【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆中国孤立化戦略下の北朝鮮動向◆

経済
2018年3月25日 9時40分

〇中国分離の米朝対話は進展するか〇

政治ジャーナリストの歳川隆雄氏が驚きの見方を紹介している(現代ビジネス3/17付)。ティラーソン氏の後任となるポンぺオCIA長官は、独自の「北朝鮮との対話パイプ」を持ち、平昌五輪開会式でのペンス-金与正会談を仕掛けていた、と言う。事情を知らないペンス副大統領が拒否し不発だったが、北朝鮮側の仕掛けとの見方は正しくなかったようだ。

「パイプ」はデラトニ元CIA東アジア作戦部長が組織した通称「トラック1.5」(歳川氏はデラトニ・コネクションと呼ぶ)。

超党派で、共和党系国防大学院教授、民主党系元国務次官、シンクタンク「ニューアメリカ」シニア・フェローなど。5年ほど前から極秘会談を行っていたようで、昨年1年間でも4回、北朝鮮の崔善姫北米局長と会談していたと言う。

韓国特使団が3月8日に訪米し、トランプ大統領が米朝首脳会談を即決したとされるが、ホワイトハウスのキャビネット・ルームで、マクマスター補佐官、マティス国防長官、ポンぺオCIA長官に説明している場に、突然大統領が現れたのも、ポンぺオ演出との見方をしている。一般的な強硬一辺倒とのイメージとは異なる。真贋は確かめようがないが、この見方に立てば、幾つかの「謎」が氷解する。

1)同じ対話路線なのに何故、ティラーソンは切られたか

今までの対話路線は、中国を慮る、あるいは中国介入を前提とするが、今回は「中国抜き」あるいは「中国からの分離」を前提にする。従来の対話路線であるジョセフ・ユン、ビクター・チャともども、従来路線と認識の差が無いティラーソンも切られた。「1000億ドル赤字削減」など厳しい対中要求が噴出してきている流れと合致する。

2)今まで何故、文在寅・韓国政権の態度に反発しなかったのか

「韓国主導」ではなく、韓国を「隠れ蓑」に使っていた。

3)在韓米軍撤退要求を無視

米朝首脳会談に北朝鮮は無反応。労働新聞が弱弱しく、在韓米軍撤退を主張したが、米側は無視。中国の出方を探る意味合いの可能性がある。

4)崔善姫局長の出世

一部コメンテーターは、何の権限も無いと解説していたが、2月下旬に外務次官に昇進。ジュネーブ、オスロ、モスクワなどでの会談を成果として金正恩氏が認めている可能性がある。

5)軍事的圧力、制裁圧力の継続

対中抑止力として不可欠。

6)マクマスター大統領補佐官の辞任観測報道

取りあえず鎮まったようだが、ポンぺオ路線に反発した可能性が考えられる。米政権内の意見対立には要注意。

7)日本の拉致問題水面下協議の公算

16日付共同通信は、「拉致被害者田中実さんの入国を一転認める」と報じた。14年の話だが、突然、個別案件が流れたことは点検作業を行っている可能性が考えられる。対話時の焦点の一つ、米国人3人の解放と連動している可能性がある。

米国にとって、北朝鮮の非核化・抜本転換が重要なのか、対中強硬路線が重要なのか判然としないが、従来路線を根本的に変える流れにある。展開が読めないので、日本株は織り込んでいないと思われる。当面は国内で森友問題(内閣支持率が30%台に下落)、米国でFOMCが焦点になり、慎重ムードの強い地合いが想定されるが、サプライズ展開も有り得ると見て置きたい。中国の人事体制が確定し、王岐山副主席が外交トップを担うと観測されており、その出方も大きな焦点となろう

(12日付虎視眈々参照)。

歳川氏が情報を公開したことは、日本のインテリジェンスの追随能力を示したと思われる。日本の立場を主張すると見られる4月の安倍首相訪米は重要なイベントになると考えられる。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/3/19号)

《CS》

提供:フィスコ

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