S&P500 月例レポート ― 最高値更新ラッシュの8月 (2) ―

市況
2021年9月17日 13時30分

●新型コロナウイルス関連

○変異ウイルスの感染拡大が続き、人口の70%がワクチン接種を完了したとしても集団免疫の獲得は厳しいとされており、懸念が広がっています。集団免疫の獲得に必要な接種率は引き上げられ、80%以上とも言われています。

○小学校でのマスク義務化を巡る対立が激化しています。こうした問題(あるいは子供の健康)に関しては、政治的信条の違いが対立を生みだしているようです。

○米食品医薬品局(FDA)は免疫が低下している人に対する新型コロナウイルスワクチンのブースター接種(3回目の接種)を承認しました。

⇒米疾病対策センター(CDC)はモデルナ<MRNA>製とファイザー<PFE>製のワクチンに関して3回目の接種を初回接種から8ヵ月経過後に受けることを推奨しています。バイデン大統領は(9月20日の週から)2回の接種を終えた人に対して3回目の接種(ブースター接種)を、2回目の接種から8ヵ月経過後に受けることを奨励しています(ブースター接種の対象となるワクチンはモデルナ製とファイザー製で、ジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>製ワクチンについては治験段階にあります。また、(医療従事者や、感染リスクが高い人、高齢者などを対象とした)優先接種計画も進めています。初回ワクチン接種を実施した際と同様に、(連邦政府に強制力はないため)州によって対応が分かれることになるでしょう。

○8月下旬にFDAは、これまで緊急使用を許可していたファイザー製の新型コロナワクチンを正式承認しました。これを受けて一部の企業や自治体が従業員や職員に対する接種義務化に動くとみられます。

○ジョンソン・エンド・ジョンソンは同社の1回接種型の新型コロナウイルスワクチンについて、追加接種によって抗体レベルが大幅に増加するとの治験結果が得られたことを公表しました。

○EUは加盟27ヵ国に対して、米国での変異型ウイルスによる急激な感染拡大を理由に、ワクチン未接種者による同国への不要不急の渡航を停止することを勧告しました(EUは2021年6月に米国を渡航許可リストに加えていました)。

○米国の1日当たり接種回数の7日間平均は、7月末の62万回から89.8万回に急増しました(6月は90万回、5月は170万回)。デルタ株による感染拡大が続いているためです。1日の新規感染者数は7月末の6万7000人から28万人に増加しています。この結果、多くの企業が職場復帰のスケジュールを延期しており、学校再開時期も見通せない状況にあります。

⇒フロリダ州が依然としてデルタ変異株感染のホットスポットとなっており、新規感染者数の最多更新が続いています。

⇒米国のワクチン接種率(少なくとも1回は接種済み)は成人で70%に達し、全人口では61.7%となっています。2回の接種を終えた人の割合は52.4%となっています。

⇒一部の州(ルイジアナ州)や地域(サンフランシスコ)ではマスク着用を再び義務付けています。カリフォルニア州は全米で最初に、全ての教職員に対して、学校に復帰する際にはワクチン接種か定期的な検査を義務付けると発表しました。ニューヨーク市もこれに続き、イベント参加やジム利用、レストランでの飲食に際してワクチン接種証明の提示を義務付けるとしました。また、米国防総省は全軍に対して9月15日までにワクチン接種を義務付けると発表しました。

⇒多くの企業(ホーム・デポ<HD>、マクドナルド<MCD>、ターゲット<TGT>、タイソンフーズ<TSN>)がマスク着用を再び義務化し、一部企業は職場復帰の時期を延期したり(ブラックロック<BLK>、シティグループ<C>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>は2022年まで)、ワクチン接種を義務付けています(マイクロソフト<MSFT>、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス<UAL>は米国内の従業員が対象)。

→金融業界の動きを見ると、ニューヨーク証券取引所は取引フロアに出入りする全ての人に対してワクチン接種を9月13日までに終えるように要請しました。

○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬:

⇒世界全体で52億6000万人が少なくとも1回のワクチン接種を受けました(7月末時点では37億4000万人、5月末時点では17億4000万人、4月末時点では11億人、3月末時点では5億7400万人、2月末時点では2億2500万人)。

⇒米国では現時点で、3億7000万人が1回以上のワクチン接種を受けました(同3億4400万人、同2億8900万人、同2億3700万人、同1億4800万人、同6830万人)。

⇒人口の61.7%(7月末時点では57.2%、5月末時点では49.4%、4月末時点では43.3%)が少なくとも1回は接種したことになり、人口の52.4%(同49.4%、同39.3%、同30.0%)が2回の接種を終えました。

⇒米国の1日当たり接種回数の7日平均は90万回に低下しましたが(7月末時点では62万回、5月末時点では170万回、4月末時点では263万回、3月末時点では277万回、2月末時点では131万回)、変異株の蔓延により接種回数は増加しています。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

○7月27-28日に開催されたFOMCの議事要旨から、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内のテーバリング開始を見込んでいたものの(現在の資産買い入れペースは月額1200億ドル)、利上げに関しては、会合時には年内実施を想定していなかったことが明らかとなりました。

○FRBは今夏の「ジャクソンホール会議」(8月26-28日開催)を、予定していた対面形式からオンライン形式での開催に変更しました(開催日の前日にパウエルFRB議長は自身の講演をオンライン形式で行うと発表しました)。こうした開催形式の変更はハト派的判断であり、変異株による感染拡大の影響は限定的で、テーパリングの開始を早める余地があると言及した最近の発言とは矛盾すると、市場関係者には受け止められました。

○韓国はアジア諸国の中で最初に利上げに踏み切り、政策金利を0.25%引き上げて(前回利上げは3年前)0.75%としました。また、予想インフレ率も2.1%(従来は1.8%)に上方修正しました。

○FRBの意向と新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年のジャクソンホール会議は対面形式からオンライン形式へと変更されました(この変更を市場関係者はハト派姿勢を裏付けるものと受け止めました)。実際の(オンライン)会議では慎重かつ注意深く言葉を選んだ発言が行われました。パウエル議長はあらためてインフレの上昇は一過性の現象とみられ、また現在のインフレ率はFRBの目標に沿った水準で推移していると述べました。雇用に関しては、(FOMCが)掲げる目標に到達はしていないものの、前進しているとの見解を示しました。さらに、全てが予想通りに進展すれば、年内にテーパリングを開始する可能性があることも示唆しましたが、具体的なスケジュールについては明らかにせず、テーパリングと利上げは別物であると説明しました。市場はこうした発言をハト派寄りと解釈し、テーパリング開始前にFRBによる事前予告があると受け止めました。また、FRBは利上げを急いでいないと判断し、結果的に市場は同日に最高値を更新しました。

●IPOおよび「空箱」SPAC

○投資アプリを手掛けるロビンフッド・マーケッツ<HOOD>は、7月に1株当たり38ドルで新規株式公開(IPO)を実施しました。7月の終値は35.15ドルとなりましたが、8月に入って同社の株価は急騰し、一時85ドルを付けました。8月の終値は44.32ドル(IPO価格から16.6%上昇)、月間上昇率は26.1%となりました。

○今後も活発なIPOが見込まれます:

⇒地域SNSを運営するNextdoorはSPACのコースラ・ベンチャーズ・アクイジション<KVSA>との合併を通じて上場を計画しており、企業評価額を43億ドルと見込んでいます。

⇒デジタル貯蓄・投資アプリを運営するAcornはSPAC経由での上場を計画しており、企業評価額を22億ドルと見込んでいます。

⇒英国のオンライン中古車販売会社Cazoon Holdingは、SPAC経由で上場することを明らかにしました。上場時の企業評価額を80億ドルと見込んでいます。

⇒未公開のリチオムイオン電池メーカーEnovixはSPAC経由での上場を準備しており、当初評価額11億ドルを見込んでいます。

⇒イスラエルのデジタル取引プラットフォームのeToro GroupはSPAC(FinTech)経由で上場すると発表しました。時価総額100億ドルを見込んでいます。

⇒東南アジアでライドシェア、フードデリバリー、送金のアプリを運営しているGrab HoldingsはSPAC経由で上場することを発表し、企業評価額を400億ドルと予想しています。

⇒EVメーカーLucid MotorsはChurchill Capital Corp IV(CCIV)との合併を通じて上場を計画しています。

⇒シェアオフィス大手のWeWorkが再び上場を計画しており、上場時の企業評価額として90億ドルを見込んでいます。これに対して、パンデミックにより労働環境が変化するよりもかなり前の2019年の評価額は470億ドルでした。

※「高値更新街道を突き進む米国市場 (3)」へ続く

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