明日の株式相場に向けて=半導体関連株に復活の鐘が鳴る
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比250円高の3万93円と続伸。前日のNYダウが330ドルあまりの下落をみせ、サイコロジカルラインで2勝10敗という調整色の強い地合いながら、東京市場のほうは完全なデカップリング状態に入っている。日経平均は抵抗なく3万円大台ラインを突破した。ひと足先にバブル後高値を更新したTOPIXに追随して日経平均も上値指向を強めるとすれば、21年9月の3万670円(終値ベース)奪回は時間の問題のようにも見える。
海外マネーの怒涛の日本上陸が今回の上昇相場の原動力だが、その背景にあるのは日銀の存在。今の日本の物価高は一時的なものであって金融政策転換は時期尚早、という主張が植田日銀総裁のスタンスだ。しかし、これはパウエルFRB議長が米インフレの初期に、コモディティ価格の高騰やコロナ禍の人手不足を背景とした一時的なものであると強弁し、緩和姿勢を続けて結局急ブレーキを踏むことになった一連の流れと合致する。
「既に日本が明らかなインフレ局面に入っているのにも関わらず、黒田路線を踏襲し金融緩和路線を貫こうとする植田日銀総裁の超ハト派姿勢をみて、外国人が買いを仕掛けている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。海外ヘッジファンド筋が仕掛けるのは、これまでは売り仕掛けのイメージの方が強いが、足もとでは投資家の狼狽売りならぬ“狼狽買い戻し”を誘発して株価突き上げを狙っている。
こうなると国内機関投資家も株を持たざるリスクが意識され、遅ればせながら買いを入れざるを得ない構図となった。「海外投資家の買いは踏み上げを狙った先物の買いにとどまらず、現物の買い(実需買い)がダブルで来ている。これに空売り筋の買い戻しも加わることで、フィーバーに近い状態」(同)と指摘する。ホルダーにとっては有難い話だが、今の上昇は局地的な大型株バブルの様相を呈している。きょうも全体相場(プライム市場)が高揚感に包まれているように見えて、実際は値下がり銘柄数が1000を超え値上がりを250銘柄も上回る状況にあり、全体指数とは遊離した状態にある。
ひとつのプラスの変化としては半導体関連株への資金流入が始まっていることだ。半導体関連株は相場の花形だが、スマートフォンやパソコンの売れ行き不振で在庫調整圧力がなかなか拭えず、最近では半導体市況の年前半の底入れ観測が霧消したとの見方が強まったことで、ネガティブな相場環境を強いられていた。信用買い残を急増させながら下げ足を強めるレーザーテック<6920>の株価はその典型で、ゴールデンウイーク狭間の今月2日には1万7000円台半ばまで売り込まれ年初来安値を更新していた。ところが、そうしたなかも半導体関連の個別株をみると、全般論などどこ吹く風で上値追いを続けている銘柄も散見される。例えば切断・研磨装置の世界トップメーカーであるディスコ<6146>はきょうは後半利食い売りに押されたものの、一時1万8150円まで上値を伸ばし連日で上場来高値を更新。なお、同社株は前日まで10連騰を記録していた。
半導体製造装置は相対的に前工程の市場規模が大きいが、今は少数派である後工程のメーカーに高技術力を評価した買いが目立つ。例えばディスコ以外で後工程に属する代表的銘柄に東京精密<7729>がある。同社の株価はリーマン・ショック後の高値を更新中。24年3月期は大幅減収減益見通しにあるが、そんなことはお構いなしに上値慕いが続いている。更に半導体検査装置首位のアドバンテスト<6857>も後工程の象徴だが、同社株は2000年のITバブル時以来となる23年ぶりの高値圏を走る。なお、マスクブランクス検査装置を手掛けるレーザーテックも同じ範疇だが、こちらは高PERと今期受注高見通しの大幅減額が嫌気されて値を崩し、逆張り狙いの個人が信用枠をフル活用して買い込んだことで株式需給悪に見舞われた。しかし、足もとの値動きを見る限りその呪縛も解かれつつあるようだ。きょうは続伸し、満を持して底入れ気配を漂わせている。
あすのスケジュールでは、4月の貿易統計、4月の首都圏マンション販売など。また1年物国庫短期証券の入札も予定。海外では4月の豪雇用統計、フィリピン中銀の政策金利発表のほか、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の米中古住宅販売件数、4月の米景気先行指標総合指数、週間の米新規失業保険申請件数などが注目される。また、ジェファーソンFRB理事の講演も予定されている。なお、インドネシア市場は休場。(銀)
最終更新日:2023年05月17日 18時10分