明日の株式相場戦略=AI関連株に繚乱の気配

市況
2020年4月16日 17時45分

世界経済の実勢悪をいよいよ目の当たりにする段階に入った。前日発表された米経済指標は、悪化を通り越して瓦解に近いものだった。4月のNY連銀製造業景況感指数はマイナス78.2と事前予測のマイナス32.5を嘲笑うかのような数値。3月の小売売上高も過去最大の落ち込みとなる8.7%減、同月の鉱工業生産指数も74年ぶりの急落となった。新型コロナウイルス 恐るべしだが、これは新型コロナウイルスが直接もたらした影響ではなく、同ウイルスから人命を守るために人為的に経済を犠牲にしたということ。であるからこそ、フルスロットルの財政政策と金融緩和策が保証されている。この戦いの行方を前倒しで投影するのは、ほかならぬ株式市場だ。

この驚愕の米経済指標をきょう(16日)の東京株式市場がどう織り込むのかが注目された。当然ながら日経平均は続落、一時400円近く下げる場面があったが、そこに映し出されたのは意外な風景だった。主力大型株を除けば物色意欲は旺盛で、むしろ強い地合いだったといってよい。表向きはコロナショックによる経済の落ち込みが投資家マインドを凍えさせているという解釈が成り立つが、内側に入ればその体感温度は一般的な解釈とはまるで違うことが分かる。なぜなら、きょうの東証1部の値上がり銘柄数は1600近くに及び、値下がり銘柄数の約3倍に達していたからだ。また、マザーズ指数の強さは特筆に値する。チャート好形の中小型株を貪欲なまでに攻める資金が存在している。

一言でいえば現在の東京株式市場は並行して走る2つの相場がある。ひとつは新型コロナウイルスの影響を受けた実勢経済の落ち込みをネガティブ視した下値模索の動き。そしてもうひとつはアフターコロナで頭角を現す産業やサービス形態を局地的に先取りする動きだ。これは感染を回避するマスクや除菌剤が買われるという単純なものとは違い、どういう企業が今の環境の延長線上で恒常的に利益を伸ばしていくのかを篩(ふるい)に掛けているようなところがある。悲観一色に染まるのではなく、したたかな個人投資家はこの二層化した相場のプラスの側面にうまく乗っている。全体の相場環境は不安定であり、全力でこの流れに乗ろうとする必要は全くないが、逃げ方を知っている短期筋にとってはそれほどリスクの大きい相場ではないのかもしれない。

投資資金が流れ込む入り江としては、コロナ禍を境に普及加速の可能性が出てきたテレワークであったり、巣ごもり消費で商機を捉える企業であったり、あるいはリアル世界に訪れた経験値ゼロの困難をソリューションするバイオテクノロジー人工知能(AI)といったテーマが有力視されている。

そのなか、AI関連銘柄への資金の流れが徐々に先鋭化してきた。もちろん先駆した株はその反動も出ているが、新陳代謝は盛んで続々と物色人気化する銘柄が登場している。AI周辺では、きょうはFRONTEO<2158>、ディー・ディー・エス<3782>の低位株2銘柄が鮮烈な上昇波を描いたが、いずれも中期トレンドの分水嶺である75日移動平均線をランディングポイントとして意識した動きで、なかなかお目にかかれない高パフォーマンスをみせた。まだ同移動平均線とのカイ離が埋まっていない相対的出遅れ感のある銘柄としてはRPAとAI技術を融合させたソリューションで強みを持つニーズウェル<3992>などが注目される。ネット広告の仲介やWebサイトのデザイン制作を展開するメンバーズ<2130>も75日線にはまだ大分余裕があり、デジタル人材派遣の実力と、テレワーク関連の切り口で人気が継続する可能性が高そうだ。

このほか、ここにきて次第高の展開で75日線との差を詰めてきた日本サードパーティー<2488>。同社はAI、医療、教育すべてに絡み、足もとの業績の良さだけではなく中期的な見地で成長の伸びしろが評価されやすい。

日程面では、あすは2月の鉱工業生産指数(確報値)。2月の第3次産業活動指数。海外では中国で重要指標が相次ぎ、1~3月の中国GDPのほか、1~3月の中国固定資産投資、1~3月の中国不動産開発投資、3月の中国工業生産、3月の中国小売売上高などが注目される。また、3月の米CB景気先行総合指数が発表されるほか、IMFと世界銀行の春季会合が19日までの日程で行われる。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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