日経平均は反落、早々にイベント通過の買い戻し一服?/ランチタイムコメント
日経平均は反落。247.72円安の28517.94円(出来高概算5億8000万株)で前場の取引を終えている。
12日の米株式市場でNYダウは続伸し、38ドル高となった。昨年12月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.0%と39年ぶりの高い伸びとなったが、市場予想並みだったことから長期金利が一時低下し、ハイテク株を中心に買いが入った。ただ、複数の連銀総裁から利上げやバランスシートの縮小に前向きな発言が出てきたことを受け、長期金利が上昇に転じるとともにハイテク株も伸び悩んだ。前日に543円高と大きく上昇した日経平均だが、本日はこうした流れから売りが先行して107円安でスタート。為替市場で円相場が1ドル=114円台半ばに上昇したことや、国内で新型コロナウイルス感染者が急拡大していることも重しとなり、前場中ごろを過ぎると28484.69円(280.97円安)まで下落する場面があった。
個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が2%下落しているほか、イオン<8267>が決算を受けて4%超の下落。キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>などの値がさグロース(成長)株、それにオリンパス<7733>やHOYA<7741>といった医療機器関連株の軟調ぶりも目立つ。その他、売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、郵船<9101>、川崎船<9107>、東エレク<8035>がさえない。また、MSコンサル<6555>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、トヨタ自<7203>や三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>はしっかり。日本製鉄<5401>やJFE<5411>、住友鉱<5713>といった鉄鋼・非鉄金属株は大きく上昇。また、決算発表銘柄ではベル24HD<6183>などが買われ、OSG<6136>やローツェ<6323>は東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、小売業、サービス業などが下落率上位。一方、鉄鋼、非鉄金属、パルプ・紙などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の71%、対して値上がり銘柄は24%となっている。
米12月CPIの発表を通過し、本日の日経平均は一転して軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、28600円台に位置する25日移動平均線を再び下抜け。景気敏感株はまずまず堅調で、商品市況の先高観などから関連銘柄が大きく上昇しているものの、値がさグロース株の反落が日経平均を下押しする格好となっている。前引けの日経平均は-0.86%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.58%。東証1部銘柄の7割あまりが下落し、下落率上位には中小型グロース株が目立つ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ数日と比べるとやや少ない印象を受ける。
新興市場ではマザーズ指数が-3.04%と4日ぶり大幅反落。900ptを割り込んだところで下げ渋っていたが、前述のとおり中小型グロース株への逆風が再び強まっている。メルカリ<4385>やフリー<4478>、ビジョナル<4194>といった主力IT株は軒並み軟調だ。これまでも指摘しているが、比較的人気の高いマザーズ銘柄は11月後半からの下落局面で信用買い残を積み上げてきており、株価が一段と下押しするようなら影響は大きいだろう。
さて、米国では11日にパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の再任に絡んだ議会上院の公聴会、12日に12月CPI発表という重要イベントを通過し、日米株とも大きく上昇する場面があった。米長期金利が一時低下したこともあり、市況解説では「FRBによる早期金融引き締めへの警戒感が後退」といったものが多かった。
ただ、債券サイドの関係者のコメントなどから、パウエル氏の発言を受けて「引き締め加速」の見方に大きな変化があったようには感じられない。各種報道を見ても、著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏が金融緩和の巻き戻しによるリセッション(景気後退)に警鐘をならし、JPモルガン・アセット・マネジメントの債券運用責任者であるボブ・マイケル氏は10年物国債利回りが年内に最高3%に達する可能性があると示唆している。
実際、12日の米債券市場では10年物国債利回りが一時低下したものの、セントルイス連銀のブラード総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁によるタカ派的な発言が伝わり、結局1.74%(+0.01pt)となった。短期の年限の金利は一段と上昇。一方、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.06pt)と再び大きく低下した。FRBの「インフレファイター」ぶりがなお意識されていることの証左と言える。一時的な長期金利の低下(債券価格の上昇)やハイテク株の上昇は「警戒されていたイベントを通過したことによる短期的なあく抜け」の様相が強い。しかし、こうした売り方の買い戻し(ショートカバー)の動きも早々に一服したように感じられる。
また、為替相場の変動率(ボラティリティ)が高まってきたのも気掛かりだ。米CPI発表後は1ドル=115.40円近辺から一時114.40円近辺まで急落。大方のドル高期待に反しての動きで、痛手を受けた投機筋が多いものと考えられる。国内では12日、新型コロナ新規感染者数が13244人とおよそ4カ月ぶりに1万人を上回った。もっとも、米金融大手の顧客調査で日本株のアウトフォームに期待する向きが極めて少ないのは、なにもコロナ禍のせいだけではないのかもしれない。
米国では今週後半も卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった昨年12月の重要経済指標の発表が続き、国内でも11月締めの決算の発表がピークを迎える。従来どおり相場全体として上下に振らされる場面が続くとみておきたい。(小林大純)
《AK》