エノモト Research Memo(3):金型と樹脂成形、一体成形などの技術に強み

特集
2018年12月14日 15時03分

■事業概要

2. 事業内容

エノモト<6928>は主にリードフレームやコネクタ用部品、インサートモールド、及びそれらの製造に使われる精密金型や周辺装置の製造販売を行っている。同社グループは、同社と子会社4社(連結子会社3社、非連結子会社1社)で構成され、国内4工場、海外2工場(フィリピン1工場、中国1工場)という生産体制になっている。同社の製品はIC・トランジスタ用リードフレーム、オプト用※リードフレーム、コネクタ用部品、その他という4つの製品群に分けられ、売上高構成比はそれぞれ35.6%、13.8%、47.4%、3.2%となっている(2018年3月期)。ちなみに、IC・トランジスタ用リードフレームは自動車や民生用機器向け、オプト用リードフレームは自動車や照明向け、コネクタ用部品は自動車やスマートフォンやデジタル家電向けの部品製造が多く、その他はリレー用部品などで、用途別売上高構成比は車載向け32.7%、スマートフォン向け30.8%、民生向け24.8%、その他11.6%である(2018年3月期)。

※オプト:光電子工学(オプトエレクトロニクス)の略称

(1) IC・トランジスタ用リードフレーム

ICトランジスタ用リードフレーム製品群では、ICトランジスタ用リードフレームとその製造に使用する精密金型や周辺機器を製造し、各種部品メーカーに販売している。IC・トランジスタは民生用機器や産業用機器、自動車部品など広範に使用される電子部品で、同社は金属材を精密加工してIC・トランジスタの部品となるリードフレームを製造している。パワー半導体向けリードフレームや小信号デバイス向けリードフレーム、ヒートシンクなど、金属プレスやカシメ※などの各工程を一貫して大量にかつ安定して製造することができるため、様々な用途や要求に対応することができる。なかでも、種々の異形条材料への対応力や、パワー系デバイスに使用される放熱効果の高いカシメ部品などに強みがある。

※カシメ:金属の塑性変形(変形が増すにつれてより硬くなること)を利用した接合方法。

リードフレームは、従来金属単体の製品だったが、樹脂成形を含めた一貫生産の要求が増し、金型と樹脂成形を融合した同社の技術が不可欠になっている。また、金型技術も、基本の「抜く・曲げる」に「つぶす(コイニング)・絞る」など多彩で高度な技術を複合させることにより、あらゆる分野において高度な要求に応えることができる。そして、これらは同社の強みと言うことができ、こうした技術を駆使することで、医療機器や機械部品、太陽電池関連、モーターコア向けなど多数の製品を開発することができたのである。また、様々な加工技術を有する同社は、その総合力により高度な顧客ニーズに対応するだけでなく、鉛フリーを始め環境に配慮した製品づくりも推進しており、新たな付加価値を提供している。

(2) オプト用リードフレーム

オプト用リードフレーム製品群では、LED用リードフレームとその製造に使用する精密金型や周辺機器の製造販売を行っている。同社はLED用リードフレームについて、金型の設計・製作から試作品開発、大量生産まで一貫して対応しているが、LED製品の形状を決定する重要な部品であることから、自動車部品メーカーや照明機器メーカーとコラボレーションしながら生産している。主要製品はLEDディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト、自動車の各種ランプ、その他の産業用や民生用、照明用のLEDに使用されるリードフレームである。なかでも大型ディスプレイ用に強みがあり、タテ型(砲弾型)LED用リードフレームは国内トップシェアを誇る。また、輝度や耐久性といった面で難易度の高いデザインなどへの要求も多く、長年の経験とノウハウによってカスタマイズした最適な提案で応えている。一方、開発期間の短縮やコスト削減、試作用途など様々な目的に対応するため、自社製オープンフレームも各種用意しており、気軽に利用できる利便性が好評で、ラインナップを順時拡大する予定になっている。

(3) コネクタ用部品

コネクタ用部品製品群では、コネクタ用部品とその製造に使用する精密金型や周辺機器の製造販売を行っている。コネクタ用部品は電子回路や光通信において配線を接続するために用いられる部品・器具のことで、同社は携帯電話などに利用されるコネクタやFPC(Flexible Printed Circuits)コネクタ、細線同軸コネクタなどを製造している。なかでも、スマートフォンやウェアラブル端末の普及、高精度化とともに、コネクタやコンタクトピンの極小化が求められ、狭ピッチ品へのニーズが非常に高まっている。これに対して同社は、金属プレス加工の複雑な曲げ形状の技術と樹脂成形加工の技術を融合することで、0.3mmの最小クラス狭ピッチコネクタを供給している。このように、長年培ってきたプレス技術とモールド技術により、同社は難易度の高い様々な要求に対して、最適なソリューションを提供することができるのである。このため近年、精密性と堅牢性が厳しく求められる自動車向けに、同社のコネクタ用部品の販売量が増加している。なお、同社の国内外の工場では、金属端子部品のプレス加工やメッキ加工、樹脂成形加工から設計、製造までの一貫生産を行っているほか、OEM(Original Equipment Manufacturer)による供給にも対応している。

(4) モールド

モールド(鋳造・射出成形)は同社の製品群に横軸を通した技術で、超精密な金属打ち抜き部品と樹脂成形を一体化した高精度なインサートモールド(一体成形)部品の製造方法である。平状フープ及び縦フープでのインサート成形や、単品部品をロボットでモールド金型に供給して成形する複合成形など、長年培ってきた高度な技術を駆使し、あらゆるパターンのインサートモールドに対応している。金型の設計や製造、部品生産のみならず、開発から試作、量産に至るまでのライン構想の提案など、モールドに対するあらゆるニーズにも対応することができる。主な製品はLEDやコネクタ、通信用リレー、センサー、レーザー用の部品などで、省電力や多機能小型化といったニーズにも応えている。また、インサートモールドは、金型とフレームなどを一体に成形する技術のため厳しい寸法精度が要求される。同社は、フレームとモールドのマッチングを社内で一括管理・一貫生産しているため、こうした高精度のモールド部品を生産することができるのである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《RF》

提供:フィスコ

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