プラチナの行方は「米中首脳会談」次第、貿易摩擦解消なればリスク選好へ <コモディティ特集>

特集
2018年11月28日 13時30分

―パラジウム史上最高値下支えも世界経済減速懸念が重しに―

プラチナ(白金)の現物相場は11月、中国の景気刺激策に対する期待感や米中の貿易摩擦に対する懸念後退を受けて9月半ばからのレンジを上放れ、11月7日に6月25日以来の高値877.52ドルをつけた。ただ、その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で利上げ見通しが示され、ドル高に振れると上げ一服となり、「往って来い」の値動きとなった。

供給ひっ迫感の強い パラジウムが史上最高値を更新したことが下支え要因だが、世界経済の減速に対する懸念も出ており、プラチナの上値を抑える要因になっている。当面は月末の20ヵ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行われる米中首脳会談が焦点であり、貿易摩擦の行方を確認することになる。

●米中の通商協議再開もAPEC首脳会議で対立

米中首脳の電話会談をきっかけに貿易摩擦に対する懸念が後退した。中国の習近平国家主席は8日、キッシンジャー元米国務長官と北京で会談し、トランプ米大統領とG20が開かれるアルゼンチンで「深い意見交換」を行う考えを示した。9日にはワシントンで高官級の外交・安保対話が行われるとともにムニューシン米財務長官と劉鶴中国副首相が電話会談を行った。

11月30日~12月1日にアルゼンチンで開催されるG20に合わせて行われる米中首脳会談に対する期待感が高まった。中国は米国から要請のあった幅広い通商改革に対し書面で回答し、通商協議が再開された。米政権は知的財産権侵害や工業への助成金、米企業の参入障壁、米国の対中貿易赤字などに対して中国政府を非難していた。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は18日、初めて首脳宣言で合意できずに閉幕した。貿易や投資を巡って対立する米中両国の溝を埋めきれなかった。また、米通商代表部(USTR)は20日に発表した報告書で、中国はサイバー空間での米知的財産権の侵害行為やそれを支援する政策・慣行を継続しており、差別的な技術ライセンスの制限も引き続き行っていると指摘した。

●米中が合意できるかが焦点

米大統領は22日、米中首脳会談で、中国と何らかの「ディール(取引)」を行うことを望んでいると述べた。ただ、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、関税引き上げの見送りを求める中国の要請を受け入れる可能性は「非常に低い」と述べており、会談で貿易摩擦解消に向けて合意できるのかどうかが焦点となる。

米国は2019年の年初から、2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げる方針であり、会談が不調に終わった場合、制裁関税の第4弾を発動する構えを示している。第4弾が発動すると、中国から輸入する全製品に対して関税が課されることになる。

●金利上昇と貿易摩擦激化が圧迫要因になるか

クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長は16日、米金利はFRBが中立金利と見なす水準に近づいているとし、中立的であることは「理に適う」との見解を示した。「世界的な減速を示唆する証拠はある」とし、自身が米経済見通しについて考える際はこの点を参照していると述べた。

また、経済協力開発機構(OECD)は21日、2019年の世界の経済成長率が3.5%に鈍化するとの見通しを示し、従来予測の3.7%から下方修正した。貿易摩擦と金利上昇が背景にある。貿易摩擦が激化すると、リスク回避の動きがプラチナの圧迫要因になるが、米FRBの利上げ観測が後退するとドル安に振れ、金主導で上昇する可能性も出てくる。

●プラチナはファンド筋の手仕舞い売りが上値を抑える

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク・プラチナでファンド筋の手仕舞い売りが出た。買い越しは11月6日時点の2万3924枚がピークとなり、20日時点では2万1785枚となった。買い玉は6日の4万6037枚から20日に4万2994枚に減少した。一方、プラチナETF(上場投信)残高は11月20日時点のロンドンで9.07トン(10月末9.48トン)、27日時点の米国で19.02トン(同18.73トン)、南アフリカで21.87トン(同22.57トン)となった。米国で増加したが、ロンドンと南アで減少しており、投資資金が戻るかどうかを確認したい。

●パラジウムは供給ひっ迫で強気

パラジウムの現物相場は11月16日、史上最高値1184.97ドルを付けた。米中の通商協議再開を受けて先行きに対する期待感が出て一段高となった。リースレート(貸出金利)1ヵ月物が26日時点で12.84%(10月末12.31%)と高止まりし、供給ひっ迫感が強い。ただ、中国国家発展改革委員会(NDRC)の報道官は15日、一部メディアで報道された50%の自動車購入税減税は検討も提案もしていないと言明しており、景気刺激策に対する期待感は後退した。

目先は米中の貿易摩擦が激化すると、ファンド筋の利食い売り主導で調整局面を迎える可能性がある。一方、ニューヨークの指定倉庫在庫が減少傾向であることに加え、ニューヨーク・パラジウムでファンド筋の買い余地が残っている。CFTCの建玉明細報告によると、ニューヨーク・パラジウムでファンド筋の買い越しは年初のピークである2万7614枚から8月21日に982枚まで縮小したのち、11月20日時点で1万4264枚となった。ファンド筋の買い意欲が強まると、1200ドルの節目を突破し、1300ドルを目指すとみられている。パラジウムが堅調に推移すると、プラチナの下支え要因になる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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