原油追加減産へ調整本格化か?OPEC不利な賭けを苦渋の選択 <コモディティ特集>

特集
2019年10月16日 13時30分

今月、石油輸出国機構(OPEC)のバルキンド事務局長は12月の総会に向けて、「2020年の安定性の向上と持続につながる適切かつ強力で、積極的な決定を下す」と語った。追加減産の可能性については「すべての選択肢があり得る」とし、追加減産協議の開始を示唆した。

一方で、ロシアのノバク・エネルギー相はOPECプラスの合意修正に関する協議は行われていないと述べたほか、クウェートのファデル石油相は来年以降の石油在庫の増加について協議するのは時期尚早であるとの認識を示した。

●追加減産は“不利な賭け”

産油国にとって、追加減産は賭けである。相場が刺激されなければ、減産によって石油収入は確実に減少することから、基本的に各国とも否定的である。追加減産で合意し、歳入拡大につながるほど相場が上昇するのか誰にもわからない。世界的な景気見通しの悪化によって石油需要が下振れしているなかではなおさら不透明である。協調減産は合意までに多くの時間を必要とするなど、小回りが全くきかないことから、不利な賭けであると言わざるをえない。

トランプ米大統領は原油高を望むOPECを繰り返し批判しており、相場の抑制に積極的である。成立していないが、米国では石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案が協議されており、主要な産油国は米国の動きを常に警戒しなければならない。サウジやロシアが相場を強く押し上げようとしても、米国の存在は無視できず、消極的で小幅な減産以外の選択肢はないといえる。思い切って大幅な減産に賭けてみるという選択肢は現実的ではない。世界的に景気が減速しているため、幅広い国から批判を浴びる可能性がある。

原油安を背景にOPECを中心とした産油国は財政面で追い詰められている。イランのタンカーやサウジの石油施設が攻撃を受けたにも関わらず、原油相場は重いままであり、景気見通しからすると一段安が避けられそうにない。不利な賭けであり、負けが目に見えているとしても、何もしないという選択肢はないと思われる。追加減産を見送れば、原油安が進むだろう。

●ロシアとサウジが意見調整か

今週14日、ロシアのプーチン大統領がサウジアラビアを訪問し、サルマン国王のほか、ムハンマド皇太子と会談した。プーチン氏のサウジ訪問は12年ぶりである。エネルギーのほか、中東の安定、経済問題などについて協議が行われ、追加減産も話題となった可能性が高い。米国をよそにサウジとロシアの距離は確実に縮んでおり、OPECプラスが追加減産を協議することで合意したとするならば、今後は関連する発言が伝えられそうだ。

米中通商協議が口頭での合意に至り、合意内容を文書化する作業へ向かっているものの、世界経済の悪化見通しは変わらないだろう。米中通商協議の行方に関わらず、追加減産に向けた意見調整を本格化させなければならないと思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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