ZOZOスーツは「ファッションテック関連株」物色モードをもたらすか? <株探トップ特集>

特集
2018年4月25日 19時30分

―業界動かすIT化というニューウェーブ、注目プレーヤーを追う―

経済産業省は20日、「生活製品におけるIoT等のデジタルツールの活用による生活の質の向上に関する研究会」の報告書を発表した。この研究会では、生活製品におけるデジタルツールの活用について、BtoC(企業対消費者間取引)やBtoBtoC(BtoCビジネスを行う企業を支援する企業活動)に着目し、主にファッションテックやスマートテキスタイルを取り上げている。テクノロジーによってファッション業界を改革する動きが広がるなか、物色テーマのひとつとして注目してみたい。

●「ZOZOSUIT」の配布計画発表へ

ファッションテックとは、ファッションとテクノロジーを組み合わせた造語で、ファッション分野に新たなデジタル技術を積極的に導入することにより、生産性の向上や製品・サービスの高付加価値化を図る取り組みを指す。例えば、EC(電子商取引)プラットフォームによるレンタルやリユースなどのサービスといったものから、工場のスマート化、受発注者のマッチング・プラットフォーム、顧客データと人工知能(AI)などを活用した商品開発、生産・流通管理、採寸、バーチャル試着など、さまざまな場面でこの言葉が用いられている。

ファッションテックに取り組む代表的な企業のひとつが、昨年11月に採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の配布を開始したスタートトゥデイ <3092> だ。このスーツはニュージーランドのソフトセンサー開発企業と共同開発した伸縮センサーを内蔵しており、スマートフォンとブルートゥース通信で接続することで、人体のあらゆる箇所の寸法を瞬時に計測することができる。通販ではサイズ感が分からないといった問題点を解決できるツールとしてユーザーの関心は依然として高く、同社は27日に予定しているアナリスト向け決算説明会で「ZOZOSUIT」の今後の配布計画を明らかにするとしている。

●富士通は「SMUGFIT」を展開

また、富士通 <6702> はスマホのアプリに身長を入力後、カメラを使ってウエスト、袖丈、股下のサイズを簡単に測定できる「SMUGFIT(スマグフィット)」を展開。東芝 <6502> [東証2]や凸版印刷 <7911> は鏡に見立てたディスプレーの前に試着者が立ち、カメラで映写された試着者の映像の上に洋服の画像データを重ね合わせ、あたかも試着しているようにみせるバーチャルフィッティングのシステムを手掛けている。

●enish、サイジニア、Gウィンにも注目

このほか、ITと一貫生産体制を融合したデジタルプロダクションシステム「Viscotecs(ビスコテックス)」を運用するセーレン <3569> 、ファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」を運営するenish <3667> 、ファッション写真を送るだけで簡単にオンラインショッピングができるAIファッションアプリ「PASHALY(パシャリィ)」を提供するサイジニア <6031> [東証M]、コンピューターグラフィックス技術を用いたバーチャルニットデザインシステム「APEX-3」を持つ島精機製作所 <6222> 、ファッションとテクノロジーの融合を目指す研究開発施設を昨年11月に開設したゴールドウイン <8111> などもファッションテック関連として挙げられる。

●帝人はウェアラブル製品開発の合弁会社設立へ

スマートテキスタイルは、スマート衣料とも呼ばれ、電気を通す繊維(導電性繊維)などの素材を使い、着るだけで生体データ(心拍・心電、筋電、呼吸数など)の取得や、繊維などの素材の伸縮を利用したモーションデータ(身体の動き)の測定ができる衣類などをいう。対象とする範囲はウェアラブル端末の一形態として電気・電子的な特性を持つテキスタイルのみとする捉え方もあれば、発熱などの機能を持つ機能性テキスタイルまで広く含める場合もある。

直近では、帝人 <3401> 子会社の帝人フロンティアが24日、スポーツセンシング(福岡市)と革新的なウェアラブル製品の開発を目指す合弁会社を設立すると発表。東レ <3402> は17日、理化学研究所などと共同で、耐熱性と高いエネルギー変換効率を兼ね備えた「超薄型有機太陽電池」の開発に成功したと発表し、衣服貼り付け型の電源応用などが期待されている。

●太洋工業は「低反発FPC」を開発

太洋工業 <6663> [JQ]は10日、熱硬化性の弾性フィルム上に電子回路を形成した低反発FPC(フレキシブルプリント配線板)を開発したと発表。これは柔軟性や伸縮性に優れ、スプリングバック(曲げたときに元に戻ってしまう現象)性が低いことが特徴で、身体などの立体的な部位に貼付して使用する生体情報取得用ウェアラブル電子機器への展開が見込まれている。

東洋紡 <3101> とユニオンツール <6278> 、東北大学は1月、共同で「産後うつ」研究向けに新たな妊婦用スマートテキスタイルを開発したことを明らかにした。東洋紡のフィルム状導電素材「COCOMI」が心臓から発生する微弱な電気信号を体表面で捉え、ユニオンツールのウェアラブル心拍センサー「myBeat」が、その信号を心拍情報として機器内に記録する仕組みとなっている。

これ以外では、着るだけでバイタルデータを取得できる「筋電WEAR」を展開するグンゼ <3002> 、スマート衣料「Smartfit(スマートフィット)」で取得したデータで熱中症リスクや体調変化などの情報をリアルタイムで通知するシステムを手掛けるクラボウ <3106> 、1月に開催された「第4回ウェアラブルEXPO」にスマートテキスタイル技術を出展した住江織物 <3501> 、伸縮性アクリル導電材料を扱う大阪有機化学工業 <4187> にも注目したい。

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