【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆日銀5連投◆

経済
2018年10月21日 9時40分

〇「調整」一巡ムードも「政治」の足かせ〇

先週の世界的株暴落は、日米当局を中心に「一時的な調整」との説明がなされた。ロイターは「米株急落の犯人、プログラム取引に風当たり強まる」と報じ、「リスクパリティ戦略」で自動売買プログラム運用のファンドが下落を増幅させたと看做されている様だ。この部分の調整は比較的早くに一巡感が出ると思われる。

ただ、先例となる2月6日の下落(日経平均1071円安で2万2000円割れ)後、安値を叩いたのは5営業日後(2月14日ザラバ安値2万1000円割れ)。節目の22000円を取り戻す場面を織り交ぜながら21000円台での揉み合いを経て、3月26日に20347円のザラ場安値(二番底)を叩いた。22000円台の揉み合いに戻ったのは4月18日以降で、概ね2ヵ月半の時間を要した。安値の叩き具合を睨みながら、不安定な状況が続くと想定して置きたい。

主に経済・金融情勢だけで説明されているが、政治情勢の混迷が足かせになるリスクがある。

安倍首相は本日、臨時閣議を開き、19年10月の消費増税を決めると伝えられる。米中情勢などを睨み、再々延期論が出ていただけに失望材料となろう。国民の関心は高く、既に軽減税率でのイートイン論争などが大きな話題だ。消費税はわが国には不向き(源泉徴収率が高く、物価動向に敏感など)と言われ、財務省の財政赤字説明のウソも指摘されてきたが、安定財源論に押し切られた恰好。「働き方改革」(残業代カット)、「外国人労働者受け入れ」(賃金上昇抑制)、「就職活動改革」(大学格差拡大)など、評判は良くなく、来年の参院選に向け、若者を中心に安倍支持崩落となるリスクに注意が要る。

デフレ脱却がさらに遠のくとの見方(消費増税後に五輪後懸念が控える)が強まれば、日銀金融政策依存に傾く公算がある。それを示唆するかのように、今回の株価調整で5日からETF購入は5営業日連投となっている。夏場に買い控えていたため、余力は十分あるが、相場が不安定さを増せば、日銀依存の見方が強まろう。為替市場の攻防(ムニューシン米財務長官が為替協議に言及)も含まれる。

ドイツではバイエルン州議会選で、与党(CSU)が「歴史的敗北」と伝えられる。得票率は日本時間午前1時の35.5%から午前5時現在で37.4%に若干持ち直している様だが(前回47.7%)、連立政権のSPD(社会民主党)も20.6→10.0%に凋落している。受け皿は移民に寛容な「緑の党」と厳しい「ドイツのための選択肢(AfD)」。既にグラついていたメルケル政権の安定度は喪失状態に追い込まれる。

トランプ政権では信頼感の厚いマティス国防長官の辞任が迫っている様だ。トランプ大統領は関係悪化を否定しつつも、「(長官は)民主党員のようなところがある」と述べ、考え方の違いを示した。

当初、狂犬と言われたマティス氏だが、戦争の抑止力となって来たと見られている。辞任すれば、中間選挙後のトランプ政策はますます読み難くなると見られる。

一般的には、政治の不安定さは市場で嫌われる。米中攻防に加え、日米独の政治不安定化に要注意の状況となろう。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/10/15号)

《CS》

提供:フィスコ

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