企業に勝利をもたらす「人材育成」、いま社員研修関連株が注目されるワケ <株探トップ特集>

特集
2019年2月14日 19時30分

―労働生産性の向上やコンプラ強化の流れを受け、一段と高まる企業の研修熱―

少子高齢化や労働力人口の減少が続くなか、企業においても生産性の向上や業務の効率化が重要になっている。パフォーマンスを最大化するための「人材の育成」は、企業の競争力につながるだけに、経営課題の重要テーマに挙げる経営者も多い。

また近年では、社会的にコンプライアンス(法令順守)の強化や、快適な職場環境づくりが求められるようになってきた。こうした人材の育成や社員教育の一環として研修ニーズが高まっており、「社員研修」関連銘柄のビジネスチャンスは拡大が続いている。

●人材投資で労働生産性向上へ

わが国の労働生産性の伸びは1990年代以降鈍化傾向にある。その要因の一つとして人材面では労働力の質の低下がいわれており、非正規雇用比率の上昇や、企業業績が厳しい状況化で人材投資が十分行われなかったことなどの影響が指摘されている。

しかし近年では、企業業績の改善に加えて、「働き方改革で削減した時間や残業代を人材育成に活用する例も増えている」(中堅証券)といわれるように、企業は再び人材投資に注力し始めている。内閣府が2018年8月に公表した「平成30年度年次経済財政報告」(経済財政白書)でも、企業が人材投資を1%増やすと労働生産性が0.68%増えるとの推計を示しており、企業の社員研修を後押ししている。

●増加傾向にある研修費用

人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(東京都文京区)が昨年9月にまとめた「2018年度教育研修費用の実態調査」によると、企業の教育研修費用総額の17年度の予算額は7703万円、実績額は6733万円、また18年度の予算額は8017万円で、3年連続で増加した。

一方、従業員1人当たりの17年度実績額は3万8752円で、前年度の調査より1575円アップし、18年度予算額は4万7138円と増加傾向にある。更に、教育予算の対前年度比をみると、「増加」した企業が53.0%を占めたという。

この数字からは、人手不足が深刻化するなか、人材を外部に求めるのではなく、社内の人材をいかにして育てるかに企業が本腰を入れ始めたことが見て取れる。また近年では、効率化に関する教育だけではなく、メンタル・ハラスメント教育なども増加している。社会的なコンプライアンス強化を受けて、研修費の増加傾向は当面続きそうだ。

●インソースは講師派遣型研修・公開講座とも好調

社員研修の業界は参入障壁が低いことから小規模の会社も多いが、上場企業で関連銘柄の代表格として注目されているのは、講師派遣型研修と公開講座を柱とするインソース <6200> だ。

同社の19年9月期第1四半期(18年10-12月)連結決算では、部下指導やファシリテーションなどのスキルアップ研修が好調で、講師派遣型研修の実施回数が前年同期比14.9%増の4075回に拡大した。また、公開講座ではメンタルヘルス研修やAI・RPAやOAなどのIT系研修が伸長して受講者数が同28.8%増の1万6215人に増えており、これらが牽引役となって営業利益が3億1400万円(同28.9%増)と大幅増益となった。

また、大手企業を主要顧客とし、ビジネススキルなどの研修や海外研修サービスを提供するアルー <7043> [東証M]の18年12月期連結決算では、「新人・若手領域」を中心に既存顧客からの受注が大幅に拡大しているほか、「管理職領域」の新規受注の拡大もあって教室型研修の売上高が前の期比24.2%増の17億8000万円に拡大しており、これを牽引役に営業利益が同1億8300万円となった。続く19年12月期も教室型研修を中心に堅調を見込んでいるという。

●LINK&M、TKPなどにもメリット

リンクアンドモチベーション <2170> は、従業員のモチベーションを高める教育研修に強みを持つ。18年12月期主力のコンサル・アウトソース事業は前の期比12.4%増と伸長しており、これが牽引して営業利益は同13.7%増となった。

また、貸し会議室の管理・運営を行うティーケーピー <3479> [東証M]も社員研修の増加で恩恵を受ける企業の一つだ。

同社の貸し会議室は年間約2万4000社に利用されており、利用目的の約2割が研修とされている。19年2月期第3四半期累計(18年3-11月)連結決算は営業利益が前年同期比14.8%増となったが、企業の採用活動が積極化・通年化したことや社員教育研修などが増加したことで、貸し会議室・宴会場の需要が大きく増加。これを業績好調の要因の一つに挙げている。

更に、法人向け教育サービスで大型案件を継続的に受注しているビジネス・ブレークスルー <2464> や、子会社を通じて企業・個人向けにCAD、WEB、デザイン、IT、ビジネスパソコンなどの各分野の教育・研修を行う「Winスクール」を運営するテクノプロ・ホールディングス <6028> なども関連銘柄として注目したい。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.