プラチナはレンジ内で急伸、低金利継続見通しなどが支援 <コモディティ特集>

特集
2019年12月18日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は11月半ば以降、米中の通商協議の進展待ちとなるなか、900ドル前後で推移したが、南アフリカの計画停電や米連邦公開市場委員会(FOMC)をきっかけに急伸し、11月4日以来の高値948.48ドルを付けた。

米中の通商協議は中国が関税撤廃を要求し、米国もそれに応じて要求を拡大したことから12月にずれ込んだが、15日の米国の対中追加関税の発動を控えてようやく第1段階の原則合意に達した。中国は米国産の農畜産物の購入を拡大、米国は追加関税の発動を見送り、1200億ドル相当の中国製品に課している15%の追加関税率を7.5%に引き下げることを決定した。ただ、2500億ドル相当に課している25%の関税率は維持した。

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、中国の劉鶴副首相が来年1月初めにワシントンで合意文書に署名する見通しと述べた。また、同代表が米国の対中輸出は今後2年間に2倍近くに拡大すると述べると、リスク選好の動きが広がり、米主要株価指数が最高値を更新した。景気の先行きに対する楽観的な見方が強まると、プラチナの支援要因になるとみられる。パラジウムも史上最高値を更新している。ただ、米国の関税引き下げは小幅にとどまっており、世界経済の減速見通しに変わりがなければ高値での買いが見送られるとみられる。

合意内容を確認すると、米国産の農畜産物の購入拡大のほか、知的財産権の保護、技術移転の強要の是正、金融サービス開放、為替問題があり、査定・評価も入っている。中国が合意内容を実行するかどうか、米国が査定・評価するということである。一方、さらなる関税引き下げは第2段階の協議を待つことになるが、ライトハイザー代表は協議をいつ始めるかはまだ定まっていないとした。協議が開始されても合意に達するのは来年の米大統領選後になる可能性があり、世界経済の先行き不透明感が残るとみられる。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は来年のプラチナは供給過剰になるとの見通しを示しており、世界経済の先行き不透明感が残ると、南アの供給不安が強まるなどの材料がないかぎり、1000ドルを抵抗線として、もみ合いが続くことになろう。

●南アの計画停電と米FOMCの低金利継続見通し

南アの国営電力会社エスコムは9日、発電施設の不具合や大雨が主因で最大6000メガワット分の計画停電を行うと発表、鉱山会社が夜間の操業を停止したことがプラチナの支援要因になった。2008年の南アの電力危機時は鉱山会社の操業停止で供給不安が広がり、1500ドルから2300ドル直前まで高騰した。同社は11日、計画停電の規模を2000メガワットに縮小し、週明けには電力が回復したが、同社の経営難で電力不足は長期化しており、今後の計画停電の行方も確認したい。

10~11日の米FOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50~1.75%に据え置くことを全会一致で決定した。米連邦準備理事会(FRB)当局者の金利・経済見通しでは、17人中13人が少なくとも2021年まで金利変更はないとの見通しを表明した。

CMEのフェドウォッチによると、16日時点でFF金利の誘導目標水準の確率は、来年12月は1.50~1.75%に据え置きが46.7%(前月37.0%)となっている。ただ、1.25~1.50%が37.8%(同39.2%)、1.00~1.25%が12.8%(同18.1%)と利下げの可能性も残っている。欧州中央銀行(ECB)理事会でも政策金利据え置きが決定され、追加利下げの可能性に含みを残している。世界的な低金利が続くとプラチナの下支え要因になる。

●NY先物市場で大口投機家の買い越しが拡大

ニューヨーク先物市場で値固めの動きとなるなか、大口投機家の買い越しが拡大した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月10日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは4万9577枚となり、1ヵ月前の3万8459枚(11月12日)から拡大した。新規買い・買い戻しが入った。一方、プラチナETF(上場投信)残高は13日の南アで31.71トン(11月末31.66トン)に増加、米国で23.29トン(同23.30トン)、12日の英国で17.55トン(同17.83トン)に減少した。プラチナETF残高は銘柄ごとにまちまちの動きとなった。英国では急伸時に投資資金が流出した。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.