【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─8月の軟調場面は押し目買いの好機か、コロナ影響の銘柄選別は継続
「8月の軟調場面は押し目買いの好機か、コロナ影響の銘柄選別は継続」
◆パフォーマンス低調な8月だが、アノマリーは9月以降の回復を示唆
8月前半までの東京株式市場は、国内企業の決算発表や米中対立、 新型コロナウイルスの影響の動向を見極めたいとの向きが多く、上値の重い展開が想定される。8月14日前後までの日経平均株価の予想レンジは2万1000円~2万3000円。
8月のパフォーマンスはアノマリー(説明はつかないが法則性がある事象)からはさえない。大手調査機関によれば、TOPIXの騰落率において、アベノミクス以降の過去7年間の月別平均(2013年~19年)では、8月はマイナス2.1%と最もパフォーマンスが悪い。8月の投資部門別売買動向では外国人投資家は5546億円の売り越し。ちなみに、過去7年間で8月に外国人投資家が買い越した年はないという。明確な理由は不明ながら、休暇に入る前に買いポジションを落とすなどが考えられる。
また、8月は円高になりやすいともいわれる。元外資系のトレーダーによれば「日本のメーカーなどはお盆に工場を1~2週間停止して休業するため、ドル売り予約を行うことが多い」、「米国債券の償還は2月、5月、8月、11月の各15日に多いが、特に8月がより多く償還され、これがドル安を誘発しやすい」のだという。
一方、日経平均は6月8日高値2万3178円示現後の安値2万1530円(6月15日・終値ベース)を割り込むと、次の心理的な節目は2万1000円となる。ただ、世界的な金融緩和もあり、下値不安は限定的と見る。先の大手調査機関によれば、月別のパフォーマンスは9月にプラスに転じ、10月、11月と改善するという。8月の軟調な場面は押し目買いの好機になる可能性はある。
◆3つの“再”に市場の関心高まる、注目テーマは引き続き半導体と5G
市場では新型コロナ感染の再拡大の動向、一方で世界経済の再開の進捗、米中対立の再燃という3つの「再」に関心が高い。大統領選を3カ月後に控え、米国の対中姿勢は一段と強固になる可能性もある。6月以降から新型コロナワクチンの開発が加速しており、この動向にも注目。
スケジュールでは、米国で3日のISM製造業景況指数、5日のISM非製造業景況指数、7日の雇用統計、17日の民主党全国大会(~20日)など。為替がドル安傾向にあるだけに、マーケットへの影響を見極めたい。国内では14日(金)に決算発表のピークを迎える。コロナの影響で売り上げ減になっている企業とビジネスチャンスにできている企業で明暗が分かれているだけに、銘柄の選別が継続する公算が大きい。
好決算のエムスリー <2413>、日本電産 <6594>、シマノ <7309>などの強さが目立つ。小売りの勝ち組ではドラッグストアのコスモス薬品 <3349>、ウエルシアホールディングス <3141>、ホームセンターのDCMホールディングス <3050>、コメリ <8218>などに注目したい。巣ごもりで電子書籍のビーグリー <3981>、イーブックイニシアティブジャパン <3658>への物色も継続するか。
テーマとして注目は引き続き 半導体や次世代通信規格5G関連。新型コロナ感染が再度拡大基調にある中、テレワーク、オンライン学習などで通信量の増大が続いている。これに対応するためには高性能半導体が不可欠。第1四半期の損益が改善している半導体パッケージ大手の新光電気工業 <6967>、業績好調で半導体製造装置世界大手の東京エレクトロン <8035>。5G通信用計測器世界大手のアンリツ <6754>は第1四半期の営業利益が前年同期比9割増となっている。
(2020年7月31日 記/次回は8月30日配信予定)
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■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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