【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆消えた商品ファンド◆

経済
2018年9月23日 9時50分

〇買戻し局面、商品ファンドの動静聞こえず〇

米中の追加関税合戦は、売り方にとって、一旦材料出尽くしの局面となったようだ。NYダウは0.71%高の26246ドル、今年1月の最高値26616ドルを窺う位置となってきた。目立ったのはシカゴCME日経平均先物で大阪比385円高の23665円。

23500円の節目を一気に抜くとともに、NYダウとの絶対値差は2581ポイントに縮まった(12月限なので、9月末配当落ち分160円程度を現物に加味する必要がある)。思った以上に買戻し圧力が強い。

その中で静かに広がっているのが、商品市況の一角の崩れ。

コーヒーが12年9ヵ月ぶり安値、天然ゴムが2年ぶりの安値圏など。原油は11月のイラン産原油輸入禁止を控え、年初来1割強高いが、銅は2割安、アルミは1割安など軟調だ。増産進む半導体は3割安水準。

代表的商品相場指標のCRB指数は190前後で推移(年初来高値は5月の206、安値は8月の186)。14年7月の312ポイントから崩れ、16年2月の156まで半減した状況から見れば、落ち着いた動きと言えなくもないが、株高とは対照的な動きとなっている。

背景は、中国経済減速懸念や新興国通貨安などが指摘されているが、スッカリ、商品ファンドの動静が聞こえなくなったことが影響している可能性も考えられる。日経平均の膠着相場が続く中でも、CTA(商品投資顧問業者)の名前は見なくなっていた。考えられる理由は大きく二つ。一つは、商品ファンドは通常、為替と絡めて動くので、ドル一極集中下、米市場に集中している可能性。もう一つは商品ファンド自体の大幅縮小。

商品ファンドマネーは言わば無国籍マネー。オイルマネーの縮小(サウジ財政赤字、カタール断交、中東紛争混迷など)、チャイナマネーの激減(低迷に転じた14年後半以降、習政権の腐敗摘発や資金流出規制が厳しくなった。また爆買い規制も行われている)、数年前のタックスヘイブン騒動などの影響が考えられる。また、運用機関として知られたクレディ・スイスやドイツ銀などの金融機関の取り扱い縮小や部門閉鎖が影響している可能性も考えられる。蛇足だが、英国投資協会(IA)の発表によると、17年のIA加盟ファンド運用資産は11%増加し、過去最高の7.7兆ポンド(約10兆ドル)。業界全体では9.1兆ポンド。運用資産全体が縮小している訳ではない。

米中貿易戦争の今後の展開、あるいは米金融政策の展望を考える時、インフレ観は一つの重要なポイントになると思われるが、現状の商品相場の動向から見ると、一次産品によるインフレムードは高まり難いと思われる。むしろ、商品相場の低迷は中国経済減速と結び付けられる可能性が高いと思われる。

世界情勢混迷下での隠れたウォッチポイントの一つとなろう。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/9/19号)

《CS》

提供:フィスコ

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