ミロク情報 Research Memo(7):顧客基盤の拡大によりストック型のサービス収入が順調に拡大

特集
2021年7月27日 16時07分

■ミロク情報サービス<9928>の業績動向

2. 品目別・販売先別売上動向

売上高の内訳を見ると、システム導入契約売上高は前期比13.5%減の19,330百万円、サービス収入が同10.1%増の12,173百万円、その他(主に子会社の売上)が同22.8%増の2,562百万円となった。

(1) システム導入契約の販売先別・品目別売上高

システム導入契約売上高を販売先別で見ると、企業向けは前期比17.2%減の9,800百万円となった。このうち、既存顧客向けが同23.3%減の6,469百万円と大きく落ち込んだのに対して、新規顧客向けは同2.2%減の3,330百万円とコロナ禍で新規開拓のための営業活動が制限されたなかでは健闘した格好となっており、収益基盤の拡大につながっている。これら新規顧客の獲得は、ストック収入となるソフト運用支援サービスまたはソフト使用料の積み上げ※につながるためだ。企業向け売上高のなかで新規顧客向けの占める比率は、前期の28.8%から34.0%と大きく上昇している。

※同社は2020年8月より従来のパッケージ販売に加えて、「Microsoft Azure」上で利用できるクラウドサービス(サブスクモデル)での提供も開始しており、同サービスの売上はソフト使用料として計上している。

一方、会計事務所向け売上高についても、前期比9.5%減の6,464百万円と減少した。前期はWindows7サポート終了を前にしたパソコン等の買い替え特需があったことが大きく影響している。とはいえ、2019年3月期の水準と比較するとまだ高く、コロナ禍のなかでは健闘したものと評価される。その他は同9.4%減の3,064百万円となったが、主に販売パートナー経由の売上がコロナ禍の影響で落ち込んだことによる。

また、システム導入契約売上高を品目別で見ると、ソフトウェアが前期比8.6%減の11,364百万円、ハードウェアが同26.1%減の3,596百万円、ユースウェア(導入支援サービス)が同13.7%減の4,368百万円といずれも減収となった。ハードウェアの減収率が大きくなっているのは、2020年3月期にWindows7のサポート終了を前にしてパソコン等のハードウェアも合わせて買い替えるケースが多かったためだ。

ソフトウェアのうち、企業向けERP製品では中堅企業を対象とした「Galileopt NX-Plus」、中小企業を対象とした「MJSLINK NX-Plus」ともに売上が減少した。また会計事務所向け「ACELINK NX-Pro」に続いて、企業向けでもサブスクモデルでの販売を開始しており、一部売上高がソフト使用料に流れている影響も減収要因のなかに若干程度含まれている。

(2) サービス収入

サービス収入の内訳を見ると、TVS(会計事務所向け総合保守サービス)が、前期比6.5%増の2,474百万円、ソフト使用料が同29.4%増の2,298百万円、ソフト運用支援サービス(企業向けソフト保守サービス)が同8.4%増の5,267百万円、ハード・NW保守サービスが同5.1%増の1,467百万円、サプライ用品が同4.7%減の664百万円となった。

TVSについては、顧客数が安定的に増加していることに加えて、2019年7月より料金改定を実施しており、その効果が2021年3月期第1四半期まで続いたことが主な増収要因となっている。四半期別で見ると第1四半期の増収率は前年同期比24.4%増となったが、第2四半期以降は同1~2%台の増収と安定して推移した。

ソフト使用料については、会計事務所の顧問先である小規模事業者向けの「かんたんクラウド会計」「かんたんクラウド給与」など各種クラウドサービスの顧客件数増加によって年率2ケタ成長を続けているが、2021年3月期はこれらサービスに加えて、テレワークに対応したリモートツールの需要も伸長した。また、2020年8月より企業向けERPのクラウドサービスでの提供を開始したことも増収に寄与している。これについては半期ベースの増収率が、上期が前年同期比26.3%増だったのに対して、下期は同32.3%増と成長が加速していることからも見て取れる。またソフト運用支援サービスについても、新規顧客の積み上げによって着実に成長した。唯一、サプライ用品についてはコロナ禍の影響でオフィスで使用するコピー用紙等の需要が落ち込み減収となった。

(3) その他

その他(主に子会社の事業)の売上高は前期比22.8%増の2,562百万円となったが、新規子会社が加わった効果によるもので、既存子会社はコロナ禍の影響で総じて減収になっている。2021年3月期の第1四半期から加わったトランストラクチャ、第4四半期から加わったトライベックの2社合計で、売上高は10億円強程度の上乗せ要因となり、既存子会社ベースでは2割前後の減収だったと弊社では見ている。

主要子会社の状況を見ると、ビズオーシャンについては、ビジネス情報サイト「bizocean」の広告収入が主な収益源となっているが、コロナ禍でクライアントの広告出稿意欲が低迷した。また、事業承継サービスを展開するMJS M&Aパートナーズについても、コロナ禍で対面でのアドバイザリー業務が十分に行えず、また、人材採用・紹介に特化した広告代理事業を行うアド・トップにおいても、採用意欲の冷え込みにより厳しい業績となったようだ。

財務状況は安定しており健全性を確保

3. 財務状況と経営指標

2021年3月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比4,610百万円増加の42,958百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が287百万円、売上債権が272百万円、たな卸資産が271百万円それぞれ増加した。また、固定資産ではのれんが1,022百万円、ソフトウェア資産(ソフトウェア仮勘定含む)が989百万円、投資その他の資産が1,261百万円それぞれ増加した。

負債合計は前期末比3,209百万円増加の22,528百万円となった。コロナ禍による景気の先行き不透明感から、手元キャッシュを確保する目的で銀行借入を実施しており、有利子負債が2,787百万円増加した。また、純資産合計は同1,400百万円増加の20,430百万円となった。配当金支出で1,171百万円、自己株式の取得で1,095百万円が純資産の主な減少要因となった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益2,654百万円を計上したほか、保有株式の時価上昇に伴うその他有価証券評価差額が556百万円、M&Aの実施に伴い非支配株主持分が461百万円それぞれ増加したことが主な純資産の増加要因であった。

経営指標を見ると、有利子負債の増加を主因として自己資本比率は前期末の49.6%から46.5%に低下し、有利子負債比率等もやや悪化したものの、ネットキャッシュは黒字を確保しており(ゼロ・クーポンの転換社債を除けば130億円以上)、財務の健全性は確保されているものと判断される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

提供:フィスコ

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