為替週間見通し:もみあいか、米利上げペース見極めへ

通貨
2018年6月2日 14時52分

【先週の概況】

■イタリア、スペインの政治不安緩和でリスク回避の円買い縮小

先週のドル・円は強含み。イタリア、スペインの政治不安はある程度解消されたことや5月米雇用統計の改善を好感してリスク回避的なドル売り・円買いは大幅に縮小した。

米朝首脳会談は予定通り6月12日開催の方向で再調整されることから、ドル・円は週初に109円83銭まで買われた。しかしながら、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国は増産に動くとの見方で原油先物は反落し、米長期金利の低下を受けてドル売り・円買いが一時活発となった。また、イタリアとスペインの政治不安を嫌気してユーロ売り・円買いが広がったことや、米政府が「欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに鉄鋼・アルミに対する輸入関税を適用する」と発表し、EU、カナダ、メキシコが対抗措置を取る姿勢を表明したことも、ドル売り・円買いにつながった。

ドル・円は一時108円11銭まで下げたが、イタリアで新政権が発足したことや、スペインでラホイ首相の不信任が成立したものの、政治的な混乱は生じなかったことから、リスク回避的なユーロ売り・円買いは急速に縮小した。さらに、1日発表された5月米雇用統計は市場予想を上回る強い内容だったことから、同日のニューヨーク市場ではドル買い・円売りが活発となり、ドル・円は一時109円73銭まで買われており、109円54銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは108円11銭から109円83銭となった。ドル・円の取引レンジ:108円11銭-109円83銭。

【今週の見通し】

■もみあいか、米利上げペース見極めへ

今週のドル・円はもみあいか。イタリア、スペインにおける国内政治の先行き不透明感はひとまず払しょくされたが、イタリアの債務問題に対する懐疑的な見方は残されているようだ。リスク回避的な取引が全面的に縮小しているわけではないことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペースを見極める展開となりそうだ。米通商政策に対する懸念はドルの下押し要因なろう。

イタリアの新政権(連立政権)による組閣の再調整で反欧州連合(EU)色はある程度薄められるとの期待から、ユーロの買戻しが予想される。ただ、新政権が公約する歳出拡大計画に市場は警戒している。ユーロ懐疑派とみられているパオロ・サボーナ氏を経済相に起用したことも一部でユーロ売り材料になるとの見方が出ている。

イタリアが財政拡張策に転換し、反EU的な政策を多く打ち出した場合、欧州政治の不確実性は高まり、政治的な混乱が再び生じた場合、米国の金融政策にも一定の影響を与える可能性がある。ブレイナードFRB理事は緩やかな利上げが適切としながらも、イタリアの問題に触れ「調整の用意」と政策変更の可能性を示唆している。連邦公開市場委員会(FOMC)の会合を来週12-13日に控え、ドルに関しては調整による売り買いが交錯する見通し。

一方、米トランプ政権は、鉄鋼・アルミ製品の輸入に関しカナダやメキシコ、EUに対する輸入関税の追加を決定し、貿易戦争への懸念が再燃している。5月雇用統計の改善で景気の先行きに対する楽観的な見方が広がっているが、1-3月期国内総生産改定値は下方修正されている。米国の通商政策に対する市場の懐疑的な見方が一段と広がった場合、ドルの上値は重くなる可能性が高い。

【米・5月ISM非製造業景況指数】(5日発表予定)

5日発表の米5月ISM非製造業景況指数は58.0と、4月の56.8を上回る見通し。ISM製造業景況指数は予想を上回ったが、1-3月期国内総生産(改定値)は下方修正されており、ISM非製造業景況指数が予想を下回った場合、ドル売りを誘発しよう。

【米・前週分新規失業保険申請件数】(7日発表予定)

7日発表の前週分新規失業保険申請件数は、低水準を維持し雇用情勢の安定的な改善が示されるか注目される。4月下旬以降は小幅ながら増加に転じており、雇用情勢の悪化に思惑が広がれば金利先高観は一段と後退するだろう。

予想レンジ:108円00銭-111円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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