S&P500 月例レポート ― 記録的な企業利益、強気相場は過去最長を更新へ! (2) ―

市況
2018年8月11日 7時01分

●株式市場

世論は引き続き盛り上がり、政治、経済、金融の見方次第では、議論はさらに高まりました。市場も同様に活発化し、米国市場は4カ月連続で上昇しましたが、米国以外の市場は年初来、難しい時期に陥っています(これはうまい言い回しで、米国以外の市場は年初来で3.16%下落)。数々の試練があっても、最終的に損失よりも利益が得られるほうが良いに決まっています(7月は、米国市場は3.25%上昇、米国以外の市場は1.91%上昇)。

市場を動かす材料となったのは例のごとく決算発表で、S&P 500指数構成銘柄のほぼ75%が決算を終えた段階で80%の企業で利益が予想を上回り、売上高も伸びています(前年同期比10.3%増)。現時点では、好調な企業業績が市場を牽引しており、好業績の原動力となっているのが税率の引き下げと、個人の所得減税による売上増加の見通しのようです。

貿易問題は依然として新聞紙面を賑わしており、今後もこの状況が続くと思われます。7月終盤に米中が新たな交渉を行うとの臆測が広がり、追加関税を求める公式の意見がトランプ大統領の顧問から上がったことから、貿易問題は引き続き世論の注目を集め、市場にも影響を与えました。市場は世論に無関心ではありませんが、政治的議論が市場に与える影響は小さくなっており、その影響が持続する時間も短縮されている模様です(午前11時に株価が下がり、午後1時には回復するといった具合に)。現時点では、実体経済も金融市場も好調で、話題の中心はバリュエーション、長期にわたる強気相場の行方、いずれ訪れる金利上昇ですが、ポートフォリオに対しては楽観的な見方が優勢です。

8月は引き続き貿易に関する議論の他に短期的な変動が予想され、特定の銘柄とグループのボラティリティは市場全体の変動よりも大きくなると思われます。決算発表は小売セクターに移りますが、このセクターの決算発表は消費者が新たな節税分をどのように使用しているか、米国経済を全体的にどう見ているか(およびどう予想しているか)について、(願わくは)より明確な手掛かりを与えてくれるでしょう。

過去の実績を見ると、8月は58.9%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.87%、下落した月の平均下落率は4.01%、全体の平均騰落率は0.69%の上昇となっています。今後のFOMCのスケジュールは、7月31日-8月1日、9月25日-26日*、11月7日-8日、12月18日-19日*、2019年1月29日-30日(*は記者会見が行われる)となっています。

●ファンダメンタルズ

2018年第2四半期の企業業績のポイントは以下の通りです。時価総額で全体の74.8%に相当する企業(企業数では全体の62.4%)が決算発表を終えましたが、これらの企業の80%で営業利益が予想を上回るという驚異的な結果となりました。EPSは3四半期連続で過去最高を更新する見込みで、今後も更新が続く見通しです。第1四半期に過去最高の11.40%となった営業利益率(従来の過去最高は10.27%、過去20年間の平均は8.08%)はさらに上昇し、現時点で11.69%となっています(小売セクターはまだ業績発表を終えていませんが)。売上高は前年同期比10.3%と力強い伸びを見せており、過去最高を更新する可能性もあります。小売りセクターの決算発表はこれからですが、今期の決算シーズンは事前予想を大幅に上回る内容が続いています。

一方で問題も生じています。Facebook(FB)は売上高が予想に届かず、今後の業績に対して警告を発しました。しかし、全般的に企業の業績見通しは良好で、税率の低下が再度利益を過去最高に押し上げる原動力となっているようです。こうした「幸せな日々」の陰では、減税効果が一巡した後の成長がどの程度になるかについて懸念がくすぶり続けていますが、売上高の増加(そしておそらくは過去最高となる見通し)が市場の不安を打ち消すのに一役買っています。減税効果が完全に織り込まれた後は、為替差損益に関する報道が続き、またその分析も行われていますが、売上高といったファンダメンタルズが株価の決定要因となるでしょう。

315社が第2四半期の決算発表を終え、利益が事前予想を上回った企業は253社、予想を下回ったのは42社、予想通りだったのは20社でした。 売上高では、完全に比較可能なデータがある310社のうち227社(73.2%)で予想を上回りました。セクター別でもほとんどが予想を上回りましたが、唯一エネルギーセクターでは営業利益が予想を上回った企業数が20社のうちの9社にとどまりました(45.0%)。次に振るわなかったのが不動産セクターで、予想を上回ったのは20社のうち11社でした (55.0%)。S&P 500指数全体の過去の平均は67%です。

2018年に関しては、企業の業績予想は引き続き好調で、第3四半期、第4四半期ともに予想の水準は維持されています(それぞれ0.4%と0.1%引き上げられています)。通期でも、2018年の利益は2017年を27.0%上回る見通しです(大半は減税効果による)。2019年は2018年から11.7%の増益が予想されています。この予想は引き続き楽観的と受け止められていますが、例年この時期にはこうした傾向が見受けられます。

2018年7月に支払われた1株当たり配当は3.20ドルで、2017年7月から10.3%増加しました。年初来では29.10ドルとなり、前年同期から8.98%増加しました。2018年年初以降259銘柄が増配し、減配を行ったのはわずか1銘柄だけでした。減配を実施したホテル大手のWyndham Worldwideは、事業をスピンオフして2社に分社化しました(スピンオフ後の2社の配当率は分社化前と同じ)。259対1という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。7月の配当金増加率の中央値は13.04%となり、6月の10.26%、5月の12.00%、年初来の10.26%を上回りました。また平均増加率は17.95%となっています(6月は12.29%)。年初来の平均増加率は14.29%(6月末時点では13.55%)となり、2017年の同期間の11.36%を上回っています。過去の支払いスケジュールと公表されている8月の予定から判断すると、来月の支払配当額は560億ドルを突破し、過去最高となる見通しです。

7月までの12カ月間の支払配当額は前年同期比で7.9%増加し、2018年は過去最高となることが予想されます。事業環境、現金の入手可能性、予想される利益の増加、株主還元を強調する企業の「意欲」を踏まえれば、実際の配当金の増加率も前年比で2桁になることもあり得ますが、現時点ではその可能性は低いと思われます(ただし、見込みはあります)。

承認額の57.3%に相当する自社株買い(1,074億ドル)が実施されました。2018年第2四半期の自社株買い額は過去最高となった第1四半期を1.9%下回りましたが、2017年第2四半期を62.6%上回りました。Appleは2018年第2四半期に208億ドルを自社株買いに投じました(指数の歴史において過去2番目の規模)。しかし、この額は2018年第1四半期に同社が実施した228億ドルという指数史上の最高額には及びませんでした。

※「記録的な企業利益、強気相場は過去最長を更新へ! (3) 」へ続く

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