カドカワ Research Memo(1):電子書籍・電子雑誌事業が好調持続、2019年3月期は大幅増益を目指す

特集
2018年12月12日 15時01分

■要約

カドカワ<9468>は、大手出版社の(株)KADOKAWAと日本最大級の動画サービス「niconico」を運営する(株)ドワンゴが2014年10月に経営統合して誕生した総合メディア企業である。出版事業のほか「niconico」を中心としたWebサービス事業、映像・ゲーム事業を中心に、メディアミックス戦略による事業拡大を推進している。

1. 2019年3月期第2四半期累計業績の概要

2019年3月期第2四半期累計(2018年4月-9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.6%増の102,129百万円、営業利益が同0.2%増の2,864百万円となった。Webサービス事業は有料会員数の減少傾向が続き減収減益となったものの、電子書籍・電子雑誌の販売好調により出版事業が増収増益となったほか、アニメの海外ライセンス販売、ゲームの海外ロイヤリティ収入の好調による映像・ゲーム事業の増収増益でカバーした。「niconico」については通信回線の増強や画質向上などサービスの改善を図ったほか、2018年8月より新しい生放送サービス「nicocas(実験放送)」をリリースし、視聴者が配信者にアイテムを送ることで配信者を支援することができる「ギフト」(投げ銭機能)も導入するなど新機能の拡充を実施した。2018年9月末のプレミアム会員数は194万人とダウントレンドが続いているものの、「niconico」の視聴者数・回数はこれら施策により前年よりも増加しており、着実にその効果は出始めている。

2. 2019年3月期業績見通し

2019年3月期の連結業績は、売上高が前期比11.7%増の231,000百万円、営業利益が同154.4%増の8,000百万円と期初計画を据え置いた。主な増益要因はWebサービス事業と映像・ゲーム事業の増益によるもので、2018年11月以降リリースを予定しているオリジナルゲーム4タイトルの収益貢献を見込んでいる。なかでも最も期待度が高いのは2018年11月29日にリリースしたAR技術を使った位置情報ゲーム「テクテクテクテク」だ。リリース当初から大型コラボがなされ、ゲームの魅力度をアップさせる。その他のゲーム作品の中には、「ニコニコ生放送」や「nicocas」等による生放送の視聴者が参加することを前提としたゲームもあり、有料会員数の増加にもつながる可能性がある。その他、VTuber(バーチャルYouTuber)に必要な要素をワンストップでユーザーに提供するVR事業において、サブスクリプションモデルのサービスを開始するほか、「ギフト」や「カスタムキャスト」(VTuber作成+ニコ生放送配信アプリ)でのパーツ販売による都度課金収益の拡大を見込んでいる。2019年3月期の業績はこれらの取り組みがどの程度、収益貢献するかがポイントになってくる。

3. 今後の成長戦略

同社は、ネットとリアルを融合したメディアミックス戦略を国内外で展開しながら事業を拡大していく方針だ。グループのIP戦略として、出版を起点とする従来型のメディアミックスだけでなく、niconico等の出版以外から生まれた原作を起点とした統合シナジー型のメディアミックスを実現していく戦略を掲げている。IPの創造と育成も強化しており、2018年4月よりサービス開始したアニメ総合情報サイト「Nアニメ」※は旧作アニメの、無料配信・一挙放送や新作アニメのコラボキャンペーン等、様々な取組により四半期ごとに月間UU数が成長しており、第2四半期(2018年7月-9月)で月平均700万UUまで増加しており、10月より本格始動している。出版事業では適量生産・適時配送に対応する新たな書籍製造・物流システムのテスト稼働を開始しており、2020年春に完成する所沢の書籍製造・物流拠点において本格稼働を開始する。同システムの導入によって、需要に見合った少量生産を低コストで実現できるほか、返品率低減による収益性向上が見込まれる。また、電子書籍事業も年率2ケタ台の増収ペースが続く見通しだ。現状は先行投資ステージである業績も、これら施策を推進していくことで中長期的には着実に成長していくものと弊社では予想している。

※動画・漫画・ニュース・イラストなどniconicoの各サイトに分散していたアニメコンテンツや情報を集約したアニメポータル。アニメファンがニコニコ内アニメコンテンツを回遊できるようになっており、ユーザー数の拡大が期待される。2018年10月より本格サービスを開始、新作アニメの配信(有料・無料)情報の他、TV放送日など作品情報も紹介し、新作アニメとのコラボレーション企画も開始している。

■Key Points

・2019年3月期はWebサービス事業、映像・ゲーム事業の収益拡大により3期振りの増益に転じる見通し

・新サービス拡充のほか、オリジナルゲームとの相乗効果やVR事業の取り組み強化で「niconico」の再成長を目指す

・IPの創造と育成、出口戦略の強化を図り、中期的な成長拡大を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《RF》

提供:フィスコ

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