富士ソフト Research Memo(1):1970年設立で創立50周年を迎えた独立系大手ITソリューションベンダー

特集
2020年9月28日 15時11分

■要約

1. 会社概要と事業内容

富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、現在の同社取締役会長執行役員である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した株式会社富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を迎えた今、連結子会社28社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社2社で構成される連結従業員数1万5千人超(2020年6月末現在)のグループにまで発展している。

報告セグメントは、SI(システムインテグレーション)事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス事業やコンタクトセンター事業、再生医療事業等を行っている。

2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」

同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。

3. 財務体質の強化を果たしつつ、リーマン・ショック前のピーク売上高を3期連続で更新中

同社は、リーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、2019年12月期にかけて2ケタ増収を実現している。ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強が図られている点は高く評価できる。

具体的には、自己資本比率が2006年3月期末47.3%→2020年12月期上期末51.4%、流動比率が同96.4%→同161.5%など、代表的な財務指標の健全化を実現したうえで、2015年12月期以降の新卒中心の大量採用により、連結従業員数は同9,415人→同15,240人と1.6倍にまで拡大した。単体ベースの認定技術者比率(同社制度に基づく認定スペシャリストと認定プロジェクトマネージャーの合計数が全従業員数に占める比率)も2014年12月期末22.8%→2020年6月末28.3%と上昇しており、人材面から見た成長ポテンシャルは質・量ともに拡充されていることが読み取れる。

4. 足元業績は好調、2020年12月期上期決算は期初計画を上回って着地

2020年12月期第2四半期累計期間(以下、上期)の連結業績は、売上高が前年同期比7.9%増の122,568百万円、営業利益が同26.2%増の8,446百万円、経常利益が同27.1%増の8,677百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同3.5%増の3,868百万円と上期としては5期連続での増収増益となった。

この実績を、2020年2月公表の期初会社計画と比較すると、まず、上期計画(売上高116,500百万円、営業利益6,700百万円、経常利益6,850百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益3,850百万円)に対する達成率は、売上高が105.2%、営業利益が126.1%、経常利益が126.7%、親会社株主に帰属する四半期純利益が100.5%となった。上期としては5期連続での超過達成であり、とりわけ営業利益の2020年12月期上期達成率は直近5年において最も高い値を示している。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響は、上期のフロー業績ではさほど表面化していないものの、先行き不透明観は拭いきれない。一方、同社はこれまで積極的に取り組んできたリモートワークを含む働き方改革により現場での大きな混乱は生じておらず、ITインフラ系やEC分野等で顕在化するウィズコロナに対応した需要増を順調に取り込むことに成功している。

配当予想は、2019年12月期の年間42円/株(第2四半期末に20円/株、期末に22円/株)から9円/株増配の年間51円/株(第2四半期末に創立50周年記念配当5円/株を含む28円/株、期末に23円/株)としている。実現すれば5年連続の増配となるわけだが、今回の配当方針を細かく見ると、記念配当を除いても2019年12月期まで過去5年において前期末配当の2倍を次期の通期配当予想としていた慣例を超えた増配予想と言えるだろう。また同社は、通期業績の上振れを受けて過去4期連続で期末配当を期初予想から引き上げており、コロナ禍においてどのような対応が成されるかに注目したい。

■Key Points

・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。積極的な人材投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高1,000億円の壁を大きく突破、2020年6月末の連結従業員数は1万5千人超

・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強を実現しており、イノベーション企業グループを目指した「挑戦と創造」を継続している

・2020年12月期上期業績は5期連続で当初会社計画を超過達成。2020年12月通期業績はコロナ禍においても増収増益+増配を実現する見通し

・新型コロナウイルスの影響は予断を許さない状況にあるが、同社が積極的に取り組んできた働き方改革が奏功し現場での大きな混乱は生じておらず、ウィズコロナに対応した需要増の取り込みに成功している

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)

《ST》

提供:フィスコ

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