明日の株式相場に向けて=景気減速・インフレ警戒下での個別株戦略
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比112円高の2万6659円と3日続伸。上値は重かったものの戻り足を継続した。個別には、決算絡みで前日に続きストップ高銘柄が相次いでおり、金融引き締めの流れが意識されながらも局地的には今なお流動性相場の片鱗を見ることができる。
前日の米国株市場ではNYダウが小幅ながらプラス圏で着地したが、ナスダック総合株価指数は終日マイナス圏で推移し、結局140ポイントあまり下落して引けた。NY連銀製造業景況指数が大幅に悪化し、米景気減速に対する警戒感が強まるなか、一方でガソリン価格は過去最高値水準に上昇しており、インフレ高進への懸念が個人消費や企業業績に容赦なくプレッシャーをかけてくる。
日本時間今晩に発表が予定される4月の米小売売上高に市場の視線が向いている。予測中央値は前月比1.0%増でコア(自動車を除いた小売売上高)が0.4%増だ。このうち後者については前月の1.4%増から大幅に伸びが鈍化する見通しにある。予想通りであればインフレ警戒ムードの強い米国においてポジティブ要因という捉え方もできるが、よくよく考えれば、パウエルFRB議長は金融引き締めピッチを速めるのは“経済が強いからこそ”という主張を前面に押し出している。市場では、「ここで個人消費の停滞を示唆する弱い内容、例えばコアの数値がマイナスに転じるようなケースでは、米景気減速に対する思惑が強まり株式市場にとって波乱要因となる」(生保系エコノミスト)という指摘もあった。
金融引き締め局面でも、株式市場からの資金流出が過激なものにならない限り対応のしようはある。バリューシフトと言われるように、グロース株を手放して得たキャッシュをバリュー株に振り向けるというのが全体相場のコンセンサスであれば、ロング・ショート戦略で個人投資家も十分に太刀打ちできる。しかし、バリュー株優位とはいっても業績の裏付けなくして実需の買いニーズは生まれない。企業業績が今後失速するというシナリオが、どの程度の確度で起こり得るかということが、投資家にとって最大の関心事となる。また、バリュー株であれば、その証としてのインカムゲイン(配当金)も重要な意味を持つ。
東京市場でいえば、今期減益決算でも高い配当利回りを維持する海運株には継続的な買いが入ってくる。例えば、日本郵船<9101>は今期営業利益が3割減益予想にあっても、コンテナ船市況が空前の活況を呈した前期の反動、ということで事前に投資マインドへの織り込みが進んでいた。同社株の下値ストッパーは、減配といえども今期も年間1050円配当を実施する計画にあること。足もと1万円大台攻防の動きにあるが、株主にとってはここから株価が10%、つまり1000円下がったと仮定しても、そのキャピタルロスはインカムゲインで相殺される理屈となる。既に鬼門の決算発表を通過したことで、AIアルゴリズムに蹂躙されるような仕掛け売りに対する懸念も希薄化されており、最初から1000円分ディスカウントされていると思えば押し目に買い注文は入れやすい。
海運セクターは出遅れ物色の動きも再び意識されそうだ。ここで注目したいのはホテル経営も行っている明治海運<9115>だ。政府は6月から水際対策を緩和することを検討しているが、きょうは観光庁が、外国人観光客の受け入れ再開に向け実証事業を今月中に開始することを発表した。同社の株価は安値圏での赤三兵を示現し、上放れの機が熟している。
また、メタバース分野に近い業態としてゲーム関連株にも強い動きを示す銘柄が増えている。enish<3667>が急浮上したが、きょうは任天堂<7974>が堅調で、バンダイナムコホールディングス<7832>やコーエーテクモホールディングス<3635>など本命格が高い。ワンダープラネット<4199>などの上げ足も目立った。そのなか、業績面で評価できるブロードメディア<4347>は4ケタ大台乗せからの新値街道に期待が募る。
あすのスケジュールでは、1~3月期GDP速報値が朝方取引開始前に内閣府から開示。また、後場取引時間中には3月の鉱工業生産指数の確報値が経産省から発表される。このほか5年物国債の入札も予定されている。海外では、4月の中国70都市の新築住宅価格動向、4月の英消費者物価指数(CPI)、4月の米住宅着工・許可件数に注目度が高い。米20年国債の入札も行われる。また、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が20日までの日程で開催される。(銀)
最終更新日:2022年05月17日 18時28分