プラチナ、金主導で急落も株高など下支える <コモディティ特集>

特集
2019年11月20日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は11月に入り、9月25日以来の高値955.31ドルをつけたのち、金急落やドル高を受けて軟調となり、900ドルの節目を割り込むと、864.64ドルまで下落した。ただ、ドル高が一服すると、安値を買い拾われ、900ドル台を回復した。

10月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げが決定され、プラチナの支援要因となったが、米中の通商協議の進展期待をきっかけに金が急落すると、プラチナもつれ安となった。また、段階的な関税撤廃の話が出ると、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ休止見通しが強まってドル高に振れ、プラチナの下げが加速。米10年債利回りが8月1日以来となる1.97%まで上昇したこともドル高要因となった。

しかし、トランプ米大統領が関税撤廃で合意していないと述べると、通商協議に対する期待感が後退しドル高が一服、プラチナの下支え要因になった。また、米主要株価指数が最高値を更新したこともプラチナを下支えた。

国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、米国が12月に予定している中国製品への追加関税を見送っても減速見通しに変わりはないとの見方であり、プラチナには先行き懸念が残っていた。しかし、米国が9月発動分の追加関税の撤廃を検討していると伝えられ、中国が段階的な関税撤廃で合意したことを明らかにすると、景気の先行きに対する楽観的な見方が強まった。

米政権内で関税撤廃に強く反対する動きもあるが、米中の通商協議で第1段階の部分合意がまとまれば、景気見通しが改善しプラチナ需要増加の支援要因となる可能性が出てくる。ただ、プラチナの供給過剰見通しに変わりはなく、ファンダメンタルズが改善するまでは850~1000ドルで方向性を模索する動きになるとみられる。

●米中の通商協議の行方と経済指標を確認

米中の通商協議で第1段階の部分合意がまとまりつつあるが、今後の関税の行方について米中で温度差があり、先行き不透明感が出ている。中国は関税撤廃を要求しているが、米国は今後の知的財産権や構造問題に関する協議を控え、撤廃には踏み込まず、12月に予定している追加関税の見送りでまとめようとしている。

ただ、現時点では第1段階の部分合意に向けて部分的な関税撤廃が協議されているが、合意文書署名が12月にずれ込む見通しとなり、追加関税発動を予定している12月15日が近づいている。19日には、中国側が5月以降に発動した関税の撤廃を要求していると伝えられており、米国がどこまで受け入れるかが焦点である。

米経済指標は底堅さを示したが、製造業の減速に対する懸念が残っている。第3四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比1.9%増と、事前予想の1.6%増を上回った。ただ、設備投資が2四半期連続で減少し、第2四半期の2.0%増から減速した。

10月の米ISM製造業景気指数は48.3と9月の47.8から改善したが、景気拡大・縮小の節目となる50を3ヵ月連続で下回った。一方、10月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は12万8000人増加し、事前予想の8万9000人増を上回った。自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)のストライキの影響で大きく減速するとみられていたが、労働市場の堅調が示された。

10月の米鉱工業生産指数は0.8%低下し、事前予想の0.4%低下を下回り、2018年5月以来の大幅なマイナスとなった。ただ、GMのストライキが終了したことから、11月は持ち直すとみられている。

トランプ米大統領とパウエルFRB議長が18日にホワイトハウスで会談し、同議長は、金融政策の行方は今後入手される経済見通しに基づくと強調した、という。

CMEのフェドウォッチによると、19日時点でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準の確率は、12月は1.50~1.75%に据え置きが99.3%(前月66.7%)と利下げ休止が見込まれている。ただ、来年12月は1.25~1.50%に利下げが39.2%(同37.0%)、1.50~1.75%に据え置きが32.6%(同24.8%)となった。米中の通商協議の行方や経済指標次第で見通しは変わりやすい状況である。

●欧米のプラチナETFから投資資金が流出

ニューヨークの先物市場で戻りを売られるなか、大口投機家の買い越しが縮小した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月12日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは3万8459枚となり、9月以来の高値をつけた月初5日時点の4万5695枚から縮小。手じまい売り・新規売りが出た。

一方、プラチナETF(上場投信)残高は19日の南アフリカで31.81トン(10月末31.70トン)に増加、18日の米国で24.04トン(同24.34トン)、英国で17.82トン(同18.24トン)に減少した。欧米のプラチナETFから投資資金が流出したことも上値を抑える要因になった。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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