田部井美彦氏【日経平均は下げ一服局面へ、戻り足は続くか】(2) <相場観特集>
―インフレ警戒ムード高まる世界株市場と今後の展望―
週明け3日の東京株式市場は日経平均株価が反発に転じ、2万6000円台を回復した。前週末の欧州株市場は全面高だったものの、米国株市場では後場に崩れ、NYダウは結局ほぼ安値引けで500ドル強の下げとなった。引き続きリスク回避ムードの強い米株市場を横目に東京市場も不安定な値動きを強いられそうだ。下期相場入りで相場の流れは変わるのか否か。第一線で活躍する市場関係者2人に10月相場の見通しと物色の方向性などを聞いた。
●「米国株は長期一段安余地も、日経平均は割安水準に」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
今後の相場の見方としては、米国株には一段の下げ余地があるが、日本株は連結PERなど収益面から割安水準にあり下値は固まりつつあるとみている。日経平均株価の当面の想定レンジは、上値は200日移動平均線のある2万7300円前後、下値は6月安値の2万5500円程度のボックス圏での展開を見込んでいる。日経平均株価の連結予想PERは足もとで12倍前後。これは、リーマン・ショック前後の時期まで含めて、歴史的な割安水準といえる。
一方、米国市場はS&P500種株価指数でみて年初からの下落率が20%を超えベアマーケット入りした。1950年以降、ベア市場入りは今回で12回目だが、過去の平均下落率は約34%。この例を当てはめると同指数は、あと1割近く下落余地があることになる。ただ、米金利動向などをみると9月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのインフレ懸念などは、いったんは織り込んだようにみえる。米国市場は長期的にはなお弱気相場が予想されるが、目先の下落はいいところまできたようにみえる。日経平均株価も、長期的には米国株の動向と同調する局面はありそうだが、すでに割安水準にあることが下値を支えそうだ。
個別銘柄では、 半導体関連株に注目している。半導体関連株は独自の需給サイクルで動いており、株価は早めに調整したことから見直し余地が出ている。東京エレクトロン <8035> [東証P]やSCREENホールディングス <7735> [東証P]、新光電気工業 <6967> [東証P]など再評価余地がありそうだ。また、ディフェンシブ株では、運輸・物流セクターから旅行需要などにも乗るJR九州 <9142> [東証P]。それにインフレ局面で再評価期待が膨らむ三井不動産 <8801> [東証P]や三菱地所 <8802> [東証P]など不動産株などにも注目したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース