外需株の試金石となるか、安川電機の決算発表 <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2019年7月9日 20時00分

G20と米中首脳会談を通過し、米国・欧州の利下げ期待にも支えられて、日本の株式市場は底堅く推移している(8日現在)。だが、筆者は7月11日の安川電機 <6506> の決算発表がきっかけとなり下振れる可能性もあると考えている。

外需関連の多い日本株にとって、世界最大級の市場(人口)を擁し、米国と並ぶ経済大国でもある中国の経済変動による影響は避けられない。

米中通商協議が再開されたことで両国の貿易問題が解消に向かうとの楽観論もあるが、中国の姿勢を見る限りそれは容易ではないことがうかがえる。

■習近平国家主席が発した『新長征』の重み

5月22日にキルギスで開催された上海協力機構の会合で、習近平国家主席は米中貿易戦争を“新長征”として位置づけている。

「長征」はかつて紅軍(共産党)が国民党と戦った国共内戦において、包囲された紅軍が拠点であった江西省瑞金を放棄し2年間にわたって1万2500キロを踏破した歴史的行軍を指す。約10万人とされた紅軍の兵力は国民党軍との戦いなどでその過程で2、3万人まで損耗した。だが、この長征を耐えて持久戦に持ち込んだことが、毛沢東の指導権確立と反転攻勢につながったとされている。中国の指導者にとって「長征」の持つ意味は重い。

習氏が語った“新長征”とは、『中国が(経済的に)痛手を受けても持久戦で反転のチャンスを待つ』、その強い覚悟を内外に示したものと捉えられる。

実際に前週末に米中通商交渉は電話協議が再開されたが、中国は制裁関税撤回を求める立場は崩しておらず、また外資系企業に対する技術移転の強要や自国企業への過剰な補助金といった中国の構造改革を巡る問題についても譲歩する構えはみせていない。

■中国株式市場に灯る過熱サイン

中国株式市場の騰落レシオ(25日移動平均)を見ると(7月5日時点)

中国上海50A株指数 130.058

香港ハンセン指数  125.188

と、過熱圏にあることを示唆する指数もみられる。つまり、テクニカル面からは中国株の反発は上値余地が限られてきている可能性がある。

加えて前述した通り、中国の姿勢を見る限り米中貿易摩擦解消を巡って大幅な進展は望み難い。その間にサプライチェーンの中国からの移転は徐々に進んでいくことが想定される。米国との貿易摩擦が長期化し、サプライチェーンの中国外しが進めばこれまでの経済的繁栄を維持することができないのは明白であり、中国経済は減速する可能性が高いと考えている。

産業用ロボットやサーボモーターを手掛ける安川電機は中国関連の代表的銘柄でもある。7月11日に発表が予定される第1四半期決算は、足元の中国経済を映して厳しい内容となることが予想される。冒頭に述べたように、それが呼び水となりG20後に買われてきた外需関連を中心に売られる展開となる可能性もある。それだけに、安川電機の決算発表には注意を払いたい。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

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