プラチナは堅調、構造的な供給不足で約11年ぶりの高値 <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は5月下旬に1000ドルの節目を突破すると、6月に入って1100ドルの節目も突破して一段高となり、2014年8月以来の高値1434ドルをつけた。米格付け会社ムーディーズ・レーティングスが米国債の信用格付けを引き下げ、米国の財政不安が高まり、ドル安見通しが強まったことが要因。また、米中の貿易交渉がまとまるとの期待感もプラチナの支援要因になった。更にイスラエルがイランの核施設を空爆し、原油高に振れると、買い戻し主導で上昇した。米国のイラン攻撃から一転し、イスラエルとイランが停戦合意すると、ドル安や株高を受けて踏み上げの動きとなった。その後は利食い売り主導で調整局面を迎えたが、ドル安見通しを受けて押し目は買われた。
今回の急騰場面では、上海プラチナの出来高が急増し、中国勢の買いが目立った。高値での買いが見送られると調整局面となったが、押し目で出来高が再び増加するなど中国勢の買い意欲が強い。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の報告書でプラチナの構造的な供給不足が指摘されており、テクニカル面の改善から強気のファンダメンタルズが見直されると引き続き上値を試すとみられる。
米上院は6月28日、包括的な税制・歳出法案の審議開始に向けた採決を実施し、賛成多数で手続き上の最初の関門を超えた。米議会予算局(CBO)は税制・歳出法案の上院案について、10年間で約3兆3000億ドルの財政赤字拡大につながるという推計を発表した。米上院共和党はCBOの算出を否定し、2017年の減税延長による費用をゼロとする別の計算方法を採用した。米上院は1日、税制・歳出法案の採決を実施し、賛成51反対50で可決した。法案は米下院に戻され、採決が実施される見通し。トランプ米大統領は、4日の独立記念日までの成立を目指している。成立すれば米国の財政不安からドル安が続くとみられている。
●WPICは2029年まで供給不足が続くとの見通し
WPICのリサーチディレクターであるエドワード・スターク氏は6月18日に発表した報告書で、プラチナの構造的な供給不足を指摘した。四半期報告で2023年以降、3年連続で供給不足の見通しとなり、今後の展望では2029年まで供給不足が続くとみられている。需要面では第1四半期の中国で金宝飾品の販売が価格高騰を受けて前年同期比32%減少したことから、プラチナ宝飾品を仕入れる動きが出た。プラチナ宝飾品の生産は同26%増加した。供給面では2015年以降、毎年1%ずつ減少し、鉱山業界の再編が進んだことが指摘された。また、リサイクル供給も以前の水準に戻っていない。構造的な供給不足が続いていることで今年末の地上在庫は需要3ヵ月分まで減少するとみられており、持続不可能とされている。
プラチナの鉱山業界では世界最大のプラチナ鉱山会社の分離(スピンオフ)が発表された。鉱山大手アングロ・プラチナムは今年2月、傘下のアングロ・アメリカン・プラチナムの分離計画について、6月に実施すると発表した。5月の株主の決議でスピンオフが承認され、バルテラ・プラチナムと改名。ヨハネスブルグ証券取引所の上場を維持した。6月2日にはロンドン証券取引所への二次上場を開始。プラチナ価格の上昇を受けてプラチナ鉱山会社の株価も上昇している。
●米国のプラチナETFに投資資金が流入
プラチナETF(上場投信)残高は6月30日の米国で37.28トン(4月末32.49トン)、27日の英国で16.25トン(同19.27トン)、南アフリカで9.57トン(同10.73トン)となった。合計で0.61トン増加した。英国と南アで利益確定の売りが出たが、強気のファンダメンタルズが見直されると、投資資金が戻る可能性がある。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月24日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万5212枚(前週2万3227枚)となった。テクニカル面の改善を受けて6月10日時点で2万6979枚まで拡大し、2024年11月以来の高水準となった。買い玉が増加し、新規買いが入った。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース