テクマト Research Memo(4):2018年3月期は過去最高業績を達成

特集
2018年10月19日 15時14分

■業績動向

1. 2018年3月期累計業績の概要

テクマトリックス<3762>の2018年3月期の連結業績は、売上高で前期比6.9%増の23,512百万円、営業利益で同15.8%増の1,902百万円、経常利益で同26.3%増の2,054百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同28.4%増の1,308百万円と増収増益となり、売上高、利益ともに過去最高を連続更新した。第3四半期までは営業利益で前年同期比6.4%減と減益で推移していたが、旺盛なIT投資需要と第3四半期までの高水準な受注残を背景に、第4四半期に一気に盛り返した格好だ。

事業セグメント別では、情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業ともに増収増益となり、過去最高を更新した。会社計画比で売上高が2.0%、営業利益が4.9%下回ったが、これはアプリケーション・サービス事業で2件の不採算プロジェクトが発生したことが主因となっている。営業利益では約2億円のマイナス要因になったと見られ、不採算プロジェクトが発生しなければ、営業利益は会社計画を上回っていたことになる。なお、両案件とも既に検収は終わっており、今後の業績への影響はない。

2.事業セグメント別の動向

(1) 情報基盤事業

情報基盤事業の売上高は前期比7.4%増の15,839百万円、営業利益は同13.5%増の1,553百万円となった。売上高営業利益率は増収効果により前期比0.5ポイント上昇の9.8%となった。

分野別の売上動向を見ると、負荷分散装置については従来、大手インターネットサービス事業者向け等が中心であったが、Office 365との連携ソリューションにより一般企業向けの需要開拓が進み、前期比1ケタ増収となった。また、ランサムウェア等の標的型攻撃に代表されるサイバー攻撃に対する防御力強化に向けたシステム投資の拡大を追い風にして、次世代ファイアウォールやアンチウイルス製品、Webアプリケーション脆弱性検査ツールなども官需・民需含め堅調に推移した。次世代型メールセキュリティ製品やAIを活用した次世代アンチウイルス製品等の最先端のセキュリティ対策製品の引合いも好調だったほか、セキュリティ運用・監視サービスについては前期比2ケタ増収となった。そのほか、ストレージ製品も放送局やメディア・エンターテインメント業界において放送コンテンツの高精細化(4K/8K化)に伴う保存データ量の増大に対応するための投資が活発化しており、2ケタ増収となった。

連結子会社のクロス・ヘッドでは保守・運用・監視サービスが堅調に推移したものの、当第1四半期にSES※1事業の構造改革※2を実施したことで技術者の稼働率が一時的に低下し、通期業績は計画を下回ったものの第2四半期以降は計画どおりに収益も回復している。また、沖縄クロス・ヘッドでは、第4四半期に地方自治体向け大型案件を獲得したことで計画を上回る業績を達成し、2社合計では当初計画どおりの業績となった。

※1 SES(Software Engineering Service):ソフトウェアやシステムの開発等、特定業務に対して技術者の労働を提供する契約形態。

※2 収益性向上施策として、低採算だった案件から技術者を一旦戻し、AWS(アマゾンウェブサービス)向け等の高度な技能が必要とされる高採算案件への戦略的シフトを実施した。

受注高については負荷分散装置やストレージの受注が好調だったほか、官公庁や大学等のネットワーク、セキュリティ・インテグレーションの大型案件を受注したことで、前期比11.2%増の16,905百万円となり、期末受注残高についても同19.8%増の7,567百万円とそれぞれ過去最高を更新している。また、単体ベースで見たストック売上比率については38.6%と2017年3月期よりも0.7ポイント上昇した。ストック売上には保守サービスや運用・監視サービスが含まれるが、同社では40%程度が適正水準と見ている。2016年3月期以降、官公需向けを中心にセキュリティシステムの構築需要が伸びたこともあって37%台に低下していたが、ストック売上高についても着実に増加していることがうかがえる。2018年3月期の単体売上高は前期比7.6%増の11,213百万円、うち、ストック売上は同9.5%増の4,326百万円、非ストック売上は同6.5%増の6,887百万円といずれもバランスよく伸びている。

(2)アプリケーション・サービス事業

アプリケーション・サービス事業の売上高は前期比5.9%増の7,672百万円、営業利益は同27.1%増の349万円となった。インターネットサービス分野やCRM分野で不採算プロジェクトが発生したものの、医療分野やソフトウェア品質保証分野の増収効果により、営業利益率は前期比0.8ポイント上昇の4.6%となった。

分野別の動向を見ると、インターネットサービス分野は金融機関向けシステム開発が堅調だったものの、既存顧客向け大型開発案件で一部不採算案件が発生し、受注活動も手控えられた影響で売上高は前期比1ケタ減収となり、損益面でも計画を下回った。また、CRM分野は大手SIとの業務提携やクラウド需要の拡大もあって売上高は堅調に推移したものの、特定顧客向けの大型案件で不採算プロジェクトが発生したことにより、損益面では計画を下回った。一方、ソフトウェア品質保証分野は、自動車のIT化に伴い車載ソフトウェア等の開発工程で利用されるソフトウェアテストツール等の引合いが好調に推移し、前期比2ケタ増収となった。

また、医療分野では「NOBORI」の契約施設数が前期末の約650施設から約800施設へと拡大し、前期比2ケタ増収と好調に推移、収益性も増収効果により向上した。契約施設数は当初目標の約850施設に若干届かなかったが、第4四半期において大型案件の受注を獲得したことにより、売上高、利益ともに計画を上回って着地している。「医知悟」についても従来の病院向けサービス提供に加えて、健診施設等の顧客開拓や病理分野へのサービス展開が拡大したことにより、契約施設数が前期末の約600施設から約650施設、月間読影件数が約18万件から約20万件に増加し、従量課金金額についても順調に増加し、収益増に貢献した。

受注高については前期比1.3%減の8,009百万円となった。インターネットサービス及びCRM分野における不採算案件の収束を最優先とし、第3四半期まで同分野においては受注活動を手控えたことが影響したと見られる。ただ、第4四半期だけで見ると前年同期比で14%増と回復基調に転じている。また、期末受注残高についてもクラウドサービスの伸張を背景に、前期末比3.6%増の6,359百万円と増加基調が続いた。

単体ベースのストック売上比率は、医療分野を中心にクラウドサービスが好調に推移したほか、非ストック売上が減少したこともあり、52.8%と初めて50%を超える水準となった。今後もストック売上比率については60%程度を目安に事業を拡大していく方針で、収益性の向上と同時に安定性を高めていく戦略をとっている。なお、2018年3月期における単体売上高は前期比3.7%増の7,002百万円、うちストック売上は同19.5%増の3,694百万円、非ストック売上は同9.6%減の3,308百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

提供:フィスコ

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