明日の株式相場戦略=半導体フィーバー、相次ぐ出世株

市況
2020年7月1日 17時30分

名実ともに7月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均が朝方はやや買い優勢で始まったものの寄り付き直後に上値の重さが露呈し、前場中盤以降は漸次下値を探る展開を強いられた。前日の米国株市場ではNYダウなど主要株指数が揃って上昇した。パウエルFRB議長の下院金融サービス委員会での議会証言に耳目が集まったが、米経済の底入れを示唆する発言が効力を発揮したもようで、取引終盤に株価水準をスルスルと切り上げた。本来であれば東京市場でも“強気スイッチ”が入る場面だ。為替も朝方は1ドル=108円台のドル高・円安で推移、取引開始直前の6月日銀短観の内容の悪さもマーケットはほぼ織り込み済みという印象だったから、「外部環境を総合するときょうの日経平均は200円高くらいでもみ合うイメージだった」(準大手証券ストラテジスト)という。しかし、今の相場は東京市場と併走する米株価指数先物の動きに左右されやすい。米国での新型コロナウイルス感染拡大に対する警戒感を引きずりながら、冴えない米株先物を横目に買い気が削がれる格好となった。

後場に入ると全体薄商いのなかで先物に売り仕掛けが入った。前引け時点のTOPIXは0.45%安。「ここ最近は(TOPIXが)0.5%安なら、後場に日銀のETF買い発動というコンセンサスがあった。きょうは微妙なところだったが、どうやら入らなかったとの観測が強まり、先物売りを誘発した感がある」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘。値下がり銘柄数も全体の85%を超え、業種別指数でみても33業種すべてがマイナス圏に沈んでいる。ここまでの話の流れからすると、きょうは見るべきところなしの相場に思えるが、さにあらず、輝きを放つセクターがあった。

半導体関連株だ。前日の米国株市場ではFPGA開発の先駆であるザイリンクスが7%高に買われる人気となったのをはじめ、半導体セクターが軒並み高に買われ、フィラデルフィア半導体株指数も大きく上昇した。東京市場もこの流れを引き継ぎ東京エレクトロン<8035>が一時1300円高超に買われ上場来高値を更新したほか、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>などお馴染みの半導体製造装置メーカーが買いを集めた。半導体設備投資需要は5Gインフラ構築やデータセンター増設需要で構造的な追い風が吹いているとの認識はこれまでと変わらない。これに加わる社会的変化として、コロナ危機を契機に導入が加速しているテレワークがある。これが5Gやデータセンターとともに企業のデジタルシフトの象徴となっており、その縁の下を支える半導体需要も一段と押し上げられるというシナリオが意識されている。マスクブランクス検査装置のオンリーワン企業であるレーザーテック<6920>の時価総額はほぼ1兆円。EUV露光装置が新たな市場として立ち上がったことで中期成長期待が更に高まったことが株価大躍進の背景だ。ちなみに露光装置大手で世界に名だたるブランド力を持つニコン<7731>の時価総額は3300億円。既にレーザーテックはニコン3社分の時価総額で評価されていることになる。

当欄でも随時株価を追ってきた半導体関連としては野村マイクロ・サイエンス<6254>、マルマエ<6264>があるが、きょうはいずれも年初来高値を更新した。野村マイクロについては2007年11月以来12年8カ月ぶりの高値圏で、実質的には戻り売り圧力のない青空圏を駆ける展開となっている。出遅れ組では半導体商社でFPGAを取り扱うPALTEK<7587>や、同じく半導体商社で人気に火がつくと快足を発揮する栄電子<7567>などが挙げられる。ただし、今の地合いは上ヒゲをつけやすい地合いであることをよく踏まえたうえで、仮に動意づいた際には深追いはしないというスタンスも大切だ。

このほか、株価3ケタ台にまだまだ魅力的な銘柄は多い。プリント基板真空プレス機のメーカーで5G関連でもある北川精機<6327>はまだ400円台。デジタルシフトで重要性が増しているセキュリティー関連では、認証サービス分野で需要獲得が見込まれるショーケース<3909>に着目。更にAI顔認証ソリューションで存在感が高まるネクストウェア<4814>は上ヒゲを形成しやすい低位株の典型だが、トレンドにうねりが出ており、需給相場に発展する可能性も少なからず内包している。

日程面では、あすは6月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から開示される。また、10年物国債の入札も予定されている。海外では5月の豪貿易収支、5月のユーロ圏失業率などが発表されるほか、米国では6月の雇用統計、5月の貿易収支、5月の製造業受注と重要指標の開示が相次ぐ。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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