プラチナは2002年以来の安値に、新型肺炎の感染拡大で車触媒需要の減少を懸念 <コモディティ特集>

特集
2020年3月18日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は、 新型コロナウイルスの感染拡大による株安を受けて軟調に推移すると、欧州での感染者急増により急落し、2002年11月以来の安値569.80ドルを付けた。2008年のリーマンショック時の安値732.50ドルを割り込んで下げが加速した。

感染者が急増したイタリアでは欧州の自動車・部品メーカーが生産を停止・縮小。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は欧州工場の大半を27日まで閉鎖すると表明した。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、工場閉鎖が長引くようなら、自動車触媒需要の減少に対する懸念が強まり、プラチナ相場は軟調に推移するとみられる。

米国では検査体制が整ったことで、今後、感染者が急増する可能性があるという。ただ、感染源となった中国の湖北省では小規模ながら生産が再開された。上海プラチナの出来高は急落した13日から急増し、実需筋の安値拾いの買いが入っていることは下支え要因である。また、南アフリカの鉱山会社アングロ・アメリカン・プラチナム(アンプラッツ)が精製工場の閉鎖により、不可抗力条項を宣言し、プラチナの生産減少が見込まれている。米連邦準備理事会(FRB)が緊急利下げを発表し、各国中銀が協調して金融緩和を実施しており、新型コロナウイルスに終息の兆しが見られれば急反発する可能性が出てくる。

●供給過剰見通しも、南アの生産が減少

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は4日、「プラチナ・クォータリー」を発表し、2020年のプラチナは4トンの供給過剰となると予想した。以前はかなりの供給過剰になるとみられていたが、中国の大型車1台当たりと欧州のディーゼルハイブリット車1台当たりの自動車触媒需要が増加することや、ガラス部門の需要増加を受けて見通しが改善した。

一方、宝飾需要は新型コロナウイルスの影響で中国で需要が減少する可能性があるという。中国汽車工業協会(CAAM)によると、2月の自動車販売台数は前年同月比79.1%減の31万台に落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、月次ベースでは過去最大の減少幅となり、20カ月連続で減少した。ただ、中国の移動制限は緩和され経済活動も戻りつつあり、今後は持ち直すとみられる。

南アのプラチナ鉱山会社アングロ・アメリカン・プラチナム(アンプラッツ)は6日、精製工場の閉鎖により不可抗力条項を宣言した。精製工場が2月10日に爆発事故を起こし、他の工場を稼働させたものの、高温で危険な状況となり閉鎖を決定した。修復には約80日かかり、28トンのプラチナ系貴金属(PGM)の生産が失われるという。南アのPGM生産でプラチナは約6割を占めており、17トンの生産減少となれば供給不足に転じる可能性がある。ただ、欧州委員会は新型コロナウイルスの影響で今年の欧州の経済成長率がマイナス1%になる可能性があるとしており、どれくらい需要が減少するかが焦点である。

一方、南アでも5日に新型コロナウイルスの感染者が確認された。各国での感染拡大を受けて15日に非常事態を宣言し、イタリア、イラン、韓国、スペイン、ドイツ、アメリカ、イギリス、中国からの入国を禁止する措置を18日から取る。南アでの感染状況も確認したい。

●プラチナETF残高は減少

新型コロナウイルスの感染拡大により先行き懸念が強まるなか、プラチナETF(上場投信)から投資資金が流出した。プラチナETF残高は16日の南アで30.62トン(1カ月前31.42トン)、12日の米国で22.67トン(同23.27トン)、英国で17.46トン(同18.40トン)に減少した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月10日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは3万3247枚となり、1カ月前の6万1840枚(2月11日)から縮小した。リスク回避の動きを受けて手仕舞い売り・新規売りが出た。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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