戻りの弱さ目立つ、FRBの政策運営は困難極める/後場の投資戦略
日経平均 : 27298.01 (+75.97)
TOPIX : 1965.60 (+18.06)
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場及び本日の東京市場はリスク回避の動きが一服し、買い戻しが優勢の展開。ただ、ともに先週からの下落率を踏まえれば自律反発の域を出ていないと言わざるを得ない。東京市場の上昇率は特に鈍く、日経平均にいたっては寄り付き直後から失速し、陰線を引いている。
前日に発表された米2月消費者物価指数(CPI)は概ね予想通りで無難に消化。一方、総合ベースでは前年比及び前月比ともに予想に一致したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する食品・エネルギーを除いたコア指数は前年比で予想通りも、モメンタムを示す前月比では+0.5%と予想(+0.4%)を上回った。予想を大きく上回るような結果になってしまうと、足元の米国発の金融システム不安の最中でもFRBがタカ派姿勢を緩められない可能性があっただけに、今回の結果は一先ず市場の安心感につながったが、楽観になるには不十分な内容となった。
しかし、今回のCPIの結果を受けて大幅利上げはなくとも、FRBの利上げ路線が続く可能性が高いことを指摘する声は多い。確かに、米シリコンバレー銀行(SVB)などの経営破綻で雲行きは怪しくなっているが、米国での労働市場の需給逼迫は続いており、根強いインフレ圧力を考慮すると、ここで完全に利上げを止めてしまっては将来のインフレ再燃につながる恐れがある。また、前日のCPIの前月比でのプラスについても、民間データの家賃に対して1年以上の遅行性を伴う住居費の影響するところが大きいとはいえ、一方で、コア指数からさらに住居費を除いたベースでも前月比は+0.2%(1月:+0.2%)と加速が続いている。
今回のSVBの経営破綻も、顧客先や資金運用先が極端に偏っていたという、同社固有の背景が経営破綻の原因とされており、ミクロの問題をマクロの問題と捉えて利上げの完全停止にまで繋げてしまうのは政策運営として誤りになるとの考え方もある。
3月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではいったん利上げ打ち止めの可能性もあるだろうが、その後は市場の落ち着きと追加の経済データを見極めたうえで、再度0.25ポイントの利上げが再開される可能性も考えられる。政策金利見通し(ドットチャート)が示される3月会合の結果を見極めるまでは神経質な地合いが続きそうだ。足元のリバウンドが一過性に終わる可能性は十分に考えられ、今は引き続き守りを固めた方がよいだろう。(仲村幸浩)
《AK》