米雇用統計のポイント、日本国債恐怖指数、PC・スマホ出荷台数【フィリップ証券】
■米雇用統計はコロナ禍の影響下
5日発表の3月の米国雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比30万3000人増。ヘルスケアや政府部門のほか建設やレジャー分野での伸びを受けて市場予想の20万人を上回った。他方、賃上げの勢いは弱まり3月平均時給は前年同月比伸び率が4.1%と2月4.3%から低下と、落ち着きを示した。
米国雇用の最大のポイントは、新型コロナパンデミックが始まった2020年3-4月に約2200万人が失業したことだ。その後の大幅な雇用拡大は概ねそれを回復する動きに過ぎず、月平均就業者増加数も、20年3月から24年3月で均すと11万8000人と、17年(17万5000人)、18年(19万人)、19年(16万5000人)に遠く及ばない。
市場予想を超える雇用者増加数が今後も続きやすいことが示唆される一方、それが続いたとしても、米国経済の成長率は趨勢としてコロナ禍前よりも低下すると想定されよう。
■日本国債の恐怖指数と日銀会合
日本国債予想変動率を示す「S&P/JPX日本国債VIX指数」は日銀がマイナス金利解除を決めた3/19以降、低下の度合いを強めている。日銀追加利上げが慎重なペースにとどまるとの見方を背景に4/8時点では2.68まで低下し、昨年9/22(2.70)を下回った。
昨年は植田総裁就任後初の金融政策決定会合4月27-28日の前(4/25)に9.79まで、7月会合1日目の27日に9.56まで、10月会合(30-31日)前の26日に7.98まで上昇。今年1月会合前は4.28までの上昇にとどまったものの、年4回の経済・物価情勢の展望(展望レポート)公表タイミングで予想変動率が上昇している。今月の金融政策決定会合の25-26日の前で予想変動率上昇・債券先物価格下落(押し目)なら投資好機かもしれない。
他方、長期金利上昇(債券価格下落)時に買われやすい銀行株にとっては、日本国債の予想変動率低下と長期金利低下(債券価格上昇)が連動しやすい中では要注意の面もあろう。
■パソコンとスマホの世界出荷台数
市場調査会社IDCは四半期ごとのパソコンとスマートフォンの世界出荷台数(全体およびメーカー別)を公表。8日発表の2024年1-3月の世界パソコン出荷台数(速報値)は前年同期比1.5%増の5980万台と、インフレ鈍化を受けて約2年ぶりのプラス転換となった。新型コロナ禍前の2019年同期(6050万台)と同水準となっている。欧米・中東・アフリカで伸びた一方、中国はデスクトップパソコンが伸び悩み。今年中にはPC側で高速データ処理を行えて人工知能(AI)機能が使いやすくなる「AIパソコン」発売が見込まれる。
メーカー別では、首位の中国レノボ・グループ(同7.8%増)、4位のアップル<AAPL>(同14.6%増)が伸びた。
スマホの世界出荷台数は24年1-3月が前年同期比7.8%増と、23年7-9月の同10-12月の同8.5%増に続いてプラスを達成。新興国需要の伸びを受けたほか、全体ではインフレや市場成熟により出荷が過去10年で最低だった23年から回復傾向にある。今後の市場成長は「生成AIスマホ」が鍵を握りそうだ。
メーカー別では、3位の中国シャオミ(同33.8%増)と、新興国で人気の高い4位の伝音控股[トランシオン](同84.9%増)の躍進が目立った。2位の米アップルが主戦場の中国で苦戦が響いて同9.6%減だったのに対し、1月に人工知能(AI)の翻訳機能を搭載した新製品を発売した首位の韓国サムスンは同0.7%減と落ち込みを抑えた。
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