明日の株式相場に向けて=新年度相場は広角打法で臨む
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が253円安の2万9178円と5日ぶりに反落。振り返ってみれば、3月相場はAIアルゴが闊歩したこともあって日経平均は連勝もしくは連敗が目立った。今月19日から週をまたいだ24日にかけて日経平均株価は4営業日続落となったが、これ自体は特筆する話ではないものの、下げ幅が大きく投資家は肝を冷やす場面に遭遇した。この4営業日のうち3日間は波乱安といってもいい大幅な下げとなり、4日間合計で日経平均は1800円強も水準を切り下げた。
そして、25日からは上り坂に転じ、今度は前日まで4営業日続伸。市場関係者も安堵の胸をなでおろしたわけだが、ちょっと嫌な感触を残している。なぜなら、この間に日経平均がどれだけ水準を切り上げたかといえば1000円程度であり、リバウンドとしては物足りないからだ。きょうは前日の米国株市場が軟調だったこともあって、底値で掬(すく)った目先筋の売りを誘発して不思議のないタイミングではあったが、深押しとはいえないまでも250円あまりの下げをみせ、名実ともに新年度相場入りが目前となるなか少々気勢を削がれた感は否めない。
アフターコロナの景色を経済的観点から描き出すマーケット。景気敏感セクターやそれらを含めたバリュー株に火がつき底上げ本番を思わせるが、米国では政府や中央銀行の大盤振る舞いの反動がそろそろ顕在化するのではないかという恐怖心も綯い交ぜ(ないまぜ)となっている。31日にはバイデン政権が、先日成立させた1兆9000億ドル規模の巨額経済対策に続き、今度は3兆ドル規模の新たな対策を打ち出す方針が伝わっている。
経済の鏡に位置づけられる株式市場にとってはこの上ないポジティブストーリーに思えるが、「新型コロナ対応とはいえ、ちょっとやり過ぎでは?」という“本音”が前日のNYダウやナスダック指数など主要株価指数の動きに投影されている。それとセットでついてくる「増税の思惑」がもはや拭い切れないからだ。その意味で米長期金利の上昇は、市場の動揺を如実に映すウソ発見器の針のような役割を示す。グロース株からバリュー株へのシフトを促した米10年債利回りの上昇だったが、更に跳ね上がった場合は、バリュー株選好が一段と強まるというような単純なものではないことは明らかで、投資家はそれなりの防御姿勢を取る必要はある。
とはいっても、4月は新年度入りに伴うニューマネーが流入する月だ。ゴールデンウイーク手前までは強い地合いが続くという前提をメインシナリオとして個別銘柄戦略を考えたい。きょうの相場では、再生可能エネルギー関連とりわけ太陽光発電関連に投資マネーが群がった。バイデン政権が打ち出す3兆ドル規模といわれる第2弾の大型経済対策ではインフラ投資を主眼とし、太陽光発電など再生エネ分野への投資で雇用を創出する方針が伝えられている。これを手掛かりに前日の米国株市場では太陽光発電関連株が買われたが、その流れが東京市場にも押し寄せてきた。レノバ<9519>、ウエストホールディングス<1407>、霞ヶ関キャピタル<3498>、エヌ・ピー・シー<6255>、Abalance<3856>などが投資資金を誘引したが、米国の太陽光発電インフラ拡充で恩恵を受ける企業という切り口では、エヌ・ピー・シーが中期的にみて優位性を持っている。
もちろん、再生エネ関連に特化して銘柄を探す必要性もない。新年度相場突入に際し投資テーマは決め打ちせず幅広い視点を心掛ける。きょうはパワー半導体関連でMipox<5381>の上値追いが加速。前日は上ヒゲをつけたが、きょうは値を保ち大陽線を示現した。アフターコロナという視点にはそぐわないが、防護服のアゼアス<3161>も業績大幅増額を契機に非常に強い足をみせている。ここ新車販売の好調を背景に賑わいをみせている自動車周辺株ではダイカスト大手のアーレスティ<5852>の押し目や上値追いに勢いがある計測器大手の共和電業<6853>に着目してみたい。銅市況関連では黒谷<3168>、そして脱炭素の絡みでテーマ性が加わった鉄鋼株では電炉大手の東京製鐵<5423>をマークしたい。また、バーチャル系の銘柄も強い株は多い。DX関連の株価3ケタ銘柄ではシステムインテグレータ<3826>が26週移動平均線を上回った矢先、中期スタンスで妙味あり。
あすのスケジュールでは、3月の日銀短観、3月の新車販売台数など。海外では2月の豪貿易収支・小売売上高、3月の中国製造業PMI(財新)、3月の米ISM製造業景況感指数など。なお、フィリピン市場は休場となる。(銀)
最終更新日:2021年03月31日 17時00分