為替週間見通し:ドルは弱含みか、米政府機関の長期閉鎖を警戒したドル売りも
【先週の概況】
■米政府機関閉鎖を警戒して円買い強まる
先週のドル・円は軟調推移。12月の米NY連銀製造業景気指数が市場予想を下回り、ドル売りが先行した。18日発表の11月米住宅着工件数は市場予想を上回ったことから、米国株式相場は下げ止まったものの、米政府機関閉鎖の可能性が浮上し、国内政治不安は増大したことからドル売りが再燃した。ドル・円は20日のニューヨーク市場で一時110円81銭まで下落した。
18-19日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り0.25ポイントの追加利上げが決定された。ただ、FOMC予測では2019年は2回、2020年は1回の利上げが想定されており、資産圧縮も継続されることから、株式市場は大幅安となり、この影響で米長期金利は低下した。また、トランプ大統領がつなぎ予算案に署名をしない方針を示したことから、政府機関閉鎖が強く警戒されドル売りが活発となった。
21日のニューヨーク外為市場でドル・円は、110円93銭まで下落後、一時111円45銭まで反発し、111円21銭で取引を終えた。この日発表された7-9月期国内総生産(GDP)確報値は下方修正されたため、ドル売りが優勢となった。トランプ大統領が一部米国政府機関閉鎖の確率が上昇したと警告したことや、マティス米国防長官の辞任によって地政学的リスクの増大が懸念されたことから米国株式が大幅に続落したことも、ドル売り材料となった。ドル・円の取引レンジ:110円81銭-113円52銭。
【今週・来週の見通し(12月24日-1月4日)】
■ドルは弱含みか、米政府機関の長期閉鎖を警戒したドル売りも
今週・来週(12月24日-1月4日)のドル・円は弱含みか。18-19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で今年4回目の利上げが実施されたものの、景気の先行きに関しては不透明感が広がっている。2019年の金利見通しから、利上げ回数は9月時点の年3回から2回への引き下げが見込まれる。金利先高観は後退しており、ドルを買い進めることは難しくなりそうだ。日経平均株価の下落基調が続けば円買い圧力がさらに強まる可能性がある。
利上げペースの鈍化はある程度織り込まれていたとみられるが、目先的にはドルを買いづらい状態が続くと予想される。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC後の記者会見で米国経済の健全性を強調したものの、12月消費者信頼感指数、12月ISM製造業景況指数、12月雇用統計など経済指標が市場予想を下回った場合、2019年以降の利上げシナリオは大幅に修正されるとの見方が出ている。
トランプ米大統領は、メキシコとの国境の壁の建設費計上について野党民主党との妥協を拒む姿勢を変えておらず、米国時間22日午前0時1分から、米政府機関が一部閉鎖されることになった。米国株式は米政府機関閉鎖の可能性をある程度織り込んでいたが、長期閉鎖を警戒して週明けの米国株式は一段安となる可能性がある。この影響で欧州、アジア諸国の株式相場も軟調に推移するとの見方が多く、日経平均は大きな節目である20000円を下回る可能性がある。主要国の株安が一服すればドルの押し目買い興味が強まると予想されるものの、具体的なドル買い材料が提供されない場合、ドルの戻りは限定的となりそうだ。
【米・12月消費者信頼感指数】(12月27日発表予定)
27日発表の米12月消費者信頼感指数は133.6と、11月の135.7を下回る見通し。依然として高水準ながら、3カ月連続で前回を下回れば、米国景気はピークアウトしたとの見方が広がりそうだ。
【米・12月ISM製造業景況指数】(1月3日発表予定)
1月3日発表の米11月ISM製造業景況指数は58.2と、11月の59.3を下回る見通し。先行指標とみられる12月NY連銀製造業指数は予想以上に鈍化したことで、ISMの下振れも想定され、株安につながる可能性もあろう。
【米・12月雇用統計】(1月4日発表予定)
1月4日発表の米12月雇用統計は、失業率3.7%、非農業部門雇用者数は前月比+18.0万人、平均時給は前年比+3.0%と見込まれる。失業率は半世紀ぶりの低水準が続くか注目される。
予想レンジ:109円00銭-113円00銭
《FA》
提供:フィスコ