安値もみ合いのプラチナ、米中摩擦一服も景気減速懸念が重石 <コモディティ特集>

特集
2019年10月23日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は9月末、ドル高を受けて調整局面を継続すると、米中の通商協議に対する懸念も圧迫要因になって900ドルの節目を割り込み、10月に入ると、8月28日以来の安値869.43ドルをつけた。その後は中国の米国産大豆購入など歩み寄りの動きが見られるなか、通商協議待ちとなって下げ一服となったが、905.15ドルで上値を抑えられ、もみ合いに転じた。

米中の通商協議では部分的な合意に達し、米国が10月15日に予定していた中国製品に対する関税率引き上げを見送った。中国は米国が12月に予定している中国製品に対する追加関税の撤廃も要求しており、合意文書化に向けてさらに交渉したいとしている。

11月16~17日にチリで開催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で米中首脳が「第1段階」の合意文書に署名する可能性があるという。ただ、トランプ米大統領は第1段階が終われば第2段階の協議を始めるとしているが、包括的な合意のめどは立っていない。

一方、国際通貨基金(IMF)は15日に発表した世界経済見通しで2019年の成長率を3.0%(前回7月は3.2%)に下方修正し、08~09年の金融危機以来の低い伸び率になると予想した。また、米中が10月と12月の制裁関税発動をやめた場合、抑制幅は0.8%ではなく0.6%に縮小するとの見通しを示した。更に、米中の関税措置が全て撤廃された場合、20年末までに世界成長率が0.8%押し上げられるとした。

第1段階の合意文書への署名で米国が12月の追加関税を見送る可能性があるが、IMFの世界経済見通しでは減速に変わりはなく、供給過剰のプラチナの需給が改善するのは難しいとみられる。ただ、 パラジウムが史上最高値を更新し、ロジウムも堅調に推移している。また、が再び上値を試すとプラチナETF(上場投信)に投資資金が流入し、再び1000ドルに向けて上昇する可能性も出てくる。

●プラチナは供給過剰見通しが圧迫も他の貴金属の堅調が下支え

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が9月に発表した四半期報告で、プラチナは19年、10.7トンの供給過剰見通しとなっている。ただし投資需要が28.1トンに急増し、前年の21.0トンからは供給過剰幅を縮小している。

世界経済の先行き懸念が強いなか、中国の自動車販売が前年比15ヵ月連続で減少するなどしており、自動車触媒需要の伸び悩みが警戒される。一方、10月に入ると弱気の米経済指標を受けて米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測が高まった。

9月の米ISM製造業景気指数は47.8と09年6月以来の低水準となり、米小売売上高は前月比0.3%減と7ヵ月ぶりのマイナスとなった。自動車が0.9%減と8ヵ月ぶりの大幅な落ち込みとなり、製造業部門の低迷に対する懸念が強い。

CMEのフェドウォッチによると、29~30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準が1.50~1.75%に利下げされる確率は92.5%(前月44.9%)となっている。利下げが実現しドル安に振れれば、金主導でプラチナも堅調に推移するとみられる。

パラジウムは史上最高値1782.97ドルをつけた。各国の製造業の減速に加えIMFが世界経済の成長率見通しを下方修正したが、需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)が上昇し、パラジウムの供給ひっ迫感が強い。

リースレート1ヵ月物は18日時点で12.65%となり、9月末の9.88%から上昇した。プラチナは0.53%(9月末は0.28%)と落ち着いた動きとなっている。また、ロジウムは08年以来の高値5150ドルをつけた。同年につけた史上最高値となる1万ドルを目指すとの見方もあり、プラチナの下支え要因である。

●プラチナETFに投資資金の流入が続く

ニューヨークの先物市場で調整局面を継続するなか、大口投機家の買い越しが縮小した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月15日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは2万8247枚(9月17日時点3万3648枚)に縮小。手じまい売り・新規売りが出た。

一方、プラチナETF残高は22日の南アフリカで31.03トン(9月末31.01トン)、米国で24.34トン(同23.06トン)、18日の英国で18.19トン(同17.55トン)となった。各国のプラチナETF残高が増加し、引き続き投資資金が流入した。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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