明日の株式相場に向けて=新NISAで忘れられているリスクの概念

市況
2024年2月6日 17時00分

きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比193円安の3万6160円と3日ぶり反落。どんなに強い上昇相場であっても走りっぱなしというわけにはいかない。どこかで呼吸を整える場面に遭遇する。前日の米国株市場でNYダウが一時430ドル強の下げをみせているのだから、こちらもそれに歩調を合わせいったん立ち止まるのは仕方がない、というよりこれは必要不可欠である。

それにしても下値では買い板が厚い。日経平均の下げ幅は限定的である。逆説的になるが、現在の東京市場のリスクは全体指数が“上値を慕い過ぎる”ことかもしれない。日経平均3万6000円台で求められることは、スピード調整を入れながらの値固めであり、上値を追うのはそれから。脇目も振らず一直線では、むしろクラッシュの可能性を大きくする。

ファンダメンタルズ面からは国内企業の収益力は増幅傾向にあり、また懸案のPBR是正(上昇)も改善シナリオに向かって着実に歩を進めている。1989年の3万8915円はバブルの天井であったが、仮に2024年にこの水準を上回り4万円台に乗せても、誰もバブルとは言わない。少なくともかつてのリーマン・ショックのような世界経済を揺るがすネガティブ材料が出現しない限り、今の企業実態から株高そのものを否定することは難しくなっている。リーマン・ショック時はサブプライムローン問題という病巣があったが、今の世界経済にそれに相当するものが見当たらない。強いて挙げるなら、米国で不動産市況の低迷が浮き彫りとなっていることだが、米地銀のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ<NYCB>やドイツ銀行<DB>、日本ではあおぞら銀行<8304>などが多額の引当金計上で業績悪に陥ったものの、今のところ負の連鎖は起きていない。

もっとも、あおぞら銀については一部の新規参戦組の個人投資家に少なからぬダメージを与えているようだ。「(証券会社によっては)新NISAの個別株買い付け上位にあおぞら銀がランクインしている。紛れもなく高配当利回りに目をつけたものだが、これが今回最終赤字に転落し下期配当を見送る形となったことで、同社株を買った個人はインカム、キャピタル両面から損失を被ることになった」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。

新NISAの成長枠投資で実際に成長株を買う動きはまばらで、高配当のインカムゲインを主軸に考える投資家が多い。だが、業績が堅調で配当利回りの高い銘柄であれば安心というのは幻想である。やはり個別株への投資は、銘柄に関係なく同等にリスクがあるということを肝に銘じておく必要がある。それを出来る限り緩和したいのであれば、分散投資を徹底するか、もしくは投信を選ぶよりない。「新NISAでは投資初心者も多く、意中の企業の株式を保有するという目的だけが先に立って、株価は二の次で高値に買い付くケースが多い」(同)という。銘柄の選別も重要だが、それ以上に株式投資はタイミングが肝要だ。リスクを取らないリスクというのは個人投資家にはない。焦る必要はゼロである。

個別株に目を向けると、きょうは場中に発表されたトヨタ自動車<7203>と三菱重工業<7011>の決算が相場のハイライトとなった。トヨタは午後1時25分に24年3月期の業績予想の上方修正を発表、最終利益は従来予想の3兆9500億円から4兆5000億円に大幅増額し、これを好感する形で株価は大きく水準を切り上げ、上場来高値を更新した。また、トヨタに5分遅れて三菱重も通期業績予想の修正を発表、こちらは売上収益(売上高)のみの修正だが4兆3000億円から4兆4000億円に1000億円引き上げた。三菱重については、この売上高見通しの増額よりインパクトがあったのが株式分割で3月末の株主を対象に“株式10分割”を発表、これがサプライズとなり、連日の昨年来高値更新と気を吐いている。

あすのスケジュールでは、1月上中旬の貿易統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に30年物国債の入札が予定される。午後取引時間中には12月の景気動向指数速報値、消費活動指数などが発表される。また、IPOが1社予定されており、東証スタンダード市場にSOLIZE<5871>が新規上場する。海外ではタイ中銀とポーランド中銀が政策金利を発表するほか、12月の米貿易収支、12月の米消費者信用残高、米10年物国債の入札など。国内主要企業の決算発表では日本製鉄<5401>、ソフトバンク<9434>、オリックス<8591>、ユニ・チャーム<8113>などがある。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2024年02月06日 17時38分

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