5Gの商用化を1年前倒しすることを明らかにしたことが伝わり、株式市場でもにわかに脚光を浴びました。

前回の当コーナーで取り上げたアイ・エス・ビー <9702> はその後順調に上値追い態勢にありますが、同テーマにおいては株価が低位に位置するアイレックス <6944> [JQ]も投資妙味が大きそうです。アイレックスは通信系コア技術で優位性を持っており、NECグループを主要販売先としていることで5Gインフラでも活躍が必至。21年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画では営業利益段階で3億8000万円(18年3月期予想は1億5000万円)という数値目標を掲げていることもポイントで、300円近辺の時価は人気化素地十分と思われます。

このほか、5G関連では株価が200円台と低位でチャートの味が抜群の理経 <8226> [東証2]も短期的にマークしておきたいところです。

【量子コンピューターでユビキタスに好機再び】

量子コンピューター関連ではユビキタス <3858> [JQ]に注目しています。量子コンピューターは従来の基本コンセプトである「01」の世界から離脱し、量子力学的な重ね合わせにより、極微の世界で起こり得る物理現象を活用して並列コンピューティングを実現させるというもの。我々のレベルでは夢物語にも聞こえますが、世界が本腰を入れて取り組む革命的な分野です。

これまでにも何度か取り上げたエヌエフ回路設計ブロック <6864> [JQ]やフィックスターズ <3687> が中核銘柄ですが、株価の位置的にはユビキタスから目が離せません。グループ会社が米オンボード・セキュリティ社と公開鍵暗号技術(NTRU)の国内販売総代理店契約を締結しており、直近は同技術が、米国国立標準技術研究所(NIST)が標準化を検討している量子コンピューター対応公開鍵方式暗号技術の候補として、書類選考を通過したことが発表されています。

【セルフレジ関連に急騰銘柄相次ぐ】

また、材料テーマとしては伏兵ともいうべきセルフレジ関連 が思わぬ急騰株の宝庫となっています。同関連ではサインポスト <3996> [東証M]が先駆しましたが、直近はヴィンクス <3784> がわずか4営業日で株価を倍化させるなど凄まじい勢い。これにアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]が追随する動きにあります。正直なところ行き過ぎに買われている感が強く、早晩反動安が予想されますが、この値運びこそが需給相場の真骨頂ともいえるもの。波動的には13週移動平均線の上に大陽線を立ち上げた矢先のオプトエレクトロニクス <6664> [JQ]などが注目される可能性があります。

【半導体関連の注目はテックポイント、電子材料】

最後に半導体関連株の復権にも触れておかなければなりません。米国ではアプライドマテリアルズやエヌビディアなどをはじめ、半導体セクターの目を見張る好業績が驚きをもって受け止められています。一時大幅な調整を入れていたフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も2001年以降の最高値圏に再浮上、この流れが日本にも波及しています。SOX指数はナスダック指数の動きに連動しやすく、直近は利益確定の動きで下押していますが、売り一巡後は再度押し目買いが優勢となりそうです。

東京市場では東京エレクトロン <8035> 、SUMCO <3436> などが指標株となっていますが、小型材料株ではテックポイント・インク <6697> [東証M]や日本電子材料 <6855> に妙味があります。

テックポイントは半導体のファブレスメーカーで米シリコンバレーに本拠を置いており、JDR(日本預託証券)でマザーズに上場している銘柄。監視カメラ向けや車載向け半導体分野で競争力が高く、来12月期業績への期待感が強い。アナログケーブルを用いて高精細HD画像を安価で送受信する独自技術にも注目が集まっています。また、日本電子材料はウエハー検査用プローブカードを製造販売しており、メモリーIC向けを中心に旺盛な需要を確保し期初予想を大幅増額修正、18年3月期営業利益は前期比4.6倍の5億1000万円を見込んでいます。

(3月14日記、隔週水曜日掲載)

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