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金はレンジ形成、利食い売りも米財政不安などが下支え <コモディティ特集>

特集
2025年6月4日 13時30分

は米中の貿易合意を受けて利食い売りが出たが、米国の景気減速懸念や財政不安が下支えとなった。トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を2倍の50%に引き上げると、ドル建て現物価格は今月2日に5月8日以来の高値3382ドルをつけた。3日は3391ドルまで上伸している。

米中の関税引き上げで貿易戦争に対する懸念が高まったが、5月10~11日にスイスのジュネーブで行われた閣僚級協議で相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意し、世界経済の先行き懸念が後退した。関税上乗せ分の90日間の停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築も打ち出した。ただ、米国と各国の貿易交渉が続いたが、合意に達したのは英国のみで包括的な通商協定でなかったことから、先行き懸念が残った。ベセント米財務長官は5月29日、中国との貿易交渉はやや行き詰まっているとの見方を示した。トランプ米大統領は中国が合意に違反したとし、厳しい措置を取る可能性を示した。米財務長官は1日、米大統領と中国の習国家主席が近く電話会談を行うとしており、合意に達するのかどうかを確認したい。

一方、米国際貿易裁判所は、米大統領の関税措置を違法と判断した。米政権は直ちに控訴し、米連邦高裁は米大統領の関税措置を違法とした判断について、一時的な執行の差し止めを命じた。米最高裁で審理されるとみられており、どのような判断が下されるかも当面の焦点である。

ウォール街でTACOトレードという造語が広がっている。Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビッて引き下がる)の略語で、トランプ米大統領の行動パターンを見透かして皮肉ったものである。貿易交渉で各国の交渉担当者がより強気の姿勢で臨んでいることも協議が進まない要因となっている。

米格付け会社ムーディーズは5月16日、米国債の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。米国の債務と財政赤字の急増が背景にある。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングが既に引き下げており、影響は限定的とみられたが、米20年債入札で需要の弱さが示されると、20年債利回りは一時5.125%と2023年11月初旬以来の高水準となった。米大統領の大型減税を盛り込んだ法案が下院で可決されたが、議会予算局が今後10年間で連邦債務が約3兆8000億ドル増加する見通しを示したことも財政不安を高める要因となった。米国売りの動きが強まると、金が安全資産として買われるとみられている。

●米FOMCでインフレと雇用悪化を警戒

5月6~7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%に据え置いた。インフレと失業率の上昇リスクが高まっているとしたことに加え、トランプ米政権の関税措置で経済見通しが不透明との見方を示した。

4月の米消費者物価指数(CPI)は前年比2.3%上昇した。伸びは前月の2.4%上昇から鈍化し、2021年2月以来の低水準となった。米小売売上高は前月比0.1%増加した。米関税措置発表前にみられた駆け込み需要が一服し、伸びは前月の1.7%増加から減速した。米製造業生産指数は前月比0.4%低下した。事前予想は0.2%低下だった。自動車生産の急激な落ち込みを受けて予想以上に低下した。5月の米ISM製造業景況指数は48.5に低下し、6ヵ月ぶりの低水準となった。事前予想の49.3を下回り、3ヵ月連続で低下した。関税の影響でサプライヤーの納入に時間がかかっている。

●NY金先物市場でファンド筋の買い越しは拡大に転じる

世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、6月3日に935.65トン(4月末944.26トン)となった。利食い売りが出て5月16日に918.73トンまで減少したが、米国の財政不安などを受けて投資資金が戻った。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは5月27日時点で17万4184枚(前週16万3981枚)となった。5月13日に16万1209枚まで縮小したのち、買い戻し主導で拡大に転じた。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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