プラチナは出遅れ修正で1年半ぶり高値、米中協議への期待感なども下支え <コモディティ特集>

特集
2019年9月25日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は今月初旬に他の貴金属に対する出遅れ感から急伸し、5日に2018年3月以来の高値996.93ドルをつけた。その後は金反落やドル高を受けて上げ一服となったが、米中の通商協議に対する期待感や欧米の金融緩和の見方などが下支えとなった。

●米中協議は先行き不透明

米中の通商協議では9月1日の追加関税発動を控えて中国が交渉優先の姿勢を示したが、追加関税発動の撤回を要求したため、話し合いはまとまらなかった。米中の追加関税が発動すると、貿易摩擦に対する懸念から欧米の金融緩和の見方が強まった。当初9月とされた閣僚級の通商協議が10月の開催で合意すると、米中に譲歩の動きが見られた。中国が米国製品に対する追加関税について、免除の対象品目を発表すると、トランプ米大統領が10月1日に予定していた2500億ドルの中国製品に対する関税率引き上げを15日に延期すると発表した。

その後は19日の次官級の通商協議を控え、中国が米国産の大豆や豚肉も追加関税の対象から除外し、米国産大豆の購入を再開した。米大統領は一部関税の発動延期や撤回を含めた暫定合意を検討するとしたが、協議が進むと、「全面的な」合意を望むと述べた。閣僚級の通商協議は10月第2週に予定されたが、米大統領は大統領選まで合意する必要はないとの見方を示しており、先行き不透明感が強い。

●景気の行方は米中次第

一方、欧州中央銀行(ECB)理事会では包括的な刺激策、米連邦公開市場委員会(FOMC)では追加利下げが決定された。米連邦準備理事会(FRB)当局者らの見通しでは意見が分かれ、追加緩和観測が後退したが、景気の行方は米中の貿易戦争の行方次第である。米国の関税率引き上げや追加関税が発動し、中国が報復関税を課すと、世界経済の悪化から景気後退懸念が高まるとみられる。景気後退懸念はプラチナの上値を抑える要因だが、中国が内需刺激策を発表しており、実需筋の買いが続くと、支援要因になるとみられる。

また、金融緩和観測から パラジウムが堅調に推移すると、プラチナETF(上場投信)に投資資金が流入し、価格を押し上げる可能性が出てくる。ただ、プラチナは供給過剰見通しに変わりはなく、1000ドルから一段高になるには南アフリカでストライキが起きるなど、プラチナ独自の強材料が必要になろう。

●他の貴金属に対する出遅れ感から一段高も供給過剰見通し

プラチナは他の貴金属に対する出遅れ感から900ドルの節目を突破すると、1000ドル直前まで上昇した。金は米中の追加関税が発動すると、欧米の金融緩和観測から堅調となり、2013年4月以来の高値1556.65ドルを付けた。

また、は金堅調につれ高となって急伸し、2016年9月以来の高値19.64ドルをつけた。大幅な供給不足見通しであるパラジウムは1500ドル台を回復し、ロジウムは抵抗線となっていた3700ドルを突破し、2008年の高値である1万ドルを目指す可能性が指摘された。

今回のプラチナ急伸で目立った強材料は見当たらなかったが、テクニカル要因の買いが実需筋の踏み上げを巻き込んで上値を試す格好となった。その後は米中の通商協議に対する期待感からパラジウムが史上最高値1663.75ドルをつけ、ロジウムが5000ドルまで上昇するなどプラチナ系貴金属(PGM)の騰勢が強まっており、調整局面後のプラチナの下支え要因になっている。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は6日に発表した四半期報告で、2019年は10.7トンの供給過剰との見通しを示した。前年の21.0トンから供給過剰幅を縮小する見通しだが、ファンダメンタルズに変化はなく、プラチナの上値を抑える要因である。

ただ、プラチナは戻り高値を突破し、1年半ぶりの高値をつけ、テクニカル面で改善した。投資需要が予想以上に増加するようなら上値を試す可能性もある。2019年の投資需要は28.1トンと前年の0.5トンから急増する見通しとなっている。

●NY市場でファンド筋の買い意欲が強まる

ニューヨークの先物市場で9月に入り一段高となるなか、大口投機家の買い玉が増加した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月17日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは3万3648枚(8月27日時点2万2987枚)に拡大した。買い玉は7月30日の4万6983枚から5万8540枚に増加した。一方、売り玉は2万3996枚から2万4892枚と小幅に増加した。当面は10月限から1月限への限月移行が進む時期であり、買い玉の動向を確認したい。

一方、プラチナETF残高は23日の南アで30.98トン(8月末31.96トン)、米国で24.06トン(同23.04トン)、11日の英国で17.36トン(同13.22トン)となった。南アで減少したが、欧米で増加しており、引き続き買われると価格を押し上げるとみられる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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