松本英毅氏に聞く原油市場の行方、商品市場は株式に先んじて回復か? <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2020年4月13日 20時00分

前回のコラム(「市場を揺るがすコロナショック、いま注目すべき勝機とは?」)で予告した通り、今回はOPECプラス会合、G20エネルギー相会合を受けて、今後の原油価格がどのような展開を辿るのかをうかがった松本英毅氏へのインタビュー内容を紹介したい。松本氏は「よそうかい.com」の代表取締役としてニューヨークを拠点に精力的に活動し、金融・商品情報の提供を行っている。また、インタビューを踏まえて、筆者なりの投資戦略について考えを述べたい。

――OPECプラスが日量970万バレルという“歴史的減産”で合意し、WTI原油先物は24ドル前後で推移していますが、需給は改善するのでしょうか?

◆松本:まずは今回の減産内容の詳細ですが、970万バレル減産は数字だけ見ると歴史的な水準であることは間違いありませんが、2018年10月の生産量からの減産です。2018年12月のOPECプラス会合で日量350万バレル程度減産しており、先月(3月)でその減産が終わったところだったことを考えると、今回の減産は実質620万バレル程度となります。

それとは別にサウジ・UAE・クウェートが自主的に更に200万バレル削減するとは言っているものの、これは以前から行っていたことであり、特段のサプライズではありません。

また、OPECプラス以外の国々で370万バレル減らすことも伝えられていますが、カナダや米国、ブラジルが本当に減産するかは、各国政府からの正式発表が現時点ではまだなく不透明です。特に米国・カナダの石油企業は民間企業でもあり、他の産油国のように政府が減産指示を出すことはできず、自主的にどこまで減産できるのかも不明です。

だが、その一方で、アメリカのシェールオイル、カナダのオイルサンド、ブラジルの深海油田の採掘コストはいずれも高コストなため、現時点の原油価格では自然に生産を減らさざるを得ない状況でもあるのです。

不明な点は多いものの、実際に伝えられている通りの減産が行われるとすると1540万バレルの減産。それに対し、現在の世界需要は日量2000~3000万バレル減少しているとの見方もあることから、需給の改善となると難しいところでしょう。

――最近の原油価格は特にボラティリティが高いように思いますが、その背景は?

◆松本:50ドル台の頃と変わらない値幅で動いているため、率で考えると大きくなりやすいですね。

――需給面で考えると、WTI原油価格は更に下値を探ることも?

◆松本:1540万バレルの減産は現在の需要減少と比較すると物足りないとは言え、サプライズだったとの見方もあります。需給バランスから考えると40ドルを目指すほどの減産ではなかったものの、産油国の減産の意思が見えたこともあり、そろそろ底値圏にあると見ても良いのではないでしょうか。ただし、今後 コロナウイルスの影響が反映されてくるであろう経済指標や株価の動向によっては、20ドルを切ることもあるかもしれなませんが…。

――原油価格の長期的な展望は?

■現在はコロナウイルスにより世界経済が事実上ストップしてしまったことで在庫の大幅な積み増しが続いています。しかし、経済活動が再開される時には止まっていた需要が一気に出てくることになります。そうなったとしても輸送ルートや輸送量を一気に増やせるわけではありませんので、需給バランスで動く商品価格は跳ね上がることもあるでしょう。長期的な目線で考えれば60ドルを超えることも考えられます。

以上が、松本氏に対するインタビューの内容である。

ここからは筆者の考えを交えて投資戦略を探っていきたい。インタビューで紹介したように、原油価格はまだ下げる可能性はあるが、将来的には現状の2倍ないし3倍の値をつける可能性がある。コロナウイルスの状況次第では現状の価格水準が長期化する可能性はあるものの、上値余地は大きい。ただし、ボラが高いことを考えると、レバレッジはかけたくない。

そうであるならば、レバレッジなく現物として保有できるETFが最適なのではないだろうか。原油ETFは投資信託報酬も低いものが多く、期日もないため、長期での保有に向いている。少しずつ安いところを拾っていっても良いのではないだろうか。

・WTI原油価格連動型上場投信 <1671> [東証E](基準価格1000円台 投資信託報酬 年率0.935%)

・NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 <1699> [東証E](基準価格100円台 投資信託報酬 年率 0.55%)

投資対象としては上記などがあげられる。基準価格の違いから連動性を求めるか、長期ということで投資信託報酬で選ぶなど、ご自身の投資スタンスに合わせて選んでみてはいかがだろうか。

コロナウイルスが終息すれば個別銘柄も本格的に戻りを試すことになるだろうが、企業が資源を輸入し、製品を作り、それを販売して利益につなげるというサイクルが回り出すよりも前に、商品(コモディティ)市場は大きく値を戻すことになると考えている。

最後に、今回インタビューさせていただいた松本英毅氏と共著で刊行した書籍をご紹介させていただく。ぜひご高覧ください。

『米国商品情報を活用して待ち伏せする “先取り"株式投資術』(パンローリング株式会社)

・松本英毅 (著), 東条麻衣子 (著)

・4月13日発売。Amazon新着ランキング1位。

・第1章では松本英毅氏が米国商品市場のファンダメンタル分析方法を詳しく解説。第2章では筆者が米国商品市場をもとにどのように相場戦略を組立てているかについて解説する。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

株式注意情報.jp http://kabu-caution.jp/

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