【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆戻り過程の駆け引き材料◆

経済
2018年7月22日 9時50分

〇円安押し上げ、攻防点を探る〇

CME日経平均先物は2万2800円台半ばまで上昇してきた。ドル円が112.95円まで進んだ円安に押し上げられた面が大きい。ドル建て日経平均は202ドル台で、先物主導、活況感に乏しい要因になっていると思われる。

巨額M&A資金調達思惑に支えられてきた円安だが、見方が徐々に変わって来ている可能性がある。昨日のパウエルFRB議長の議会証言でも米経済の順調さが強調されており、米利上げシナリオの再評価に向かっている可能性が考えられる。また、一部では、米中貿易戦争はドル買い材料との見方が出ていると伝えられる。米国が優勢なこと、輸入物価押し上げが利上げシナリオを補強すること、貿易収支の改善に進めばドル安圧力が減退すること、などが要因。

市場の円高懸念が後退し、企業業績期待に投影されればドル建て日経平均の上昇につながろう。110円±2.5円ゾーンから、110~115円ゾーンへのシフトであるが、もう少し見極めの時間が必要かも知れない。

もう一つの不活発化要因は、依然として東証空売り比率が高く(昨日は41.9%)、全市場ベースの新高値69に対し新安値89と株価低迷銘柄数が多い、売り方主導であることを示す点。野村総研が逆日歩コストを予測するサービスを開始すると発表したが、これは一般個人中心の信用売り分野(13日現在の東証一部の逆日歩銘柄は300を超える)。借株での空売り動向なども含めて、一段の情報提供が求められるところだ。

売り方を勢い付かせる可能性がある材料を探ると、やはり一つは中国情勢。例年、7月下旬から8月上旬は「北戴河会議」のシーズン。16日付け産経新聞は「習近平体制に異変あり、個人崇拝を抑制、北戴河会議で突き上げも」と報じている。写真やポスター撤去の話、写真に墨汁を掛ける動画の拡散、習思想プロジェクトの中止など断片的なものだが、米中貿易摩擦に効果的な手を打てない習主席が「最大の試練」を迎えているとの見方も出ているようだ。未だに不明な15年夏の天津大爆発は習主席のトラウマとの見方もあり、内部の神経質な攻防が表面化する可能性がある。

もう一つは7月下旬開催予定の「日米新通商協議(FFR)」。TPP、日欧EPAが前進しているだけに、自由貿易堅持の日本に対し、米国から厳しい要求が出た場合、一時的に悪材料視される可能性がある。農産物や自動車を巡る協議に限定されれば、市場への影響も限定的と見られるが、ライトハイザーUSTR代表発言などが誇張的に伝えられるリスクがある。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/7/18号)

《CS》

提供:フィスコ

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