プラチナはレンジ相場を継続、景気後退懸念も欧州水素銀行が下支え <コモディティ特集>

特集
2022年10月5日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は9月、原油安をきっかけとした米国債の利回り上昇一服を受けて買い戻されたことや、欧州連合(EU)の水素銀行提案を受けて堅調となり、約1ヵ月ぶりの高値938ドルをつけた。その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)で75ベーシスポイント(bp)の大幅利上げが決定され、今後も利上げを継続するとの見通しが示されると、戻りを売られて軟調となった。また、英国の財政不安を受けてポンド主導でドル高に振れたことも圧迫要因になり、850ドル前後に下落した。

ただ、英中銀が国債買い入れ介入を実施すると、ドル高が一服し、プラチナも下げ一服となった。英政府が最高税率引き下げを撤回したことや、9月の米ISM製造業総合指数(NMI)が2年4ヵ月ぶりの低水準となったことを受けてドル安に振れると、930ドル台を回復した。

9月のNMIは50.9と前月の52.8から低下し、2年4ヵ月ぶりの低水準となった。先行指標となる新規受注指数が大きく低下したことが響いた。米国経済は堅調だが、景気減速懸念が強まると、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース減速の可能性も出てくる。ただ、CMEのフェドウォッチによると3日時点で11月の米FOMCでは75bp利上げの確率が57.3%(前日56.5%)とほぼ変わらなかった。今後発表される経済指標と金融当局者の発言を確認したい。

一方、9月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は48.4と前月の49.6から低下し、27ヵ月ぶりの低水準となった。9月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値が前年比10.0%上昇と前月の9.1%から加速し、過去最高を更新した。欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げが見込まれており、景気後退懸念が高まっていることはプラチナの上値を抑える要因となる。

●プラチナは欧州水素銀行で需給引き締まりの見方が下支え

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、エネルギー問題への対応として水素銀行の設置を提案した。水素経済の拡大の出発点になるとし、30憶ユーロの予算を示した。EUは電力市場の改革を進めることで水素経済を発展させ、化石燃料から脱却するとしている。

EUはロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、ロシア産石油の輸入禁止を発表している。また、ロシアと欧州を結ぶ主要ガスパイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」が相次いで損傷した。破壊工作かどうかは不明だが、欧州のエネルギー問題が深刻化しており、水素経済の拡大が促されるようなら、プラチナの触媒需要が増加するとみられる。

ロシアのプーチン大統領は部分動員令を発令し、ウクライナ東南部4州の併合を発表した。主要7ヵ国(G7)外相は併合を認めず、ロシアに経済的代償を負わせる共同声明を発表した。ウクライナ情勢の行方とロシアの動向も今後の焦点である。

●プラチナETFからの投資資金流出が続く

プラチナETF(上場投信)残高は9月30日の米国で33.00トン(8月末34.46トン)、27日の英国で14.16トン(同14.17トン)、29日の南アフリカで10.08トン(同10.44トン)となった。欧州水素銀行が設置されることになったが、景気後退懸念を背景とした投資資金の流出が続いている。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月27日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは161枚(前週2390枚)に縮小した。6日時点の6751枚売り越しから買い戻されて買い方に転じたが、米FOMCをきっかけに利食い売りが出た。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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