金は急落も米緊急利下げで戻す、世界景気に影落とす新型肺炎 <コモディティ特集>

特集
2020年3月4日 13時30分

金の現物相場は2月下旬、 新型コロナウイルスの感染拡大や中国の景気減速を受けて一段高となり、2013年1月以来の高値1688.17ドルをつけたのち、株価急落をきっかけに換金売りが出て急落した。韓国、イタリア、イランでも感染者が増加し、更にブラジルや米国でも経路不明の感染者が確認され株価が急落。金はこれまで逃避買いが入っていたが、株価急落の損失補填のため、換金売りが出た。

主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁の電話会議の予定が伝えられると、協調行動に対する期待感から株価は急反発した。G7共同声明では「経済の下方リスクから守るため、全ての適切な政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する」と発表されたが、具体策がなく先行き不透明感が残っている。

オーストラリア準備銀行は3日の会合で0.25%の利下げを決定した。また、米連邦準備理事会(FRB)がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%引き下げ、1.00~1.25%とする緊急利下げを発表した。パウエル米FRB議長は、利下げで世界的な供給網の阻害を解消することはできないが、全般的な経済活動の支援になると述べた。世界的な金融緩和に加え、財政刺激となれば金の下支え要因になるとみられる。

●中国の経済指標は新型肺炎の影響で大幅に悪化

2月の中国の製造業購買担当者指数(PMI)は35.7と前月の50.0から急落し、過去最低となった。事前予想は45.0。新型コロナウイルスの対策による移動制限が背景にあり、非製造業PMIも29.6と前月の54.1から急落した。

2月下旬には移動制限が緩和され、企業活動が再開されたが、フル稼働に戻るには時間がかかるとみられている。一方、新型コロナウイルスについて、中国の広東省で肺炎から回復して退院後に検査で再び陽性になる患者が14%出た。大阪でも再発した患者が確認されており、ワクチンが開発されるまで世界経済の回復を遅らせる要因になりそうだ。

経済協力開発機構(OECD)は2日、新型コロナウイルスの感染拡大で世界の経済成長は金融危機以来の水準に落ち込むと予想した。第1四半期はマイナス成長になる可能性もあり、2020年の成長率は2.4%と昨年11月時点から0.5%引き下げた。

ただ、今回の予想は中国のウイルス感染が第1四半期にピークを迎え、他の地域での感染が抑制されたものになることを前提にしている。ウイルス感染が予想以上に長期化すれば日本やユーロ圏が景気後退(リセッション)入りする可能性があるという。日本では安倍首相が2月26日、今後2週間の大規模イベントの中止や延期を要請し、27日には3月2日から全国の小学校・中学校・高校・特別支援学校を臨時休校にするよう要請している。

●株価急落で金ETFに換金売り

金の内部要因では、ETF(上場投信)に投資資金が流入するなか、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しが再び過去最高を更新した。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は2月25日に940.09トンと1月末の903.21トンから増加した。ただ、株価が急落したことからその後は減少し、3月2日は931.01トンとなった。換金売りに対する警戒感が後退したのち、投資資金が戻るかどうかが今後の焦点である。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月18日時点で35万3649枚と1月28日時点の33万0092枚を上回り、過去最高を更新した。2月25日時点は33万5865枚の買い越し。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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