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2019年12月28日 19時30分
特集

動き出す世界、量子コンピューター関連「異次元の株高」復活へ <株探トップ特集>

―日米連携で量子イノベーション推進、米ITの巨人たちに続く日本企業をロックオン―

パソコンやスマートフォンなどの情報端末にとどまらず、我々の日常空間に存在するあらゆる電子機器とネット空間を接合させる「IoT」が進展している。また、膨大なデジタル情報の海「ビッグデータ」のフル活用や、ディープラーニングを飛躍の糧に人間の知力では到底及ばないレベルで「人工知能(AI)」がその演算能力を開花させている。近未来のIT全盛時代を先導するキーテクノロジーの数々が株式市場でも投資テーマとして脚光を浴びている。そして今、その礎となる次世代コンピューティングの登場も待ち望まれている状況にある。

●次世代コンピューティングは異次元の領域

次世代コンピューティングの有力候補として、現在世界でも注目を浴びているのが「量子コンピューター」だ。これまでコンピューターの動作原理である「01」はいわゆるデジタル化の不動のコンセプトといってもよかった。目まぐるしい技術の進歩も基本的にはこの「01」の積み上げによってもたらされたものである。しかし、量子コンピューターはこの領域から離れ、量子力学的な性質である“重ね合わせ”や“もつれ”など極微の世界で起こり得る物理現象によって並列コンピューティングを実現させる。情報処理に際し、基準となる単位も従来型コンピューターの「ビット」という概念の枠から外れ、「0であり、かつ1でもある」状態を示す「量子ビット」に変わる。結果として、最新のスーパーコンピューターですら数千年から1万年という気の遠くなるような時間を要する計算を、文字通りあっという間に完結してしまうという夢のような現実を我々に提供する。まさに、異次元の領域に人類は足を踏み込んでいる。

もちろんこれは絵空事ではない。最近では、米グーグルがスーパーコンピューターでおよそ1万年かかる計算問題を量子コンピューターによって3分あまりで解答を導く実証実験に成功、「量子超越」を実現したことが世界に大きなインパクトを与えた。米国ではグーグルのほかにも、アマゾン、フェイスブック、アップルなど「GAFA」と呼ばれる時価総額上位の主力IT企業が、同分野に積極的に経営資源を投じて量子コンピューターの開発を進めている。今後は、これらのITの巨人たちによる主導権争いが一段と先鋭化していくことが予想される。

●風雲急を告げる量子コンピューター周辺

量子コンピューターは、従来のコンピューターの論理ゲートに量子ゲートを代替させて演算処理する、いわばコンピューター論理回路の拡張型である「量子ゲート方式」と、組み合わせ最適化問題に特化した量子アルゴリズムの一つである「量子アニーリング方式」に大別されている。量子ゲート方式はグーグルや米IBMが傾注し他社にリードする研究開発分野だ。一方、量子アニーリング方式については、今から20年ほど前に東京工業大学の西森秀稔教授らが提唱した国産技術で、国内では富士通 <6702> が先駆、2011年にはカナダのDウエーブ社が世界で初めて商用化に成功したことでスポットライトを浴びた。

そして、12月に入ってから日本の量子コンピューター分野を取り巻く環境に風雲急を告げる気配が漂ってきた。安倍政権の下で「量子技術イノベーション戦略」が推進されるなか、今月19日に日米両政府が量子コンピューターなど次世代の量子技術の研究について連携を強化する共同声明に署名した。これは中国の存在を強く意識したものである。というのも中国では国家戦略として資金を積極的に投下し量子分野で多数の特許を獲得しており、これにAI先進国の米国が危機感を抱いていることが背景にある。量子コンピューターの実用化では、ネガティブな思惑として暗号破りのリスクも指摘されている。したがって国家機密の漏洩を防ぐうえで解読不能な「量子暗号」の開発も喫緊の課題となっているのだ。米国は日本が有する技術と連携することで、中国に対抗する構えにあり、両政府は近く2国間の覚書も結ぶ方向にあると伝わっている。

●IBMと東大が協力、英国量子ベンチャーも上陸

また、同じく19日に米IBMと東京大学が量子コンピューターの研究開発で協力することを発表、IBMは現在開発中の機種を日本に設置して、ハードとソフト両面から実用的機能を高めていく方針という。IBMは16年からクラウド経由で量子コンピューターを開放しており、既に日本では慶応大学にその拠点があった。今回の東大との技術連携では量子コンピューターの実機を持ち込む。実機を持ち込むのは、日本がアジアで初となるだけに話題性も高い。更に、英ケンブリッジ大学発の量子コンピューターソフトベンチャーであるCQC(ケンブリッジ・クオンタム・コンピューティング)が日本に本格参入すると発表したことも、業界の耳目を集めた。CQCは量子理論を応用したサイバー対策装置や量子コンピューター導入をサポートするソフトなどを企業に提案するほか、量子科学に精通した人材確保・育成も手掛ける方針にある。

日本国内では量子分野に経営資源を投下する民間企業の動きも活発化している。早くから研究開発に傾注する富士通は、既に17年に量子コンピューターの原理を現行のコンピューターに応用する技術としてデジタルアニーラを開発、世界中から何百件という規模で共同プロジェクトに向けた打診があるという。カナダの州立大学であるトロント大とは協業体制で、同大学内に研究所を設立するなど緊密な関係を築いている。なお、富士通は昨年リクルートホールディングス <6098> の子会社ともマーケティング手法の研究を共同で進めた。量子コンピューターを活用して、リクルート子会社の旅行予約サイトで宿泊施設の立地や種類といった多様な条件を考慮したうえでお薦めの宿をリストアップする、というレコメンド機能においてその効果を検証している。

●富士通だけではなくNECも本気モード

富士通と並ぶ主力ハイテク企業であるNEC <6701> も負けてはいない。新たに量子コンピューター事業の推進室を来年1月に設置し、スタートアップ企業や、カナダのDウエーブ社との連携を念頭にソフト開発に取り組み、23年の量子コンピューター実用化に向けた布石を打つ構えだ。また、光通信技術を応用した新たな方式による量子コンピューター開発に乗り出しているのが、通信キャリアの大御所NTT <9432> だ。同社はNASAや米スタンフォード大学などと共同で、商用化に向け本腰を入れる計画を明示している。具体的には「量子ニューラルネットワーク」というタイプのコンピューター技術をベースに10年後の実用化を目指す方針という。

今後は官民学の連携で量子コンピューター分野の研究開発が加速していくことが予想される。企業間における資本・業務提携の動きなども、折に触れ株式市場で思惑を呼ぶことになりそうだ。

●リアル量子Com関連のFスターズ、テラスカイ

リアル量子コンピューター関連として注目度が高いのは、まずフィックスターズ <3687> 。顧客企業のシステムを高速化するビジネスを展開し、リピートオーダー率ほぼ100%という一頭地を抜く実績を有するが、量子アニーリング分野でカナダのDウエーブ社と早くから提携関係にあることが注目されている。また、量子コンピューター関連ビジネスを手掛ける子会社を設立してIBMと連携する形で同分野を深耕するテラスカイ <3915> も材料性に富んでおり、再び見直されるタイミングが近そうだ。

電子計測器やカスタム応用機器の開発を手掛けるエヌエフ回路設計ブロック <6864> [JQ]は、世界最高レベルの信号増幅装置メーカーとして同技術が量子分野の研究開発に使われるとの見方から関連有力株としてのポジションを不動のものとしている。また、エレクトロニクス商社で半導体実装装置などの販売実績から半導体関連の一角として浮上気配にあるYKT <2693> [JQ]も子会社が量子研究で使われる可能性があるレーザー微細加工システムやローノイズアンプなどの商品を取り扱っていることで、少なからず人気化素地を持っている。このほかブレインパッド <3655> や日本ラッド <4736> [JQ]なども同関連株の一角として物色人気化した過去がある。

●ユビAIは耐量子コンピューターで国策に乗る

更に自社開発製品を軸に小型機器向けネットワーク対応の組み込みソフトに強いユビキタス AIコーポレーション <3858> [JQ]は目が離せない銘柄となろう。前述したように米国が量子分野の研究開発で日本と協業体制で中国に対抗しようとしている背景には、量子コンピューターによる暗号破りへの警戒感がある。安全保障という国策的な切り口で光が当たった場合、耐量子コンピューター暗号技術を手掛けるユビAIの存在が改めてクローズアップされてくる可能性は高い。

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