パウエル議長のハト派発言で安心感も戻り一服感/後場の投資戦略
日経平均 : 28916.68 (+32.55)
TOPIX : 1954.04 (-5.49)
[後場の投資戦略]
注目されていたパウエルFRB議長の議会証言ではハト派の姿勢が強調され、市場は一段と落ち着きを取り戻した。ただ、日経平均は前日の大幅反発に加え、朝方に一時29000円を回復したことで戻りにも一服感が出てきている。FOMC直後の乱高下があっただけに、ここまで戻したら、その先さらに上値を買ってくる向きが少ないのも当然だろう。個別でも、ハイテクやグロース株でしっかりのものが散見される一方、東京エレクトロンなど主力どころでは上値の重いものも多い。
しかし、一先ず、相場の落ち着きが確度を増してきたことは確かなようだ。パウエルFRB議長の議会証言に加えて、一昨日、「経済の強さが金融政策を修正するにはまだ不十分」との見解を示したニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、前日のブルームバーグテレビジョンでのインタビューにおいて、利上げについて、「それはまだずっと先の将来の話」、「今はテーパリングに焦点が絞られていると思う」と述べた。さらに、今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権をもつサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、「資産購入テーパリングをどのように行うのか、適切な規模やタイミングを議論し始める時が来た」としつつも、同時に「金利の変更について現時点で議論することは検討事項でさえない」とも述べたという。
量的緩和の縮小(テーパリング)の決定が濃厚とみられている8月ジャクソンホール会合の前までは、米雇用統計や7月FOMCなどイベントが控えているだけに、今後も経済指標や高官発言などに神経質な展開は続くだろうが、高官らの発言が積み重ねってくるにつれ、市場も徐々にFRBの真意を織り込んでいくだろう。
債券市場の動揺も大分落ち着いてきたようだ。FOMC直後に一時急伸した米長期金利はすぐに低下に転じていたが、今週に入ってからは年限の短い金利がそれ以上に低下してきていることで、前週末にかけて見られたイールドカーブの平坦化(フラットニング)が解消されつつある。イールドカーブの平坦化や長期金利の低下は将来の景気後退を映したものとの見方もあり、景気循環性の高い日本株を敬遠する動きにも繋がりかねないため、当該事象の解消はポジティブに捉えたい。また、フラットニングが解消されつつ、かつ長期金利も1.5%を下回って落ち着いていることはグロース株を中心に株式市場全体にも追い風となろう。
週明けの急落直後の2日間で日経平均が再び29000円まで戻したことは、もちろん売り方の買い戻しによるところが大きいのだが、結局、大きく下がったところでは買いたい向きがいまだに多くいるということでもあるのだろう。実際、日経平均が27000円台にあった5月第3週には投資主体別売買動向で信託銀行が大きく買い越しており、公的年金など長期資金の動きが確認されている。そういう観点からみれば、当面はレンジ相場の域を出ず、FRBによるテーパリングの正式決定までは神経質な動きが続くだろうが、下がったところでは買いのスタンスで良いのではないかと考えている。少し先の話にはなるが、4-6月期決算が一巡し、ジャクソンホール会合も終える8月下旬には相場は上を試しに行く環境が整ってきているのではないかと予想している。
《AK》