米中合意第1弾は原油市場の軌道を変えるか?<コモディティ特集>

特集
2019年10月30日 13時30分

今月、口頭ではあるものの、米国と中国は第1弾の通商合意に達した。来月16、17日に行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、文書化された合意にトランプ米大統領と習近平主席が調印する見通しとなっている。

トランプ米大統領は、今回の「第1段階」では中国による米農産品の大規模購入のほか、一部の知的財産権、為替、金融サービスの問題などについて合意したと発表したが、その後は中国が購入する米国産農産物の規模の報道ばかりであり、米中貿易戦争の本丸である根本的な問題についての言及は乏しい。根本的な問題とは、中国企業への強制的な技術移転の禁止、中国国有企業への補助金削減、知的財産権の保護などである。

●知財権部分合意の内容が焦点

今回合意に至った一部の知的財産権の保護について、どの程度文書化されるのだろうか。知的財産権の保護について踏み込んだ協議が行われ、十分に文書化されているならば、第2弾、第3弾の合意に向けて弾みがつくが、そうでなければ第1弾の合意は失望に変わる。CNBCはナバロ米大統領補佐官が知的財産権の保護が棚上げされていることに異議を唱えていると報じており、知財の文書化作業は平坦ではなさそうだ。約2週間後のAPEC首脳会議まで知財の部分合意についてあまり報道されないようだと、警戒感が高まるのではないか。

第1弾の合意が農産物絡みの文言で埋め尽くされていると、第2、第3弾の合意までの道のりはかなり長そうだ。これまでの協議がほとんど何も進展していないことが文章をもって明らかになるわけである。米中貿易摩擦の根本的な問題を含まない合意を合意とは言えない。

●第1弾合意は原油相場浮揚の可能性秘めるが…

来月公表される予定の米中合意文書は今後の米中通商協議を占う。先の見えないトンネルが続くのか、出口が意外に近いという思惑が広がるのか、合意文章の内容次第である。ただ、長引く協議を振り返ると期待するのは賢明ではない。期待の数だけ失望があったはずである。

原油相場を圧迫し、現在の軟調なトレンドを形成する背景となっているのは、米中貿易戦争による世界的な景気減速・縮小懸念である。主要国では企業景況感指数の低下が続いており、石油需要の下振れ見通しが根強い。第1弾合意は、この悲観的な需要見通しを大きく修正し、相場を浮上させる可能性を秘めている半面、中国の商習慣に起因する米中貿易摩擦の難しさをあらためて意識させる機会となり得る。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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