これから熱くなりそうな「上場インフラファンド」、その3つの理由
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第34回
周知の通り、東証REIT指数は、活況な不動産市況と高い配当利回りによって投資家から好まれ、TOPIXと比較して非常に好調な株価パフォーマンスを実現してきました。インフラも、広い意味では不動産に違いなく、利回りもREITと同水準に高いため、第2のREIT指数として高い投資リターンを期待できます。
また、配当は下方硬直性(経済が悪化しても、業績や株価に比べて下がりにくい)を有するため、それ自体がディフェンシブ性を持つことで知られています。つまり、事業そのもののディフェンシブ性に加えて、高配当というディフェンシブ性も有し、混乱した市場においては鉄壁のような底堅さを見せる可能性が高いと言えそうです。
今年4月27日から始まる「東証インフラファンド指数」
そして、3点目が最も重要なのですが、実はこのインフラファンドは、2020年の4月27日から「東証インフラファンド指数」としてインデックス化されることが決まりました。算出方法は、TOPIXなどと同じ浮動株調整済みの時価総額加重平均です。
このこと自体、指数をベンチマークとする投資家が出れば需給上で有利になるのですが、ここで重要なのは、指数化されてETF(上場投資信託)化されることによって「巨大な公的資金」がインフラファンド全体を買い上げる可能性が出てきていることです。つまり、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀の買い入れです。
実際に、近年に組成された主要な株価指数としては、JPX日経400指数などが挙げられますが、組成後に日銀のETF買いに組み込まれました。上場REITのようにETF化せずに直接買い上げる方法もありますが、いずれにしてもわざわざ指数として組成するからには何らかの明確な需要が存在するわけです。
特に、昨今はクリーン・エネルギーの普及が世界的に主要なテーマとなっていることから、市場への資金供給という意味合いだけではなく、定性的に考えてもそれらを日銀が買うことの意義は大きいように思います。
それと同様の理由で、GPIFも東証インフラファンド指数に投資する可能性は高いといえます。実際に、すでにGPIFはESG(環境・社会・企業統治)投資の一環として、すでに世界銀行グループや欧州復興開発銀行(EBRD)のグリーンボンドへ投資をしているためです。その実績があるだけに、彼らのインフラファンドへのアクセスのハードルは低いように思われます。
流動性の低さは注視要因も、それがプラスに働くことも
ただ、現在のインフラファンド6銘柄の流動性は合計しても1日で平均3.5億円程度(日によっては20億円くらい膨らむ日もありますが)であり、トヨタ自動車1社(平均330億円程度)の1%の売買しかないため、多額の資金を注入することは不可能です。
■インフラファンド6銘柄の売買代金推移
出所:データストリーム
しかし、逆に考えれば日銀やGPIF、その他公的年金などの巨大な資金のいずれかが、わずかにでも買いに動けば、それだけで大幅に株価を押し上げる可能性があるということになります。無論、これは予測にすぎませんが、クリーン・エネルギーというテーマ性や、過去の指数組成の目的から考えれば、十分に可能性がある話だと思われます。
また、彼らだけでなく、ESG投資は海外投資家も非常に注目している分野であり、世界的にESG関連の商品が組成されて売買されていることを考慮すれば、指数化、ETF化することで海外マネーを容易に惹きつけるポテンシャルも有している、といえるでしょう。
ここで、この東証インフラファンド指数を疑似的に作成(構成銘柄の時価総額加重平均値)してその推移を見ると、過去1年間はすでにTOPIXのパフォーマンスを大幅に上回っていることが分かります。
■東証インフラファンド疑似指数の推移とTOPIX(2019年2月=1)
出所:データストリーム
加えて、収益性の統計であるシャープレシオ(年率リターン÷年率標準偏差、投資リスク当たりのリターン比)で見ても、東証インフラファンド指数はTOPIXの2倍近い安定収益性を生み出していることになります。6銘柄という少なさで、このパフォーマンスは驚異的といえます。
■上場インフラファンド疑似指数とTOPIXのシャープレシオ
出所:データストリーム
今後のポテンシャルもさることながら、現時点ですでに非常に優秀な投資対象といっていいでしょう。参考までに、次ページに現在上場しているインフラファンドの一覧と、基本的な銘柄情報を掲載しておきます。最も安定性収益性が高い銘柄が判別できるように、個別銘柄も同様にシャープレシオを算出して並べています。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。