商品相場から読み解く年末相場の行方 <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年12月13日 20時00分

●先行指標となる2つのコモディティ

前回の当コラム「株式市場は底値を確認か、空売り金額で読む師走相場」で指摘した通り、これまでのところ日経平均株価は10月26日の安値2万0971円を割り込むことはなかったものの、12月3日から11日までおよそ7%急落した。

この下げの要因としては、ファーウェイCFO逮捕による米中貿易摩擦の激化懸念や米国債券市場における3年債と5年債の逆イールドカーブの発生、米国の景気減速懸念などが挙げられる。

では、ここから年末にかけて株式市場はどう推移するのか。コモディティ市場の動きから今回は読み解きたい。

今年の相場の流れを追う上で、商品市場の動向は筆者にとって有力な先行指標であった。

ここではニューヨークを拠点に活動し金融・商品情報を提供する「よそうかい.com」の松本英毅氏に年内のWTI原油と米国産大豆価格の見通しをうかがったので、以下に簡単に紹介したい。

・WTI原油価格

年末までは製油所の税金対策もあり例年通りであれば在庫の取り崩しが進みやすく、ポジション整理の買い戻しを呼び込むきっかけになる可能性がある。

・シカゴ大豆

米中通商交渉で中国向けの大豆輸出が再開するとの見方が強まる中、買いが集まってくるのではないか。中国は国内需要をブラジルなどの南米産のみで賄うことはできず、いずれ高い関税を払ってでも、米国産の大豆の買い付けに踏み切ることになろう。

●上値は重く、ボックス圏での推移か

筆者は今年、WTI原油を足もとの景気の強弱感、大豆を米中貿易摩擦に対する懸念の大きさを測る先行指標として重視してきた。

WTI価格は、米国の景気減速懸念による需給のだぶつきで大きく値を崩す展開となったが、OPECでの減産合意(12月7日)もあり直近では底値固めの動きにある。これに加えて、在庫の取り崩しが進めば、これまで下落の一途をたどってきたWTI価格が落ち着き、「世界景気減速懸念の後退」→「米国株式市場を下支え」→「日本株にとっても安心材料(現在の水準からの原油反発であれば)」という連鎖の構図が意識されてくるのではないかと筆者はみている。

シカゴ大豆に関しては、今年は米中貿易摩擦の影響が価格に大きく反映されてきたが、10月下旬を押し目底に下値圏ボックスを上放れる兆しをみせている。米中貿易摩擦の完全な解消とまではいえなくとも、摩擦の和らぎを先んじて示唆しているとはいえないか。大豆はファーウェイCFOが逮捕された12月以降も緩やかに上昇を続けている。仮に大豆が松本氏の予想するように年末にかけて買いを集めるのであれば、米中摩擦の後退(=中国による大豆買い付けの再開)を織り込む動きがより強まったともみてとれよう。

確かに債券市場の動向には注意を払う必要はあるが、残された師走相場は2つの懸念(景気減速と米中摩擦)だけでなく、その好転への期待も意識されて底割れは遠のいたと考えている。ただ、市場の懸念はなお大きいだけに上値は重く、日経平均は現在の2万1000円~2万2700円前後のボックスで推移するとみている。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。

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