サムティ Research Memo(2):不動産事業と不動産賃貸事業のバランスの取れた事業構成(1)

特集
2019年2月20日 15時12分

■サムティ<3244>の会社概要

1. 事業概要

事業セグメントは、「不動産事業」「不動産賃貸事業」「その他の事業」の3つに分類される。好調に推移している「不動産事業」が売上高(調整前)の89.2%を占めている(2018年11月期実績)。ただし、「不動産賃貸事業」が着実に伸びてきたことに対して、「不動産事業」は事業環境等によって大きく増減するところに注意が必要である。創業以来、安定した高稼働率が期待できるレジデンス(マンション等)を得意分野としており、リーシング(賃貸付け)に強みがある。最近では、高い客室稼働率が期待できるホテル事業にも注力している。

また、2015年3月にSRRを設立し、同年6月に東証J-REIT市場に上場させた。同社グループは、SRRへのスポンサーとしての役割(物件供給)とアセットマネジメント業務等を担っている。SRRの現在の資産規模は896億円となっている。

営業拠点は、大阪本社(大阪市淀川区)のほか、東京支店(東京都千代田区)、福岡支店(福岡市博多区)、札幌支店(札幌市中央区)、名古屋支店(名古屋市中村区)の4ヶ所にあり、地方大都市圏を中心として全国に展開する体制が確立されている。

同社グループは、同社及び連結子会社13社によって構成されるが、「不動産事業」及び「不動産賃貸事業」を行うプロセスにおいて、土地・建物及び信託受益権を取得・保有・開発するスキームに関連して設立または出資している特別目的会社(SPC)や一般社団法人が7社含まれている。主な連結子会社には、サムティアセットマネジメント(株)(アセットマネジメント等)、(株)サン・トーア(ホテル運営等)、サムティプロパティマネジメント(株)(物件管理等)などがある。

各事業の概要は以下のとおりである。

(1) 不動産事業

同社の成長を支える事業であり、「開発流動化」「再生流動化」「投資分譲」「アセットマネジメント」の4つのサブセグメントに区分される。

「開発流動化」は、不動産ファンド向け賃貸マンション(自社開発ブランド「S-RESIDENCE」シリーズ)等の企画、開発及び販売を行っている。基本的には総戸数200戸前後の大型ワンルームマンションであり、吹き抜けのあるエントランスや高級感あふれるデザインに特徴がある。最近では、規模にかかわらず不動産ファンド等からの需要が大きいことから、中型物件も増えてきた。SRRに対して「S-RESIDENCE」シリーズの優先交渉権を付与しており、基本的にはSRRへの物件供給を中心に据えている。

「再生流動化」は、既存の収益不動産の再生及び販売を行っている。取得した収益不動産に対して、リーシングノウハウやバリューアップノウハウの活用、設備改修によるグレードアップなどにより、稼働率の向上等を図り、保有期間中の収益確保につなげるとともに、最終的には、投資物件として不動産ファンドや事業会社、個人富裕層等に販売することによる売却益を目的としている。また、SRR向けのウェアハウジング※も行っている。なお、保有期間中の賃料収入は不動産賃貸事業に計上される。

※REITに組み入れるための物件取得。

「投資分譲」は、主に個人投資家向けの投資用ワンルームマンションの企画・開発を行っている。自社では販売を行わず、販売会社に卸販売(区分及び1棟売り)するところに特徴がある。営業エリアにおいて販売実績のある販売会社とのネットワークを構築し、企画開発の段階から販売会社と協議を行うことにより、顧客(利用者)ニーズに合致した物件を供給している。また、品薄感から販売会社による青田買いの動きが活発な首都圏を除くと、同社のリーシングノウハウ(賃貸付けを行った上で卸販売)の高さが他社との差別化や販売会社に対する信頼性及び交渉力につながっている。

「アセットマネジメント」は、同社がアセットマネジャーとして不動産ファンドからの不動産の運用及び管理業務等を受託することによる手数料収入のほか、同社自らの不動産ファンドへの出資による配当収入を目的としている。SRRが順調に立ち上がったことにより、SRRの資産規模の拡大に伴って、アセットマネジメント業務も拡大する方向にあると言える。なお、本事業における収益体系は、運用報酬(運用資産残高の0.45%)のほか、取得報酬(物件取得価額の1.0%)、譲渡報酬(物件譲渡価額の0.5%)等によって構成される。とりわけ運用報酬については、運用資産残高に応じて、毎期、安定的な収益が期待できるものである。

(2) 不動産賃貸事業

同社の安定性を担保する基盤事業である。セグメント利益率も高い水準を維持している。関西圏及び首都圏のほか、福岡、札幌、名古屋等の政令指定都市を中心とした全国各地に84棟(有形固定資産)を有するとともに、マンション、オフィスビル、商業施設等、多様な資産に分散投資を行っている。施設別の内訳は、延床面積ベースでマンションが76.5%、オフィスが1.6%、商業施設・物流施設等が21.9%となっており、安定した高稼働率が期待できるマンションの比重が高い。リーシングノウハウを生かすことで年平均90%を超える高い稼働率を実現している。保有不動産の規模は約727億円(簿価)に上るが、最終的に売却を目的とする棚卸資産(販売用不動産)約261億円と自社保有を目的とする有形固定資産約465億円に分かれる(2018年11月末)。なお、2014年12月にリニューアルオープンした琵琶湖湖畔の大型商業施設「ピエリ守山」については、今後の注力分野であるホテル開発事業への投資を優先する経営判断により、売却(資金回収)に踏み切った。

(3) その他の事業

主にホテルの保有及び運営、分譲マンション管理事業、建設・リフォーム業を行っている。ホテル事業については、「センターホテル東京」(東京都中央区、客室数108室)、「センターホテル大阪」(大阪市中央区、84室)※1、「エスペリアホテル長崎」(長崎県長崎市、153室)、「GOZAN HOTEL」(京都市東山区、21室)のほか、2018年5月に取得したビジネスホテル「SMART HOTEL kutchan」(北海道虻田郡倶知安町、同67室)、2018年11月にオープンしたホテル開発第2弾「エスペリアイン日本橋箱崎」等の保有や運営を行っている※2。また、ホテル事業以外では、子会社のサムティプロパティマネジメントによって、分譲マンション管理(同社分譲物件を中心に外部物件を含む)及び建設・リフォームなども手掛けている。ホテル開発事業の展開(賃料収入の確保)やホテルマネジメント業務の内製化(フィー収入ビジネスの強化)は、今後の重点戦略となっている。

※1 「センターホテル東京」及び「センターホテル大阪」、「エスペリアイン日本橋箱崎」の運営については、子会社のサン・トーアが行っている。

※2 2018年3月28日にオープンしたホテル開発第1弾「エスペリアホテル博多」(福岡県福岡市、同287室)については売却済(運営も他社へ移管)である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

提供:フィスコ

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