明日の株式相場戦略=クライマックスはまだ先か

市況
2020年2月27日 17時52分

東京株式市場はリスクオフの極みにあり、ダムの決壊を思わせるような下げに直面している。きょう(27日)は日経平均が一時600円近い下げをみせ、昨年10月初旬以来、約4カ月半ぶりにフシ目の2万2000円ラインを下抜けた。人間の欲望は時にユーフォリア(陶酔状態)をもたらし相場を想定外の高みに誘導するが、ひとたび流れが変わると豹変して人心を恐怖の深淵に落とし込む。そこまで誇張しても不自然ではない暴落といえば、2008年のリーマン・ショックだが、今の新型コロナウイルス の感染拡大も、それに匹敵し得るくらいのネガティブインパクトを相場に与えている。既に米10年債利回りは史上最低水準にあるが、安全資産への資金逃避という現象は最もコロナ禍から遠い米国債を買いまくるという現実で裏付けられている。

新型コロナウイルスが強力な「悪材料」として暴れ出した2月第2週(10~14日)から本日までの約2週間で日経平均は、ざっくり2000円幅の下落となっている。率にすれば8%強にとどまっているが、きょうの大陰線で200日移動平均線を下回ってきた。ここから短期リバウンドはあっても、当面は戻り売り圧力が回避できない時間軸に移行している。これまで、最後の砦として踏ん張っていた米国株だが、トランプ米大統領が日本時間今朝がたの記者会見で米国において市中感染が始まっていることを示唆、これは常識的には想定されていたこととはいえ、大統領の発言で売りの口実としては十分な威力がある。東証1部の売買代金は3兆円超えが3営業日続いているが、全体指数が急落するなかもセリングクライマックス的な要素には遠く、むしろ危険な構図となっている。

今は現象面からみればリスクアセットの叩き売り状態になっているにも関わらず、東京株式市場では海外投資家の投げ売りに対し個人投資家が買い向かっている状況にあり、特に新興市場でその傾向が強い。市場関係者によると「追い証が発生している状況にありながら、マザーズ市場とジャスダック市場の手口では個人は買い越している」(国内ネット証券)という。つまり、信用ではなく現物で大口個人がバフェットよろしく安値拾いに敢然と動いている状況を映し出しているが、まだ勝負の機は熟していないようにも見える。現物で買い溜めて中長期保有ということであれば、今はまだ逆張りに本腰を入れるタイミングではない。

中国では武漢を封鎖して約1カ月で新型コロナウイルスの感染は終息の方向に向かっている。政府や人民銀が打ち出した景気対策が支えとなって、皮肉にもきょうの中国・上海株市場は堅調な値動きを示した。以前にも触れたが、2月春節明け以降の上海総合指数の日足チャートは陽線だらけ。株価防衛的な動きが上海株の戻りを後押ししていることは明白だ。日本も新型肺炎の対応として、経済活性化策よりもマスクの供給なり、検査機器の導入なり、リアルな日常の不安を解消するための方策が先というのは分かるが、日銀も含め政策総動員で株式市場にポジティブな施策が待たれるところ。

個別株は、大きく下落した半導体関連株などのリバウンドを狙いたいが、現時点ではその間合いが難しい。もしくは低位で下値リスクがあまり意識されないものに照準を合わせるといった手段も有効か。例えば、上ヒゲをつけやすい銘柄だがフォーバル・リアルストレート<9423>の100円近辺は狙い目といえるかもしれない。同社は通信・OA機器を販売し、オフィス移転支援や内装工事を手掛けているが、ウイルスの感染原因の約80%を占めるとされる接触感染において、業界初の新技術でウイルスを無力化、接触感染を防止し安全で働きやすいオフィス環境の構築をアピールポイントとしている。なお、フォーバル<8275>6割強の株式を保有していることで、親子上場関連のテーマに乗る銘柄としても株高要素を内包している。

日程面では、あすは1月の有効求人倍率・完全失業率、1月の鉱工業生産、1月の商業動態統計、1月の住宅着工、1月の自動車輸出実績、2月の都区部消費者物価指数(CPI)など。このほか2年国債の入札も予定される。海外では、米国で経済指標が相次ぐ。2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)、2月の米シカゴ購買部協会景気指数、1月の米個人所得・個人支出など。欧州では2月の独消費者物価指数(CPI・速報値)、2月の独失業率など。このほか、10~12月期のインドGDP、10~12月のトルコGDPなど。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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