アイスランド旋風【フィスコ・コラム】

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2018年6月24日 9時00分

サッカーのワールドカップ・ロシア大会で、初出場ながら健闘ぶりが光るアイスランド代表が「バイキング・クラップ」に乗って席巻中です。無名だった北欧の小国が急に強豪チームと肩を並べられるようになったのは、運や偶然のせいではありません。

アルゼンチンのスーパースター、メッシが放った強烈な左足のペナルティ・キックをアイスランドのゴール・キーパーが大きな右手で弾き返したシーンは、世界中を沸かせたことでしょう。初戦となったこの試合で、アイスランドは引き分けに持ち込んで勝ち点1を挙げ、順調に滑り出しました。殊勲のキーパー、ハルドーソンは映像ディレクターの仕事もこなすと後で知って、さらに驚きました。

アイスランドの代表チームは、本大会出場に向けたヨーロッパ選手権に1976年から2012年まで毎回予選で敗退していましたが、2016年に初めてベスト8に勝ち残り、そのままロシア大会の出場を決めました。サッカー通でなければほとんど知らない選手ばかりのチームで、今回はたまたま優秀な選手が集まっただけ、と考えられなくもありません。いずれにしても、いきなり強くなった印象を受けます。

アイスランドの人口は35万人で、東京都北区(34.1万人)と同程度。スポーツの競技人口も少ないため、オリンピックなどの国際大会には個人競技の選手が数名出場するのみです。しかし、団体競技で抜群の結束力を発揮することで知られ、2008年の北京オリンピックではハンドボールの代表が銀メダルを獲得しています。今回のサッカーの代表チームも、結束力の強さが前面に出ていたと指摘されています。

アイスランドといえば、2008年のリーマン・ショックの余波を真っ先に受けた国としても、今なお記憶に新しいでしょう。未曽有の混乱からわずか数年で自国経済を立て直すことができたのは、減価した通貨クローナを輸出に生かしたためです。また、アイスランド投資に失敗した海外投資家を税金で救済する政策を、有権者は国民投票で否決。国民が結束して政府やメディアを糾弾し、民主主義を取り戻しました。

ドキュメンタリー映画『鍋とフライパン革命』には、その過程が記録されています。こうした苦難に立ち向かった人々を、当時小中学生だったサッカー代表選手も目の当たりにし、少なからず影響を受けたはずです。アイスランド・サポーターの独特の応援法である「バイキング・クラップ」は勝利の儀式として知られていますが、意識を共有し一体となって成し遂げようとする国民性を表していると思えます。

アイスランド経済はこの10年間で劇的に改善し、毎年発表される世界平和度指数の世界ランキングでもトップが定位置となりました。スポーツではハングリー精神が勝利の原動力となる場合もありますが、どこか超然としてガツガツしないムードが、このチームの魅力です。ワールドカップでアイスランド代表は第2戦でナイジェリアに敗れはしたものの、最後まで注目したいと思います。

《SK》

提供:フィスコ

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