為替週間見通し:米保護主義傾倒への警戒でドル売り継続も

通貨
2018年3月24日 14時56分

■ドル続落、米中貿易摩擦への警戒感高まる

先週のドル・円は続落。20-21日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利を0.25ポイント引き上げることが予想通り決定された。ドルは106円64銭まで買われたが、FOMCの金利予測では今年の利上げ回数は昨年12月時点と同じ3回にとどまることが判明し、ドル・円は105円台後半まで反落した。市場関係者の間からは今年4回の利上げを予想する声も聞かれていたが、利上げペース加速の思惑は後退した。

トランプ大統領は22日、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして、最大600億ドル規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領令に署名し、米中貿易摩擦に対する市場の警戒感が一段と高まったこともドル売りを促した。中国側は最大30億ドルの米国からの輸入品を対象に関税を導入する計画を明らかにした。

23日のニューヨーク市場では、トランプ大統領が包括的歳出法案に署名し、政府機関の閉鎖が回避されたことや、2月耐久財受注は市場予想を上回ったことから、ドルは一時105円台前半まで反発した。しかしながら、貿易戦争やタカ派米政権への不安がくすぶり、米国株は大幅続落となったことから、104円80銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:104円64銭-106円64銭。

■米保護主義傾倒への警戒でドル売り継続も

今週のドル・円は弱含みか。20-21日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で予想通り0.25ポイントの追加利上げが決定された。ただ、今年の利上げ回数は3回の予想で従来と変わりなく、利上げペース加速への期待はやや後退しており、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小した。

また、トランプ米大統領は中国が米国の知的財産権を侵害していると認定し、中国製品に25%の追加関税を課すことを柱とする制裁措置を指示する大統領令に署名した。トランプ米政権は保護主義的な通商政策への傾倒を強めることになるが、この動きはドル売り材料になるとの見方が依然として多い。

一方、欧州中央銀行(ECB)による金融緩和策の早期縮小への期待は残されている。ECBのスタッフ予測で2019年のインフレ見通しは引き下げられたが、米国の保護主義的な通商政策に対する警戒感は高まっており、米利上げ後もユーロ・ドルは下げ渋っている。米中貿易摩擦を警戒してユーロ買い・米ドル売りが再び活発になった場合、ドル・円の取引にも影響を与える可能性がある。

国内では27日に行われることが決まった佐川前国税庁長官の国会での証人喚問は無視できないイベントになりそうだ。財務省決済文書の改ざん問題は安倍政権の支持率低下の一因となっている。佐川氏の証人喚問を通じて政治不安がすみやかに払拭されない場合、株安・円高の流れは続く可能性がある。

米国は鉄鋼とアルミ製品への関税適用について、欧州連合(EU)や韓国などは暫定的に対象から外したが、日本や中国には適用される。この決定が日本株の一層の下落につながる可能性は低いものの、ドル・円は心理的な節目である105円を割り込んでおり、ドルの下値水準を探る動きはしばらく続く可能性がある。

予想レンジ:103円00銭-106円00銭

【米・CB3月消費者信頼感指数】(27日発表予定)

27日発表の米3月消費者信頼感指数は131.0で2月の130.8をやや上回る可能性がある。予想通りなら米国経済の拡大基調が示されることになり、株高やドル買いにつながる材料となりそうだ。

【米・10-12月期国内総生産(GDP)確報値】(28日発表予定)

28日発表の10-12月期国内総生産(GDP)確報値は、改定値の前期比年率+2.5%から同比+2.7%へ上方修正される可能性がある。企業の設備投資や個人消費の動向がポイントになりそうだ。

《FA》

提供:フィスコ

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