明日の株式相場に向けて=FRBのリセッション誘導は火を噴くか

市況
2022年9月13日 17時00分

きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比72円高の2万8614円と4日続伸。8月の米消費者物価指数(CPI)発表を前に様子見ムードが強く、日経平均は小高く始まった後は、前場取引前半にスルスルと2万8600円台まで歩を進めたが、そこが戻りいっぱいの水準となり以後は押し戻される展開に。押し戻されたとはいっても、そこから下値を試すでもなく、狭いレンジでのもみ合いに終始した。

個別では任天堂<7974>が珍しく全市場を通じ断トツの売買代金で3000円を超える大幅高を演じ耳目を集めた。ニンテンドースイッチ向けソフト「スプラトゥーン3」の国内販売本数が発売3日間として過去最高を記録、これが投資マネーを呼び込み日経平均に押し上げ効果をもたらしたが、関連銘柄群への波及効果はあまり見られなかった。市場では「今晩11時から今冬発売タイトルを中心にスイッチ向けソフトの情報公開が行われることも同社株の刺激材料となったが、スイッチ自体に光は当たらず、今回は“任天堂一人舞台”といってよく他の銘柄に思惑が広がりにくい」(ネット証券アナリスト)とする声があった。

日本時間今晩9時半に発表予定の8月の米CPIにマーケットの関心が集中しているが、果たして相場のトレンドにどれほどの意味があるのか、という素朴な疑問も湧く。なぜなら9月20~21日に開催されるFOMCでは0.75%の政策金利引き上げをマーケットはほぼ100%織り込んでいる。「たとえ今回、インフレの沈静化を示す数値であっても0.5%の利上げにとどめる可能性はほぼない。一方、100ベーシス(1.0%)の可能性はゼロではないが、それを市場に意識させるには、間違いではないかと言わせるくらい事前コンセンサスとのカイ離がなければ、その線は薄い」(中堅証券ストラテジスト)という。

今回のFOMCではなく、次回以降のFOMCの金融政策に影響を与えるという見方もあるが、次の会合は11月である。それまでに数多くの重要経済指標が発表されるわけで、8月のCPIの動向で11月以降のFRBの舵取りを読むというのも合理的な話ではない。現状におけるメインシナリオは、9月に0.75%、11月に0.5%、そして12月に0.25%と段階的に利上げ幅を縮小させていくというもので、来年2月にも0.25%の引き上げを行い、最終的な金利水準を4.0%近傍で着地させるという線である。来年2月に打ち止め、場合によっては年内打ち止めという可能性が視野に入る。

その後は水平飛行に移り、来年の金利はフラットの状態が続くことが見込まれる。最近では23年中の利下げの可能性について、市場はFRBそっちのけで喧々諤々(けんけんがくがく)の様相だったが、それもジャクソンホール会議でのパウエル発言で一気にしぼむ格好となったのは周知の通りだ。これが、7月中旬から9月上旬にかけてのNYダウ3万1000~3万4000ドルをレンジとした往って来い相場の背景ともなった。

ここで8月の米CPIに戦々恐々としても埒が明かないが、今はAIアルゴリズム取引の影響はやはり大きい。「どっしり構えておけばよい」という人間の理性や哲学とはかけ離れた部分で相場は勝手に滑り出す。売り買いを問わずポジションを持っている以上、それに呼応する動きはどうしても必要となってくる。CPIの総合指数については7月の前年比上昇率が8.5%であったのに対し、8月は8.1%の上昇と減速が見込まれ、7月と8月を比べた「前月比」ではマイナス0.1%がコンセンサスで、この通りであればインフレのピークアウトを示唆すると言ってもよい。しかし、エネルギーと食品価格を除いたコアCPIに注目する向きも多い。これについては、前日の当欄でも触れたが7月の前年比5.9%増に対し、8月は6.1%増と加速が見込まれている。つまり、今は原油や小麦などのコモディティ価格の上昇一服で川上インフレは収まりつつあるが、一方で(米国の場合は特に)人件費の高騰を背景としたサービス価格のインフレがネックとなっている。この解決に向けFRBはドラスチックな政策を取らざるを得ない。「賃金インフレ解除には、リセッションを厭わずの構えが求められる。その際に米国の失業率は5%まで悪化させる必要があり、米国株市場はこの見方をまだ織り込んではいない」(ネット証券アナリスト)という。

あすのスケジュールでは、7月の機械受注、7月の鉱工業生産(確報値)が注目される。海外では8月の英消費者物価指数(CPI)、7月のユーロ圏鉱工業生産のほか、8月の米卸売物価指数(PPI)に対するマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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